Prologue
望めば異世界転生出来るなら。
誰もが異世界を求めるだろう。
心臓が止まるほどの過労であろうとも、誰かに殺められる悲惨な最後でも、トラックに轢かれる痛みすらもなんでもない。
死を乗り越えてでも欲しいものが異世界にあるのだとしたら。
私は何度だって死を選ぶ。
「大丈夫ですか…?」
「倒れてる人間が大丈夫なわけないじゃん…」
目を覚ますと女の子が覗き込んでいた。
見たことのない女の子だった。
「そっそうですよね!ごめんなさい!ど、どうしよう?起きれますか?」
私の言葉にオロオロとするその子に少しの苛立ちを覚えながら身体を起こす。背中が痛い。けれど特に大きな怪我をしている部分はないようだ。
周りを見渡すと一切見たことのない風景。信じがたいけれど、本当に自分は知らない世界へ来たんだと悟った。
「ここは、日本?」
「ニホン…?ってなんですか」
「………」
ドキドキと心臓が痛いほどに脈打つ。本当に、本当に自分は異世界へ転生できたんだ。あれほど望んだ世界に。
「私、探さなきゃいけない人がいるの。手伝ってくれない?」
「探してる人…」
キョトンとする女の子を尻目に立ち上がり伸びをする。この世界に私の求める人がいるかどうかは正直分からない、それでも私は貴方を求めてこの世界へやってきた。そんな私を貴方はどう思うのだろうか?
「聞きたい事がたくさんあるの。ごめんだけど、ゆっくり話ができる場所に連れてってくれないかな」
「あっはい!だったら私の家が近くにあるので良ければ来てください」
「そうね、お邪魔しても良いなら。ありがとう」
どうか貴方に辿り着けますように。