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熊のアップルパイは何の味?

結局、お昼ご飯の後。カイさんはあと2匹鮭を釣った。私は見ている方が楽しかったので、カイさんの横で竿は持たずに座っていた。


「この釣り方って他の人もするんですか?」


「しないな、完全自己流。ジョナサンは川を遡上してくる鮭を捕まえる熊みたいだってよく言う」


私はつい吹き出してしまった。まさにその通りだったから。


魚を保冷箱に入れたカイさんは、荷物をまとめ始めた。


まだ日は高いけど、もう帰るのかな?


「ちょっと早いけど、途中で寄りたいところがあるから」と荷物を馬に乗せ始めた。


「どこに行くんですか?」


「りんご狩りに行こうと思って。帰り道に農園があるんだ」


「りんご!私はりんご大好きなんですよ」


よくカイさんの実家の洋食屋さんで、アップルパイをご馳走になったな。


「じゃあいっぱい持って帰ろうね」と私を馬に乗せてくれた。


「私も乗って、鮭も乗せて、今度はりんご。この子は大丈夫なんですか?」


「いつもは遠征のもっと重い荷物を運んでいるし、ルルちゃんは重さのうちに入らないよ」なんて言ってくれる。


行きに来た道とはややそれて、30分ぐらい行ったところに農園はあった。


まあ予想はしていたけど、私の考えるりんご狩りとは全く違っていた。


「これはどう見ても、サボテン畑ですね。緑じゃないサボテンって初めて見ました。光合成とかどうなってるんですかね、この世界は?」


目の前にはオレンジ色のサボテンがきちんと列になって植えられている。

そしてそのサボテンには真っ赤な実がついている。


「あの赤い実がりんごなんですか?」


「そう、ちょっと酸っぱめでそのまま食べても美味しいけど、アレにするともっと美味しいんだ」


「アレって。。」


「ルルちゃんの大好きなアップルパイ、よくうちの店で食べてたもんな」


「あ!やっぱり知っていたんですか?あのアップルパイがこの世で1番美味しいと思ってました」


「そんな大袈裟な。。。。でもそんなに好きでいてくれて嬉しいな。じゃあアップルパイ用にいっぱい持って帰ろう」


私は下の方の実を、カイさんは上の方の実を取って気がつけばカゴ2個分になってた。


「これは流石に張り切りすぎましたかね?」


「食べきれないのはジャムにできるから大丈夫だよ、あ。。でも時間をかけ過ぎたな。日が暮れて来てしまった。急いで帰ろう」


カイさんの家に着いた頃にはすっかり日が暮れて、暗くなっていた。


しかし、家に灯りがついていない。


「ジョナサン様もまだ帰っていないのですかね?」


「あ、机に手紙がある」


カイさんは手紙を読んで、何故か固まってる。


「どうしました?ジョナサン様は大丈夫ですか?」


「あ。。大丈夫だ。実家に用事があるから、今夜は遅くなるから、先に夕ご飯食べていてって」


「あら折角の鮭なのに」


「まあ俺たちで少し食べて、残りは塩につけておくよ」


カイさんは夕ご飯は鮭のグラタンを作ってくれた。


「これも美味しい!いくらでも食べれそう」


「デザートもあるから、それでお腹いっぱいにしないでくれよ」と笑っている。


そう、カイさんは夕ご飯と並行でアップルパイも焼いてくれた。生地は昨日から用意しててくれたらしい。


アップルパイ用のりんごを切っているときに少し生のをもらったけど、確かに酸っぱめのりんごだった。


確か酸っぱいりんごの方がアップルパイにいいんだっけ?


鮭のグラタンを食べているときに、アップルパイがオーブンに入っていたんだけど、家中いい匂いになって来てウズウズしてしまう。


出来上がったアップルパイは少し冷まさないといけないので、その間に私は食器洗いをして、カイさんが紅茶を入れてくれた。


もうかなり遅い時間だけど、出来立てアップルパイを食べない選択肢はない!


「真夜中にアップルパイを食べるって、昔読んだ本の寄宿学校の真夜中のパーティーみたいで、ワクワクします」


「怖い先生じゃなくて、熊がいるけどね」


「こんな美味しいアップルパイが作れる熊さんなら。大歓迎です。あーーあのお店の味だ。ご両親から習っていたんですか?」


「いや、あのアップルパイは俺が作っていたんだ。メグから君はアップルパイが大好きだって聞いていたから。頑張って研究してあの味に辿り着いて、そうしたらお店でも好評で定番メニューになったんだ」


「え。。私の為にアップルパイを作ってくれていたんですか?」私は食べるのをやめてカイさんを見つめる。


「うちに来たときにメグとアップルパイの食べ比べをしていたろう。どのお店のが美味しいかって」


あーーそうそう5-6軒のお店を回って、メグの家で食べ比べしてたな。


「その時のアップルパイを食べている顔がすごく幸せそうで、俺も美味しいアップルパイを作って、瑠璃をあの幸せそうな顔にさせたいと思ったんだ」


カイさんは私の頬に手を当てた。


「そう、この顔。これがまた見たかったんだ。この10年間は本当に長かった、ルルは生き延びて転生してないんじゃないかと思い始めていたんだ。でもルルを見つけることができてよかった」


あ。。ルルって呼んでくれてると思ったら。カイさんの顔が近づいて来た。


そしてカイさんの唇はアップルパイの味がした。あの懐かしいアップルパイの味が。


「ルル。。今夜はずっと一緒にいてくれないか?」


「え?でもジョナサン様帰ってくるんですよね。流石に上司の家にお泊まりは、でも遅いですね」


「帰ってこないよ」


「え?」


「さっきの手紙に、実家に泊まるからごゆっくりどうぞって書いてあった」


「さっき、帰ってくるって言ってませんでした?」


「そうでも言わないと、もう家に帰せなくなりそうだったから、でもやっぱり限界だ、俺はずっと瑠璃の事が好きだったんだ。メグから瑠璃が無事に希望の大学にしたって聞いた時は本当に嬉しかった。大学に行って、変な虫がつく前に告白するって潤にも相談してたんだ、だからあの日バスで会ったのは運命だと思っていたんだ」


カイさんは私の手を握りしめる。


「だから、あんな風に前世が終わってしまって本当に悲しかった。まあ、思い出したのは17年経ってからだけど。俺もこんな事なら前世なんか思い出したくなかったって思ったね。でも潤がジョナサンってわかった時は歓喜したよ、もしかしたら瑠璃も転生しているかもしれないって」


「俺は国境に派遣されていたから、ジョナサンが俺の代わりに探してくれていたんだよ。瑠璃っぽい面影があって、こちらの水準よりかなり計算の知識はある女の子を雇ったぞって連絡が来た時は本当に嬉しかった。初めてルルを見たときに確信したよ、絶対瑠璃の生まれ変わりだって」


私達が初めて会った時は私は初めて参加した予算会議だった。その時カイさんはまだ第3騎士団の団長さんだった。2回目に会ったときに記憶を取り戻したけど。


「王都に戻れる事になって、2回目に会った時に記憶を取り戻すとは思わなかったけどね。パン屋で泣いているルルを見て、これはもう1人にさせられないと思ったね。だからつい俺の料理で釣ったけど」


カイさんはまた私を抱き寄せて、


「下心満載の男に捕まっちゃって、ルルも不憫だね」と私にキスしながら言う。


「まあ胃袋掴まれたら、もう逃げようもないですね」とカイさんの首に手を回して、見つめながら言うと。カイさんは私を抱き上げた。


「あの熊が出てくる童謡を覚えていないのか?熊はどこまででも追っかけるんだよ」


カイさんは私を抱えたまま寝室のドアを足で開ける。


「それで巣に引きずり込むんだ」


「絶対、そんな歌じゃなかったです」


「あの歌に3番があったらだよ。。巣に引きずり込んだ後の続きも教えてあげるね」


そんな歌は子供に歌えないですって言うチャンスはもう貰えなかった。


ここで終わるとジョナサンが可哀想なので後数話続きます。

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