第07話(2)
黒猫フレイアが、喫茶アデルにご到着。
自らの影の中からファイルを口で取り出しケイトへ。
ケイトが笑いながら一部始終を皆に聞かせたところで、ファイルをエルに差し出した。
「午後は侵入する必要無くなったわね。」
「・・・私は何の為に午前中侵入したというの?」
「んー、イヴの実践経験を積む為・・・とか?」
これにはイヴも苦笑いするしかない。
エルは非常に不本意であったが、
「・・・そういう事にしといてあげるわ。」
と言って、バシッと勢いよくファイルを受け取っていた。
エルとイヴは、ひとまずニードルの本部にご帰宅。
今朝と同じソファーに座り、持ち帰ってきたファイルを開いて中身を確認する。
そこに、受付嬢がコーヒーを2つ運んできた。
イヴの方にだけ、砂糖とミルクの入った小瓶も差し出す。
「あ、ありがとうございます。」
イヴは礼を言うが、エルはいつもの調子で掌ブンブン。
受付嬢は、わざとデカいため息をついてフロントに戻った。
イヴは、この2人のやりとりにようやく慣れてきたかなと思い始めている。
「エルはブラック派なのね。」
「別にいいでしょ。」
見た目が外見年齢15歳の美少女なだけに、ギャップが凄まじい。
さすがにエル本人の性格を相手にするのは、慣れるのに時間かかりそうよねー。
エルは1枚1枚丁寧に見て、見終えたものからイヴに手渡す。
時間差でイヴも確認するが、そこに記載されていたのは毒花ペレスを販売した報告書だった。
数字は金額だろうが、文字の方は暗号化されていて何が書いてあるか分からない。
しかし、分からなかったのはイヴだけ。
エルは人形娘。
人間とは異なる頭脳が、暗号を一瞬で解読していく。
「ようやく奴隷商アラクネに一歩近付いたわね。」
「え?
なんて書いてあったか分かるの?」
「見れば分かるでしょ。」
「・・・。」
どう頑張っても分からなかった。
「古い時代の字列変換使った暗号よ。
こんな文字、暗号のうちに入らないわ。」
「・・・エルって凄いのね。」
褒めているのに、それでもエルは素っ気ない。
「暗号チャートが欲しいなら、フロントのコーヒー係に言えば出してくれるわよ。」
「あ、そうなんだ・・・。」
フロントの方から、
「あたしはコーヒー係じゃねー!」
と罵声が飛んできたが、もちろんエルはスルー。
そしてイヴに渡していた書類も全て取り上げ、スタスタとフロントに持っていく。
「そっちで保管しといて。
あと、レオンとルクターに伝言。
その書面で裏は取れたから、今夜から実行に移る、と。」
「分かりました。」
こういう時に限っては受付嬢も素直に応対する。
レオンはニードルの長、ルクターは副官だ。
このやりとりを聞いていたイヴがとりあえず問う。
「今夜って、どこに侵入するの?」
「ケイトの黒猫が暴れたあの建物。
書面では地下の連絡通路で毒花と現金のやり取りをしているとある。
1階のどこかに、地下に通じる階段があるはずよ。
今夜はまず、その侵入ルートを確認。
脱出経路の有無も見極める。」
「分かった。
夜までまだだいぶ時間あるけど、どうするの?」
「今のうちに寝ておきなさい。
状況次第では徹夜になるわ。」
これを聞いていた受付嬢が笑顔で語る。
「今の時間ならスィートルームが空いてますよ。」
「あ・・・はい・・・どうも・・・。」
この高級ホテルの様な職場環境も、エルの性格同様に慣れるまで時間がかかりそうだった。




