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嗚呼、世界は美しく……ない、と感じた日

作者: 牧目十六
掲載日:2026/03/31

 初めてメガネをかけたのは高2の時だった。誰でも同じだろうが、急に目が悪くなったわけではない。少しずつ視力が下がり、「黒板の文字が見づらい」「遠くの景色がぼやけて見える」といった不便さを感じるようになったのだ。そして、親に「暗いところでマンガばっか読んでるからだ」などと言われながらお金をもらい、僕はメガネ屋へ行った。

 機械で視力が測定され、度数が決まる。せっかくだから格好いいフレームがいい……けど、高いのは買えないので適当なところで妥協する。数日後、僕のメガネは出来上がった。

 メガネ屋を出て外を歩く。おおっ、何もかもよく見える。標識とか看板とかも、くっきり見える。ちょっと感動。でも、昔はメガネなしでも、こんな風に見えてたんだよなぁ。


 そして僕はメガネをかけて学校へ行った。「おっ、ついにメガネか」と笑うクラスメイト。僕は思う。あれ、お前、そんなにニキビ面だったっけ。鼻毛も出てるぞ。先生が教室に入ってくる。うわっ、きたねぇ。アンタの顔面、そんなにガサガサしてたっけ。改めてクラスの連中の顔を見る。あらら、可愛いと思ってた妙子ちゃん、確かに顔立ちは整ってるけど、けっこうニキビが多いじゃん。山本君、キミの肩、フケだらけ。瑞恵さん、うなじがけっこう毛深いじゃん。教室の壁や窓も目に入る。うわぁ、こんなに薄汚れてたんだ。日焼けして変色しちゃってる部分も多いなぁ。

 休み時間、音楽の先生と廊下ですれ違った。色白の美人だ。ちょっと憧れてた。でも……あれれ? そんなに化粧、厚かったっけ。なんか、粉が顔に浮いてるし……。

 その日、世界は美しくないと僕は知った。もちろん、自分自身も含めて。

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