【泣き虫よ飛び立て】
うさぽんはカメばあやの家を出て、崖へと向かった。
そこは「最果ての崖」と言われる所で崖下が真っ暗闇であることから名前が付けられたらしい。普段は誰も近寄らないが、そこから見える日の出は素晴らしい絶景らしい。
うさぽんはじっとペガちんを待った。
ペガちんには
「今日崖のそばで果物パーティーがあるみたいだよ。いっしょに行こうよ。」
「いいね。でもなんで崖のそばなの?行きたくないよ。」
「あそこから見える景色って地平線ですごくきれいじゃない?素晴らしい景色とおいしい果物をたんのうしようってことだよ。」
「わかった。崖に近寄らなければいいよ。」
「決まりだね。先に言ってるね。」
とうそを伝えた。悪いと思うけど、これもペガちんのためだ。
うさぽんはペガちんと待ち合わせの時間が近づいてきたので、崖に近づき、下りる準備をした。もしもの事があってはいけないので、崖岩に足を引っ掛ける場所を探して、ペガちんを待つ。すると遠くの方から足音がこちらへ近づいてくるのがわかった。
「あれ~?ここだよなうさぽんが言っていた場所は…誰もいないよ。」
ペガちんの声だ。うさぽんはどのタイミングで声を出すかドキドキする。
「あっちかな~?」
ペガちんが違う方向を行くのを見計らって、うさぽんは大きな声を出した。
「誰か~、助けて~。」
ペガちんはびくっとして振り返った。だがそこには誰もいない。
でも確かに声はしたのだが…。
「助けて~。」
今度は本当に聞こえた。ペガちんは声がする方へ向かう。
「一体誰なの~?」
「あっ!ペガちん!?助けて崖から落ちそうなんだ~。」
ペガちんはまたびっくりした。落ちそうなのは友達のうさぽんだった、
「うさぽん!?どうしたの?」
「足を滑らせて、崖から落ちちゃったんだ。なんとかしがみついたけどこのままじゃ下まで真っ逆さだ。助けてくれよ~」
うさぽんは泣きじゃくった声で言う。
「無理だよ。崖に近づくことも出来ないんだよ。怖くて仕方がないんだ…」ペガちんは泣き顔で言った。
「でも早くしないと落ちちゃうよ~。」
「わかった。誰か助けを呼んでくるね」
ペガちんは助けを呼ぼうと戻ろうとした。
「ペガちん、呼んでくる前に落ちちゃうよ。泣いてばかりいないでなんとかしてよ。」
うさぽんは叫んだ。
ペガちんはその言葉に心打たれた。
「…泣いてばかり、そうだ。僕はずっと泣き虫だった。泣いたら誰かが助けてくれるとずっと思っていた。それで助けてくれて…結局自分でなんとかしようと思わなかった。そして今回も…」
ペガちんは小さい自分を思い出す。
「崖は怖いし、高い所も怖い。でも…飛ぶことはきっと怖くないんだ!!」




