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2/8

俺は、“最強”の武器、木刀を手に入れた!

 美湖の機嫌が悪い。

 先ほどから俺をジロッと睨みつけている。

 けれど何も言わず、甘そうなケーキ類を沢山お皿に持っている。

 それを見て俺はそういえばと思いだして、


「美湖」

「……何よ」

「太るぞ? そんなにたくさん食べ過ぎると……もがもが」


 そこで俺は後ろから女の手で口をふさがれた。

 振り返ると先ほどの猫耳っ娘のメイが怒ったような顔で俺を見ていた。

 そしてそのままズルズルと壁際に連れて行かれる。


「今の台詞はさすがにないと思います」

「でも、美湖、この前ダイエットがって……」

「……常識的におかしいでしょう! 何で更に“聖女”様を挑発するような言葉を吐くのですか」

「……怒るかな?」

「怒らないはずが無いです。はあ、ただでさえ機嫌が悪くて困っているのに……」


 ちらりと猫耳娘のメイが美湖達の方を見るが、先ほどの彼氏にふられたばかりの怪しげな肉体を持つリリシアと、無愛想な女騎士のシエラが慰めている。

 美少女が三人揃って眼福だなと俺が思っていると、そこで猫耳娘のメイが、


「“聖女”様より先にあなたに挨拶したのが良くなかったかな」

「? 何でだ? 美湖の周りには人がいっぱいいたし、しかたがないんじゃ……」


 実際に、服装からして高級そうなものを身にまとった男女に囲まれていたのだ。

 あれではどちらかと言うと普通っぽいメイ達が近づけないようにも思える。

 そんな考えがあって俺はいったのだが、そこで俺は気がついた。

 猫耳娘のメイが冷たい目で俺の方を見ていることに。


「な、なんだよ、俺は別に間違ったことは……」

「“聖女”様が好きなんですよね、告白しようと思うくらい」

「それはまあ。でも今の話と何処が関係するんだ?」

「良太さんが私達と一緒にいて、さっきは焦っていたでしょう?」

「それはそうだろう。あんな風にされれば。でも美湖は幼馴染だから、俺がそういうので喜ばないって知っているだろうし、怒る理由が何かあったかな?」

「うわ……何、この嫌な信頼感。“聖女”様、可哀想」


 メイが変な顔で俺を見ている。

 別におかしいこと入っていないのにと思っていると、そこで他の二人と一緒に美湖がやってきた。


「良太、私達五人で倒しに行くんだって」

「そうなのか。でも女の子ばかりのパーティか?」

「……何よ、嬉しいの?」

「いや、男性のほうが力が強いんじゃと思っただけだ。腕力だとか」


 そう俺が言うとそこで、リリシアが吹き出した。

 それはもうおかしいというかのように、俺から顔を背けて笑っている。

 俺はなにか変なことをいったかなと思いつつもむっとしながら、


「俺、今変なことを言いましたか?」

「ええ。やっぱり異世界人というのは本当なのね。いいわ、教えてあげる。この世界は“魔力量”至上主義、なの」

「“魔力量”至上主義?」

「ええ、魔力量が多ければ多いほど必要な時に筋力などが強くなり傷も治りやすくなるの。だから体格差、性別さは関係ないのよ? ただ、同じ“魔力量”だと男性の方が腕力的な意味では強いみたいだけれど」

「そうなのですか。……俺にも魔力があったりするのかな」

「さあ、それはギルドにいって登録してみないとわからないわね」

「ギルド?」

「そう、そこに行けばギルドカードという魔力液晶プレートを発行してもらえて、魔力などを数値化して表してくれるのよ。この世界の女神様が、目標がないと頑張れない人間達のために、目標を決めやすいという理由で作り上げたものだと言われているわ」


 どうやらゲームの世界の能力が分かるステータス画面のようなものが表示されるプレートが、“ギルド”に登録するともらえるらしい。

 そう思っているとそこでリリシアが俺に抱きついてきて耳元で、


「それで、“魔力量”を増やすとてもいい方法があるのよ?」


 その囁きが甘さを含んでいて俺は本能的に危険を感じて、


「い、いいです。俺は魔法が使えないなりに、別の方向で頑張りますから」 

「あらそうなの、残念」


 笑うリリシアが、ちらっと美湖の機嫌の悪そうな表情を見て、耳元で何事かをささやくと、美湖が顔を赤くして、


「べ、別にそういう訳じゃないです!」

「あら、そうなの? へ~、ふーん」

「そ、そういうリリシアさんこそどうなんですか?」

「……一昨日彼氏にふられたばかりよ。悪い?」

「ごめんなさい」


 俺にはよく分からないが、彼女達はそのような会話をしていて、その後は再び食事に突撃をしてから部屋で眠ったのだった。






 カーテンから朝の光が差し込む。

 その朝の光の眩しさに目を瞬かせながらベッドから起きた。

 もちろん一人部屋だ。


「昨日の食事の後、恋人同士で無い男女が一つの部屋は駄目だって事で追い出されたんだよな」


 それでも柔らかいベッドも含めて寝心地はとても良い。

 掛け布団も清潔なもので、非常に快適だ。

 しかもパジャマの様な寝間着やら何やらまで全部揃っていて、至れり尽くせりである。

 とはいえ部屋には時計はなく、


「確か、今日はギルドで登録するらしいんだよな。そんな物に登録とか、まるでゲームの世界みたいだな」


 この調子だとステータスもあったりするのかなと俺は思いながら、背伸びをする。

 昨日の夜は、とても騒がしかった。

 まるで当然のごとく美湖が俺を部屋に連れ込もうとしていた――ではなく、異世界に来ている不安から一緒にいたかったようなのだが、


「あら、良太は女の子に添い寝して欲しいのかしら」


 と、楽しそうにリリシアが発言した事で、気付けば俺専用の別の部屋が用意された。

 付き人だからといっても男性だから当然だろう。

 そう思いながら着てきた服に着替える。


 灰色がかった濃紺のズボンに白いTシャツ。

 まだまだ暑い日が続いていたこの季節なので仕方がないが、ここでは少し肌寒い。


「戦闘用の装備も含めて、どうにかしないとな。俺、一般人だし」


 お金の管理くらいしかやらせられないと言っていたがはてさて。

 よくよく考えれば随分と重要な部分だなと俺が思っていると、部屋のドアがノックされたのだった。






 現れたのは食事に呼びに来た美湖達で、そのまま朝食をとる。

 その後は呼び出された大広間のような場所で王様に、まず美湖が聖女用の装備という杖を貰う。

 次に金貨らしきものが入っていそうな袋が俺に、王様の側近らしき人物に渡された。


 中身を確認すると金貨だった。

 しかももっと小さな金貨の袋を全員に配っている。

 王様の側近の説明によると、どうやら全員の宿の料金などがこれで支払えという事らしい。

 また俺自身が身を守るために必要な防具などはその小さな袋に金貨でそろえろ、という。


 ここの物価ってどうなっているんだろうと俺は思った。

 そして王様やその側近、そして俺達を召喚した魔法使いらしき集団が見送る中俺達は旅だった。

 ただ旅立つと言ってもすぐに戦闘開始というわけではなく、そこでピンク色の髪をした猫耳娘のメイが、


「まずはギルドで登録です。そうするとレベルとか色々分かるんですよ? “聖女”様は“聖女”と職業欄に記載されるらしいですよ」

「へぇ、“聖女”って職業なんだ……」

「そうです。その人にあった職業が自動的に割り振られるので問題ないですよ~」

「という事は、良太ってどうなるのかな」


 美湖の疑問に、メイも含めて、シエラ、リリシアの二人も俺を見る。

 そして上から下までまじまじと見てから、リリシアが、


「ギャンブラー、とかかしら。非力そうだし」

「……何ですかそのギャンブラーって。ギャンブルは趣味の様なものでしょう」

「あら、それで生計を立てている子もいるのよ? でもあまりいい職業ではないわね」

「大体俺がそれなら、賭けごとにお金を使うから危険でしょう!」

「そうね。言われてみたらそうね、困ったわ~。でも他にやれそうな職業ってあるかしら。戦闘の経験のない異世界人でなれそうな職業」


 そのリリシアの言葉に全員が黙る。

 それを聞いた俺は本当にギャンブラーなる職業にされてしまうのかと戦々恐々としていたがそこで銀髪剣士のシエラが


「だが、あれこれ推測していても仕方がない。ギルドに行けば分かるのだからそれで良いだろう」


 その一言で話は終わった。

 終わったのは良いのだが俺はギャンブラーと延々と悩んでいると、美湖が近づいてきて、


「良太は絶対に賭け事はしちゃダメだからね」

「あ、当り前だ! でもギャンブラーなのかな、俺」

「……でももしかしたらい世界に来たから突然沢山の魔力が湧いてくるかも!」

「そうだよな、希望は捨てちゃいけないよな。ありがとう、美湖」


 そうお礼を言うと、美湖が微笑み頷く。

 やっぱり好きな相手に心配してもらえると嬉しいし、慰めてもらうと元気が出るよなと思っていると、そこで俺はリリシアに背後から抱きつかれて、


「ふーん、良太ってわかりやすいわね」

「な、何がだよ。それより、お前の職業って何なんだよ。というか全員の職業レベルくらい教えてくれてもいいだろう」


 俺はリリシアに色々とばれているので慌てて話をそらした。

 そんな俺の言葉に美湖もちらりと俺を不機嫌そうに見ながら、


「確かに仲間の職業とレベルを聞いていませんでした」

「では、私、メイから自己紹介します。私は、メイ・リア。弓使い、レベルは27です。よろしく」


 真っ先に答えたのはメイで、次に答えたのはリリシアだった。


「私は魔法使い。リリシア。レベルは……26よ」


 レベルを言う時にリリシアはすこしい淀んだ感じがしたがそれを答える前にシエラが、


「私は剣士。レベルはメイと同じく27だ」


 といった説明がなされた。

 ただレベルを言われた所でどの程度の強さなのかは分からないのだが、そこでリリシアが、


「そういえば異世界の人にレベルでいっても分からないわね。この世界の平均的なレベルは、10と言われているわ」

「って、全員普通以上に強い事に……」

「そうよ、“聖女”様のパーティですもの。それに、“勇者”候補を見つけやすいようにって配慮なの」


 そう笑いながら告げるリリシアに俺が“勇者”について聞くとこのような話だった。

 何でもその最強の力を持つ“勇者”だが、そのものはある日突然“聖女”によって見つけられるらしい。

 

 それこそんの前触れもなくだ。

 実際に過去の出来事を見ても、その村を三回ほど行き来して三回ほど話していた少女が“勇者”だったという話も良くあるらしい。

 ただ共通するのは魔力量が多い、という点で、その魔力量が多いと凶悪な魔物などを倒し易いのでレベルが上がりやすいらしい。


 そんなわけでレベルの高い女の子達を“聖女”である美湖の周りに配置しているのだそうだ。 

 そこまでリリシアは説明してから、そこで相変わらず俺に抱きついたまま、


「それでね、良太」


 甘く囁く彼女だが、俺の背中に当たるこの柔らかいものは何なんだろうか。

 きっと水の入ったビニール袋の様なものに違いないと俺は思った。

 必死で意識をそらそうとした。

 そこでリリシアが俺から離れて、


「なんか、つまんないわね。“聖女”様ももっとこう……もごもご」


 そこでリリシアの口を、美湖が手で封じつつ、


「そ、それで今リリシアは何か説明しようとしていたわよね。話を聞きたいかな」

「むがっ……もう、まあ良いわ。しばらくつつきながら見守る事にして……そうそう、実はこの世界に“魔王”という強力な魔法を使う存在がいたりするの。あれは例外ね」


 勇者がいるのだから魔王がいてもおかしくないが、その魔王も敵にまわっているのかなと俺が思っていると、


「といっても人間以外の種族の長という意味合いが強いわね。この獣人猫族のメイみたいなのは魔王側の勢力になるのだけれど、今はそんなものよりも経済が優先されているから、戦争するよりはそちらの方が得だと考えているのが多数派を占めているの。それで表向きは関係が良好なのよ」

 

 それが今の異世界の現状であるらしい。

 ただいまの話を聞くと、俺からしてみれば、


「その“魔王”に“地獄の王”を倒してもらえばいいんじゃないのか?」

「でも“魔王”は“勇者”よりも弱いし、現状では“魔王”本人が一人では対抗できない、仲間がいても難しいだろうという結論を出しているの」


 そんな裏事情があるのかと思っているとそこで、妙に立派な建物の前に俺達はやってきていた。

 すぐ傍に掲げられた金属製の板には、ギルドと書かれている。

 何故か文字が読めるこの現象に俺は変な感じを覚えながらも、メイ達に促されてギルド内に入って行ったのだった。







 ギルドの中に入って案内板に沿って進むと、俺と美湖はまず名前などの登録から始まって、職業設定から魔力量、レベルまで全て測定された。

 そして案の定、美湖は“聖女”と示されて、大騒ぎになっていた。

 更にギルドのお偉い人らしき人が出てきたりと騒がしかったのは良いのだが、俺は別の意味で困っていた。


「???、ですか?」

「はい、職業も何もかも、全部、???です」


 俺の職業からレベルまでそのような文字になっていた。

 一体なんだこれはと俺が思っていると、そこで、走ってくる音が聞こえて俺の手からギルドのカードが奪い去られた。

 相手は美湖だ。


 先ほどまで色々な人に取り囲まれて、真っ蒼になっていたのだが、とうとう限界が来て逃げ出してきたようだ。

 あんな風にもてはやされる経験なんて今までないだろうからな、怒られる事はあってもと俺は思っていると、俺のカードを見て、


「何これ。???しかないじゃない。壊れているの?」

「いや、不良品かと思って別のカードを試してもらったが、同じだった。というか曲げるなぁああ」

「ほら、よくたたけば直るって言うじゃん」

「それはただの接触不良だろうが! まったく、こんな風に粗暴だから美湖は……」

「何よ良太、そんな私は嫌いなの?」


 むっとしたように、けれど少し悲しそうに俺は言われて、心の中で焦りながら、


「ま、まあ、昔からだから慣れているよ」

「何よ、その言い方。もう少しうまく慰めなさいよ」

「あー、えっと、そんな美湖も良いと思うぞ」


 もう少し気に聞いた台詞を言えないのか俺、と思ったけれどこんな時に何も言えなくなってしまうのは当然だ。

 だって今まで彼女がいた事もないし。


 やはり恋愛小説、恋愛脳と思わずにせずに読んでおくべきだっただろうか。

 今更ながら後悔がふつふつと湧きあがってくるが、後の祭りだ。

 そこでメイ達がやってきて、猫耳娘のメイが俺のカードを見て、


「???、やっぱり異世界の人だからこうなのかな」

「でも“聖女”様はちゃんと出ているな」


 そんな話を剣士のシエラと猫耳娘のメイが見て呟いているが、それを見ていたリリシアが難しい顔をしている。

 なので俺は気になって、


「何か問題があるのでしょうか」

「……いえ、何も。???は、私も初めてみたし知っている限りないから。てっきりギャンブラーだと思ったのに、良かったわね」

「……そうですね」


 何が楽しくて賭博師に俺がならないといけないんだと俺は思いながらも、結局は一般人のままだねという話しになり、次に、


「よし、登録したし、武器屋に行こう。そしてギルドの練習場でちょっとだけ試し打ちをしてから、近場で戦闘しよう!」


 メイが元気良く叫んだのだった。






 武器やで各々が武器、防具を購入したものの、美湖は聖女なので装備できる武器はなかった。

 代わりに防具を探していたのだが、


「これとかどうかな」

「重いんじゃないのか? それに胸の所……小さいから大丈夫だな、むごっ」

「小さくて悪かったわね。こう見ても努力しているんだから! 大体良太だって、何で巨乳がそんなに好きなのよ。女の人のおっぱいばかり見ているくせに」

「み、みてねーよ。何を言っているんだ何を」

「私、知っているんだから。普段、良太が男友達とどんな話をしているのか!」

「な、何の話だ?」

「こ、この前雑誌見て、水着のアイドル見て、この子くらいの胸が良いよなって言っているの聞いたんだから!」

「な、何でそんな所ばかり聞いているんだよ!」


 ちなみにその時、でもこれ位あれば十分だと言った胸の大きさが、美湖と同じくらいだとからかわれてむきになっていたのだが……それに関して美湖は聞いていなかったらしい。

 もっと聞いておいてくれたならすべてにおいて円満に解決するのにと俺は思ったが、期を逸してしまい告白すらできなくなった俺の場合、ただ単に他力本願になっているだけだよなと思った。

 そこで軽くて丈夫そうな胸のあたりの防具を決めたらしい美湖が、


「そういえば良太はどれにするか決めたの?」

「俺が持てそうな武器って何だ? 防具は自由らしいけれど、これ、職業によって武器が変わるんだろう?」


 そう言ってすぐ傍にかけられている、案内板を見る。

 それによると、武器の類は職業によって振り分けられている。

 それを見ていた俺は気づいた。


 一か所、それも小さな隙間のような場所にだけ何も書かれていないと。

 なので美湖にみてくると告げて、俺は小さな期待に胸を膨らませながらその場所に向かうが、そこに飾られていたのは、


「木刀? もしくは木の棒か。……ギルドに登録できないお子様向けの道具」

 

 どうやら子供用の道具であるらしいが、俺はそれを見て真剣に考える。

 一応、こんな棒とはいえ、殴れば少しくらいはダメージが与えられる染みは守れるかもしれない。

 長さと持ち歩きの良さを考えると、木刀が良いかもしれない。

 そう思って頷いてみているとそこで、エロいお姉様なリリシアが現れて、


「あら、何を見て……」

「そんな憐れむように俺を見るな! く、だが身を守るためだ。買ってやる!」


 こうして俺は武器、木刀を手に入れたのだった。






 防具の前に防御用のアクセサリー、つまり触れると結界の様なものが現れるもので、風の魔力を使うらしい事が書かれているものをぽレは購入した。

 どうやら術者の魔力に比例して結界が張られるらしい。

 ただこのタイプのアクセサリーは高い。


 値段がすごく高い。

 これにするか防具にするか悩んだ俺だが、このアクセサリーにした。

 ベルトの部分にひっかける金具がついている、青い石のついた銀色に縁取られたアクセサリーだ。

 一応、術者の魔力と、術者の意志によって範囲を決められて複数人防御が出来るらしい。


「俺に魔力がなかったら意味がないんだけれど、それでも少しくらいは役に立ちたいよな」


 そう小さく呟いてからになった金貨の袋を握る。

 今更ながら何か間違えただろうかという気がしなくもないが、それでも試してみたい。

 いざとなれば他の人に使ってもらえばいいしと俺は思う。


「よし、それで良いんだ」

「何が良いのよ、良太。防具は私が買ってあげるから選びなさいよ」

「美、美湖、でも……」

「うるさい、武器をか分が私に必要はないから良いの!」


 そう言って胸のあたりの防具だけは買ってくれました。

 どうせ俺は離れた所で様子を見ているから良いのにと思っていたのだが、


「……良太が怪我したら私、そいつの事許せない」

「分かった。全力で遠くから応援するわ、俺」

「何でよ」

「だって怒りで無我夢中で敵に突っ込んで行くんだろう? 美湖は」

「それはまあ、うぐっ」

「だったら美湖を危険な目に会わせないためにも頑張らないとな」

「う、うう……は!」


 そこで美湖は、何故か俺達の様子を見てにまにましている、メイ、リリシア、シエラ……シエラは、無表情なりに興味深そうなので入れておく、その三人が見ているのに気づいて顔を赤くした。


「ち、ちが、これは別に、幼馴染で同じ世界だから……」

「そうですよ、分かっていますよ」

「ええもちろん、私は分かっていますよ」

「私も分かっている」


 メイ、リリシア、シエラの三人に頷かれて、美湖はそれ以上何も言わず、試し打ちよりも近場で戦闘しようとその話が出る前に美湖が言いだしたのだった。


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