表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/10

ピンクの大豆は友情の味

「本当にこの米が見つかった事で色々劇的に俺たちの食生活が変わったな」


オムライスを食べ終えて、みんなで食後のお茶を飲んでいる時に、前から疑問だった事を聞いてみた。


「お2人は初めから前世の記憶を持っていたんですか?どうやってお互いを見つけたんですか?」


「ちょっと長くなるかもしれないが、まあ明日は休みだし、ルルちゃんは俺が帰りに送って行くから大丈夫かな?つまみを作るよ」そう言ってカイルード様は袋からピンクの何かを出して、鍋に入れた。


「お、それなら俺はエールを」ジョナサン様はいそいそお酒を出してきた。


「ルルちゃんはまだ未成年じゃないのか?ジュースあったかな?」とカイルード様が棚を探してる。


「もう来月で20歳です。こちらの成人は17歳ですよね。でもエールは好きじゃないので、他の飲み物があれば」


「じゃあ、レモネード作るね」と緑のきゅうりの様なものを持っている。


「それがレモンなんですか?」


「ああ、きゅうりのつもりで切ってサラダにしようとした時は酷い目にあったよ」


カイルード様は2/3をすりおろして水に砂糖と一緒に溶かし、残りはスライスにして入れてくれた。見た目はきゅうりウォーターだが、飲んでみると確かにレモネードだ。


「本当にレモンの味がする」


「はい、これもできたよ。見た目はどうにもならないけど、味は枝豆なんだよ。そしてこれのお陰で俺とジョナサンが出会えたんだ」


目の前のお皿にはピンクの鞘の豆が山盛りになっていて、塩が降ってある。


手に一個取って豆を出すと、中の豆もピンクだった。恐る恐る口に入れると、確かに枝豆の味がした。


2人はピンクの豆を食べながら、エールを飲んで嬉しそうだ。


「懐かしいな、もう10年ぐらい前かな?」とカイルード様が目を細めて言う。


「結構前ですね、お2人はいつから前世の記憶があるんですか?」


「俺が前世を思い出したのが、まさにこの豆のおかげなんだよ、だから18歳の時からな」とジョナサン様は手に取ったピンクの枝豆を見ながらいう。


「俺は17歳の時に親元を離れて、騎士学校に入った時に思い出したんだ。だから、ジョナサンの1年前だな。先輩について街を巡回している時に暴走馬車が走ってきてね、その目の前にいたお年寄りを抱えて脇に避けた時に、俺はバスが車線からはみ出たトラックにぶつかりそうになった時に、立っていた瑠璃ちゃんを抱えたなって思い出したんだ」


あ、あの時誰かに抱えられたと思ったけど、海斗さんだったんだ。


「騎士学校は寮でね、食事はみんなで食堂でするんだ。その日の夜の夕ご飯は肉がでたから、何とかなったが。それ以外のものには手がつけられなかった。騎士は体が資本だから死活問題でね。どんどん痩せていく俺に心配した教官が、特別にキッチンを使わせてくれたんだ。そこから市場に行って、試行錯誤の日々が始まりだよ。本当に匂いとか耐えられない以外は本当に一個ずつ試して行ったんだ。料理を作る事自体は問題なかったし。パンとかは作れなくても、小麦に似たものでうどんを作ったり、イーストを使わないナンの様なものを作って主食にしていたんだ」


ナン。。いいな、私も食べたい。カイルード様は話を一旦止めてエールをごくごく飲む。酔っ払わないのだろうか?


「一年たって、騎士の資格も無事に取れて第三騎士団に配属になったんだ。すぐに国境沿いのエリアに派遣される事になって、荷造りをしつつ、向こうに王都でよく使っている食材がないといけないと思って、乾物を色々買いだめていたんだ。時にこのピンクの枝豆は好きだけど、旬の時期は今だけで、その時はまだ出回ってなかったから。乾燥してるのを種として持っていこうと多めに買っている時に、ジョナサンに店であったんでだ」


カイルード様は枝豆を摘んでじっと見ている。


「俺は買い物に来たわけではなくて、騎士団の財務課に配属されたばかりで、遠征の時の持っていく食糧の予算の組み立てをする為に食材の値段が知りたかったんだ。その時、騎士服を着た熊みたいな男がこのピンクの豆を沢山買っているから、騎士に人気な食材なのかもと思って話しかけたんだ、そしたらカイルードはなんて言ったと思う?半分は食べる様ですが、半分は()()()()()育てる為の種なんですって言ったんだ」


ジョナサン様はその時を思い出した様でクスクス笑っている。


「枝豆なんてこの世界じゃ誰も知らない、でも俺にはわかったんだ。そこで、俺は何も考えずに言ったんだ。こんなピンクの枝豆があるもんかって、でその瞬間に記憶が蘇ってきて、頭痛がして倒れそうになったんだ、そうしたらカイルードが咄嗟に俺を支えてくれて、その時つい、()()()()()()()って言ったんだ。そこでカイルードは俺が潤だって気づいてくれたんだ」


「いきなり海斗って呼ばれてびっくりしたよ、何で分かったんだと思った。俺は海斗と全然違うからな。体も大きいし、髪の毛も目の色も違うし。。熊とか言われているし」


確かに前世の海斗さんはどちらかと言うと細身で背は低かった。でも目の色は違っても形は似ている。


「俺は潤に何となく似てるから、カイルードはすぐに分かったな」


「ルルちゃんも何となく面影あるよね」とカイルード様が私の事を見ている。


「まあそれで再会を果たした訳だが、カイルードは国境の街に次の週には行ってしまうから、毎晩そこからカイルードは俺の家に来て1年で培った知識を全て教えてくれた。そして俺はパン酵母の作り方をカイルードに教えた。向こうでパンが焼ける様にな。カイルードが旅立ってから、俺はこのピンクの枝豆を乾燥させたもの、大豆を使って発酵食品ができないか研究を始めたんだ」


「俺が帰って来れるのは年末の休みぐらいだったから、帰るたびにジョナサンと新しい食材を紹介しあったりしてたんだ。仕事も順調に出世していって、2年前に俺は団長に、ジョナサンは事務官長になったんだ。その頃、ジョナサンが計算がよくできる女の子を採用した、彼女も異世界からの転生者かもしれないって言ったんだ。でもジョナサンは瑠璃ちゃんに会ったのはバスの中が最初で最後だからわからないって言うから確信はなかった」


「だから、予算会議で帰ってきたらカイルードにルルちゃんの事を見てもらうと思って、予算会議のアシスタントをして貰う事にしたんだ。でも普通に同僚と食事に行ってるし、カイルードや俺を見ても特に変わった事ないし、俺は違うと思った。でもカイルードはあれは絶対に瑠璃ちゃんだって言うし」


「そう言えば、入って1-2年の事務官が予算会議に参加するのは珍しいんですよね」


「勿論、実力があると見込んでだよ。瑠璃ちゃんは理系だったんだよね。絶対俺より数学できるだろうし、いつも書類は完璧だった。だから、まだ記憶が戻ってないんだろうと思ったんだけど、働き始めてから2年間そのままだったし、カイルードと初めて会った時も何も変わりがなかったから、まさかカイルードの弁当で思い出すと思ってなくて、対処が遅れて申し訳ない。怖かったろう?」とジョナサン様が申し訳様そうに言う。


「何も食べられないなら、記憶が戻らなければ良かったと思いました。。。。」


またしゅんとしてしまった私の頭をカイルード様は撫でてくれる。


「もう大丈夫だよ、俺たちが学んできた事は全て教えてあげるし、このコメもどきを見つけてから、全てが劇的に変わったって言ったろ」


カイルード様は何か透明な液体が入った瓶をテーブルに置いた。


蓋をとって匂いを嗅がせてくれる。


「これお酒ですか?日本酒みたい」


「そうなんだよ、度数は高くないけど、国境地域で飲まれているお酒なんだ。コメもどきが入った実は元は黄色なんだけど、完熟すると赤くなる。そうすると中身が発酵してお酒になるんだ」


「米がお酒になると言う事は何かの菌ががいると言うことなんだよ。米からお酒を作る麹菌に似た何かが」とジョナサン様がすごく興奮している。


「麹菌ですか??」


塩麹とか作れるってこと?


「麹菌と米と大豆があればできる物があるんだよ」とジョナサン様はキッチンの奥から大きな容器を持ってくる。


中身はピンクが赤くなったペースト状のもの。


でもこの匂いは知っている。


「まさか。。味噌ですか?」




ピンクの枝豆。可愛いかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ