バーディー達とHalloween (if的小話)
【Take1】
この世界に秋があるのかは知らないが、木々の葉も何となく黄色味ががってカサカサしてきた気がする今日この頃。
俺はふと、思いついてしまった。
そしてその思い付きが楽しくなってきて、ニャァと笑う。
「ネストルさん、ネストルさん。」
俺の食料取りを手伝って、高い木の枝に絡んで着る蔓から山葡萄みたいなものを触手でせっせと集めてくれているネストルさんに俺は声を掛けた。
「どうした?コーバー?怪我てもしたか?」
俺を不思議そうに見つめる雄々しくモフいネストルさん。
俺はニヤニヤしないように気をつけながら、まっすぐその顔を見上げて言った。
「トリック・オア・トリート!!」
そしてニンマリ笑う。
ふふふ、ネストルさんはこの言葉を知らない。
故に、意味だって知らない。
だから!!
お菓子を持っている訳がないのだ!!
「トイクオーリトー??」
「トリック・オア・トリートです!!」
「……何だ??それは??」
もふんっとその場に座り、不思議そうに俺を見下ろす。
ん~、カッコイイし可愛い~。
思わずニッコニコに頬が緩んでしまう。
今からこの大きなネストルさんにいたずらし放題だと思うと手がワキワキ動きそうになる。
影子のネルには結構、容赦なく色々してしまうが、流石に大きなネストルさんには気が引けて思う存分、モフり倒した事はない。
「お菓子をくれなきゃイタズラするぞ!!って言う呪文です。」
「ほう??」
「では改めまして、トリック・オア・トリート!!」
こんな森の中、お菓子を持っている訳がないのだ。
我ながら計画的犯行すぎるが、そうでもしないと遠慮なく大きなネストルさんをモフり倒せないじゃないか!!
「……菓子が欲しいのか??」
「欲しいというか、くれなければイタズラをするって話なんですけど??」
しかし、そこは真面目なネストルさん。
俺がお菓子が欲しくてそんな事を言っているのだと勘違いする。
違います!!
俺はお菓子が欲しいんじゃなくて!!ネストルさんに思う存分、イタズラがしたいだけなんです!!
と言う本心は流石に言えない。
俺の言葉に、何か考え込むネストルさん。
ん??何か雲行きが怪しくなってきてないか??これ?!
しばらく考えた後、ネストルさんさんは「少し待て」と言った。
何か物凄く嫌な予感がし始めた……。
ネストルさんさんはしばらくじっとしていた後、ペッと何かを吐き出した。
青ざめる俺。
「コーバー、菓子を…………。」
「申~し訳ございませんでした~。私が悪がったです~!!」
俺はその場で土下座した。
やはり純粋無垢な存在に、悪い事をしようとすると罰が当たるようだ。
【Take2】
「……ハーロイン??」
「惜しい、ハロウィンです。」
お菓子の一件で、何がしたかったのかと聞かれ、俺は元いた世界にハロウィンと言う行事があった事を話した。
「なるほど。一年に一度、死霊が出てくるので皆、その真似をして連れさらわれぬようにするのか……。コーバーのドルムは意外と大変なのだな??」
「いえ……そう言われているだけで、実際に死霊が出る訳ではないです……。」
「ほう??要するに、そう言う事として、皆、死霊のふりをして、先程の『トイクオーリトー』と言って菓子を貰う訳だな??」
「そんな感じです……。」
まさかそれでネストルさんが人間ポンプでお菓子を出してくるなんて思わなかった……。
流石にあれは……理屈は頭ではわかっているけれど、食べる事はできなくてお返しした……。
俺は~!!ネストルさんがモフりたかっただけなのに~!!
何とも悲しい結果となった。
こんな事なら、素直にモフらせてくださいと頼むんだった。
俺はがっくりと肩を落とした。
「コーバー、そう落ち込むな。ちと、元の世界が恋しくなったのだな??」
「ええと~まぁ、そんな感じですかね……。」
そんな俺を、ネストルさんは心配してくれる。
こうなってくると、イタズラしたかったからですとか言いだせない……。
「……死霊のふり……死霊のふりか……。なるほど……??」
ネストルさんはふわんふわんとシッポを揺らす。
いや、仮装の方はそこまで拘ってなかったんだけど……。
「わかった、少し待て。」
「え??」
考え込んだ後、ネストルさんはそう言った。
待てってどういう意味だろう??
そう思って顔を上げると、ネストルさんが四足で踏ん張って、力み始めた。
顔とかかなり怖くなってて、ぎょっとしてしまう。
「ネ、ネストルさん?!」
「う…ウガガガガガガアァァァ~ッ!!」
ネストルさんは全身に力を入れて震わせた。
そして背中を丸め、毛を逆立てる。
何が起きているのかわからず、俺はそれを眺めていたのだが……。
「………ぎ、ギャアアァァァァ~ッ!!」
その背中が割れて…いや背中だけじゃない、体中が割れて何やら得体のしれない部分が表面化していく。
目の前で変化していくネストルさんを見ながら、俺はだんだんと血の気が引いていった。
違う……。
俺が求めていたのはこれじゃない……。
フッと気が遠くなり、俺はその場にぶっ倒れたのだった。
【Take3】
「……ん??」
何だか物凄い悪夢を見ていた気がする……。
俺のもふもふのネストルさんが、得体のしれない化物に変わってしまうなんて……。
考えただけで泣きそうだ。
「……気がついたか?!コーバー?!」
「あ、ネストルさん……。」
俺はいつものようにネストルさんのお腹周りの毛に包まれて寝ていたようだ。
そのもふもふを堪能しながら、ほうっと安堵のため息をつく。
「あ~、良かった~。今、怖い夢を見まして~。ネストルさんの背中が割れて、中から見た事のない怖いものが出でくる夢だったんですよ~。良かった~夢で~。」
もふもふの毛にスリスリしながら俺は呟いた。
目覚めた俺をのぞき込んでいたネストルさんの大きな顔が、物凄く不自然に背けられた。
「そ、それは……怖かったな……。」
「いやぁ、ネストルさんは色々なモノを取り込んでいるみたいだから、そういう事もできるんだろうなぁとは思うんですけど~。事情もなくいきなりネストルさんがああなったら俺、間違いなく卒倒すると思いますよ~。」
「そ、そ、そうか……。」
ネストルさんは何故かしばらく、明後日の方を見ていた。
どうしたんだろう??
まぁいいや。
イタズラとしてモフり倒す事はできなかったけれど、もふもふが堪能できたし。
幸せだからまぁいいや。
俺はネストルさんのお腹の毛に包まれて、もふもふを堪能したのだった。
【Happy Halloween!!】




