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エンカントシティ~魅入られた街~  作者: 伊達 鉈
ゴブリンマンション
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3XXX年10月8日

『今年で未曾有の魔術的大災害から200年目になる。

世界達を隔てる壁を取り除く結果になった大規模な儀式

それは人類の夢を叶える(まじな)いあるいは悪夢を見せる(のろ)いか。

まぁ、どちらにせよ一緒だろう。』


俺は革の手帳を愛用のコートの懐にしまうと目の前の光景に視線を移した。

人の腰ほどのサイズの緑色をした小鬼が走り回っているのを内心ため息を吐きながら見つめる。

妖精種に類されるゴブリンという、この世に舞い降りたいわゆる幻想(ファンタジー)の一種だ。

以前ならおとぎ話の中でしか認知出来なかった彼らの存在が200年前からは当たり前の様に人々と共に共存している。

しかしやはりと言うべきか人とは違う倫理観や思考を持つ彼らとトラブルも無く過ごすのは容易な事ではない。

そういう事態になった場合は我々、神秘協会の出番だ。


「やれやれ、俺は狩人じゃないんだがな」


神秘協会には色んな部門があって対話や平和的手段での解決を試みる事もあるが、そうでない場合出てくるのが討伐部門だ。

狩人と呼ばれる彼らはこういう荒事の対処を得意とする。

ゴブリンは気性が荒いわけではないが妖精種によく見られる性質、悪戯好きだ。

そしてその悪戯は人類には少々度が過ぎるのだ。

彼らは人々の創作話をいたく気に入っておりそれらを媒体に人間界に顕現する事が多い。

明らかに不釣り合いに大きい兜と鎧の胸部を身に纏い自分の身長程ある両刃の大剣を持った目の前のゴブリンが良い例だろう。


「貴殿、名ヲナント申スカ!ギャギャ!」


ふむ、騎士団物語の本でも媒体につかったか?

適切な処理をせずにこんな魔力が溜まっているビルの中に不法投棄するからこうなる。

どれ、ここは俺が相手をしてやろう。


「俺はヨエル、神秘協会の記録保持部門の者だ」


記録者あるいは保持者と呼ばれるこの部門の者達は名の通りあらゆる神秘の情報などを記録と保持する事だ。

そうする事によりあらゆる神秘に対する対策を残すのが目的の部門だ。

少なくとも表向きはそうなっている。

それとは別に神秘狩人達の補佐というのもやっている。

まぁ、どちらにせよ直接的に討伐はしないという事だが狩人がいないなら俺一人で対処するしかない。


「ヨエル...良イ名ダ!ソレデハ勝負!」

「ありがとうよ騎士殿」


大剣に振り回されながら突撃してくるゴブリン。

ひらりと身を躱すと子鬼は己の剣と鎧の重さに耐えきれずにそのまま地面に倒れる。

その倒れた背中に脚を置き、軽く踏みつける。

これで決着だ。


「グェ!ギャギャギャ!俺ノ負ケダ!」


ゴブリン達はあくまで悪戯して遊びたいだけだ。

彼らの対処法は彼らの望む方法、主に媒体となった物の内容に沿って遊んでやってあげればいい。

遊びと言っても今回みたいに剣といった物騒なものも出てくるので危険が無いわけではない。

遊んで満足したゴブリンの身体が灰になって崩れる。

現世での肉体を持たない彼らはこうやって仮初めの身体を捨て魂だけ元の世界に戻っていくのだ。


ゴブリンの遺灰を拾って行くとしようか。

魔女共に渡せば傷によく効く小鬼の軟膏を作ってくれる。

副作用として耳が伸びたり肌が緑になる場合もあるが、まぁ些細なことだ。

さて、狩人達は上の階だな。

俺も向かうとしようか。

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