缶コーヒーを飲みながらの夏祭り、ひまわりが見える丘で
「久しぶりの夏祭り、か」
俺は、缶コーヒーを飲みながら呟いた。
去年、俺は地元へ帰っていた。
まあ……その、親父が倒れたから。
親父の介護で母さんが大変だから、俺が実家の農家を継ぐために仕事を辞めたのだ。
……で、今日は地元の夏祭りだ。
毎年ひまわりが見える丘の所で、有志の人たちが集まってやっている。
俺は久しぶりに、有志の参加では無いが見に来たのだ。
「昼間から、集まってんなぁ」
あちこちに屋台が並んでいる。
地元は珍しく、昼間に夏祭りを行っている。
「あれ、吉雅君?」
後ろから、女性の声がする。
振り向くと、黒い髪をなびかせた人が立っている。
「……もしかして、ちひろか?」
俺がそう返すと、彼女……ちひろは頷いた。
▫▫▫
砂川ちひろ、俺の高校までの同級生だ。
彼女も高校卒業したら、都会へ行ったと聞いたのだが……
それを言うと、彼女は笑う。
「どうした、俺……何か可笑しな事を言ったか?」
「……ううん、ごめん。そうじゃ無くてさ、私たちの関係って高校の時の絡みだけだったのに、よくそんなこと覚えていたんだなって」
まあ、確かにちひろの言う通りだ。
「まあ、ちひろにはお世話になったからな。特に生徒会で」
俺は生徒会長、ちひろは副会長―――
こういう関係性だったから、特に印象に残っていたのだ。
「吉雅君って、意外と一人で抱え込むからさぁ。気軽にやって欲しくて、ついね」
彼女がそう返す。
「そうか」
「でね、地元の夏祭りは毎年来ているのよ。仕事の休みを使ってね」
「……へえ、そうなのか」
「で、吉雅君は?」
俺の事を話した。
ちひろは、「そうなの」と返す。
「また、一人で抱え込んでない?大丈夫?」
心配そうに、俺の方を見る。
「……心配し過ぎだぞ、もう高校の時じゃ無いんだしさ」
「ふふ、そうね」
ひまわりが見える展望の所へ出た。
「今年もひまわり、綺麗だねぇー」
「そうだな」
「私たちも、お互い……頑張ろうね」
「おう」
夏の思い出は、高校の思い出と重なった。
……たまに、こういう『再びの出逢い』も良いのかも知れない。