第十話 電波ジャック作戦会議
スモークは机の上に
片耳ヘッドセット、護身用フラッシュライト、
カラースモーク、ライター、暗視ゴーグル二つを
机に並べた。
スモーク「作戦はこうだ。
まずヘッドセットを片耳につけて
髪の毛で隠し、俺とスマホで
通話出来る状態でいつも通りテレビに出ろ。
俺がテレビ局をハッキングして
外で準備しておく。
俺はスマホのテレビ機能で放送を見てるから
お前が暴露し始めたら
スタジオのモニターにサブリミナルの証拠の
映像を流す。
暴露する内容は手短にな。
多分放送中断して
しばらくお待ちくださいの画面になるから
そうなったら俺が通話で教えるから
直ぐに逃げろ。直ぐにだぞ。
立ち止まるな。逃げる事だけ考えろ。
スタッフとかの関係者に捕まりそうになったら
フラッシュライトを使って目をくらませて
そいつらの動きを止めろ。
この光は想定外にもろに喰らったら
まあ暫くは動けないだろう。
だがこのライトはあくまでも時間稼ぎだ。
相手を倒す事は出来ない。
相手の動きが止まったらすぐ逃げるんだぞ。
逃走中に相手が追って来たら
このカラースモークに火をつけて後ろに
投げ捨てろ。煙幕になって行方を眩ませるんだ。
いいか、このカラースモークは
追手が一方向から来てる時に使うと効果が高い。
廊下で追われてる時に使うのが一番いいだろうな。
逃げて所定のトイレに入り込んだら俺に教えろ。
俺がテレビ局に停電を起こすから待ってろ。
俺が暗視ゴーグルを被っておまえの分も持って
所定のトイレにお前を回収しに行く。
着いたらドアを4回ノックする。
4回だぞ、4回。
おまえと合流したらお前に暗視ゴーグルを被せて
暗闇の中二人で暗視ゴーグルを使って
逃走だ。いいな?」
美沙「凄いね。これなら上手く行きそう!」
スモーク「作戦当日は髪を下ろして耳が隠れる髪型で、
スカートは駄目だ。パンツでな。
ハイヒールはやめておけ。走りやすい靴にしろ。
余計な荷物も持つな。1グラムでも
体を軽くしておくんだぞ」
美沙「わかったわ。任せて」
スモーク「注意点は、カラースモークに火をつける時、
慌てず確実に着火する事。
それと、とにかく速く逃げる事だ。
周りの会社の仲間やスタッフの説得とかも
あるかも知れないが、気の毒だが
耳を貸すな。残念だがな。
少しでも心に迷いがあれば失敗すると
思った方がいいな」
美沙「……大丈夫。もう決めてるから」
スモーク「不安材料はおまえを回収してから
テレビ局の外に逃げるまでに、
どれ位警備員が居るかだな。
あとテレビ局ってのはテロ対策の為に
内部が入り組んでるらしいから
局内の移動経路を俺にもちゃんと教えてくれ。
そんな所だ。……質問はあるか?」
美沙「質問?……んーっと、この暗視ゴーグルだけどさあ」
スモーク「どうした?」
美沙「もっとかわいいの無かったの?」
スモーク「そんな事言ってる場合か!」
美沙はドヤ顔でスモークをニヤニヤと見つめてやった。
スモーク「……おまえ今わざとボケただろ……」
美沙「ヒヒヒー どうだ~ツッコまずにはいられないだろー」
スモーク「この状況でよくそんな事言えるなーおまえは」
美沙はスモークにツッコまれるのが好きになっていた。
そしてスモークとボケやツッコミで遊ぶ他愛もないその刹那に、
この人となら大丈夫 きっとうまく行く と、
自分が電波ジャックをするという未来を
ほんの少しだけ忘れて居られたのだった。
つづく