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異世界に落っこちたので、ひとまず露店をする事にした。  作者: ポン酢
ひとりといっぴきのリスタート
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迷子の子犬と大猫のお巡りさん

「……よくわからぬのだが??……コーバーはここで暮らすのだよな??街で暮らしたいから一人で生計を立てられる様にしたいのではないのだよな??」


何度目だろう?この話をするのは??

俺は困りながらネストルさんを見上げた。


「そうですって。俺はネストルさんとここにいたいんですって。」


「なのに街で商売をするのか??そうやって自立するのに、街で暮らさないのか??」


「そうですよ??」


「………なんの為に??」


物凄く不思議そうに俺を見下ろすネストルさん。

どうもネストルさんの中で、森で一緒に暮らすと言う事は自分が1から10まで面倒を見る事だと思っている節がある。

なんでだ??


スーダーの街に行った後、俺は気づいたら森で大きなネストルさんにいつものようにお腹の辺りに抱えられて寝ていた。


いや、全く覚えていない訳ではない。


何となく所々は覚えている。

食事会がお開きになった後、ノース君の肩を借りて二人で陽気に店の外まで出た事や、ノース君とギムギムさんに心配されながら千鳥足で街の出口まで歩いた事、リーフスティーさんが何かしてくれてしばらくふらつきが治まって三人にお礼を言って街を出た事とか覚えている。

ノース君が夜だから街に泊まった方が良いと言ってくれていたけれど、そんなにお金ないしネルちゃんが一緒だから大丈夫!なんなら近くの林で一眠りするから~とか言って上機嫌で街を出たような気がする。

その間、飛んでるネルに紐(に擬態した触手)で上に引っ張られて支えられてた気がする。


ヤバい……。

初めて会った人達の前でかなりの醜態を晒したよ、俺……。


で、気づいたらあの繭のある林にいて、気づいたら大きなネストルさんが目の前にいて、ガブッとされた。

食われたのかと思ったら、咥えられて森まで運んでもらったみたいだった。

もふもふに包まれて朝起きたら、スーツがネストルさんの唾液でガビガビになってた。

荷物の方はネストルさんが触手で背中にくくりつけて運んでくれたのでデロデロにはならず、おばあちゃんから買った着替えは無事だったから良かった。


街から帰って目醒めた日は、酷い二日酔いで頭がガンガンしネストルさんに物凄く心配をかけてしまった。

あの木の実。

レープレンの甘煮は食べた感じそこまで強烈なアルコールって感じではなかったが、どうも咀嚼や消化分解によって細胞内の高純度のアルコールが放出される事により度数が爆上がりするらしい。

つまり、俺は結構続けてバクバク食べていたが、それは何度も蒸留して純度を磨いたウォッカやスピリットみたいな酒をショットでガンガン空けていたのと同じだったのだ。


そりゃ、短時間で泥酔するわな。

いくら炭酸と一緒に食べると美味しいからと言って、ガンガン食べていいものじゃない。

今後はネストルさんの言う通り、レープレンの甘煮は気をつけて食べようと思う。


街での食事は、はじめ見た目の青さに躊躇したけれど、久しぶりに口にした料理は凄く美味しかったし、あんなに楽しく食べたり飲んだりしたのも久々だっから凄く楽しかった。


でもそれなのに、何故か俺は街に住もうとは思えなかった。

当然のように、今後ともここでネストルさんと暮らすんだと思っていた。

しつこいくらいにネストルさんに街に住まないのかと聞かれても、全くそうは思えなかったのだ。


「俺、本当に街に住もうとは思ってないですよ??ただ流石に完全に森だけで生きていく適応性は低いのでナートゥにはなれませんから、ルースになっちゃうんですよ。そうすると生活する上でそれなりの収入が必要になる訳ですよ?で、生計を立てるには、街に行く必要があるってだけで……。」


「コーバーが生活する上で必要な物を買う為に商売をしたいのはわかった。だがそれなら自立を目指さなくても大丈夫なのではないのか??欲しいものがある時だけ店を出せば??足りなければ、我がモリーヤを出してやるし……。」


「それじゃ駄目なんですよ~!俺はちゃんと自分の足てこの世界に立ちたいんです。すぐにとはいきませんが、自分一人で生きていけるようにしたいんですって~!」


「……………何故だ??」


不思議がるネストルさんに俺は頭を抱える。

どう言ったら伝わるのだろうか…?


俺は森に住みたい。

ネストルさんと一緒に暮らしたい。

だからこそ、負担にならないよう自立したいのだ。


けれど、森に住む=自分が面倒を見ると言う考えのネストルさんは、俺の言っている事を理解してくれない。

少なくとも、自立するほど稼いで自分の事は自分で対価を払ってなんとかすると言うのはここでは必要のない事で、街に住む為の準備であると思いこんでいる。

いくら違うと言っても何故か平行線のままだ。

俺の言っている事って、そんなにおかしい事だろうか??


「……もしかしてやっぱり、俺がいたら迷惑なんですか?それならそう言って下さい。俺も身のふり方を考えますので……。」


「違う!違う!!迷惑ではない!!」


ここまで話が噛み合わないと、実はネストルさんは森にいられたら困るのではなかろうかと聞いてみると、こちらがびっくりするほど慌てふためいた。


「そうなんですか??」


「そうだ。」


「ここに俺がいても、迷惑ではないんですね??」


「ない!!……ないのだが…すまぬ……やはり我にはよく理解できぬ……。コーバーはいずれ街で暮すつもりがある故、一人で生計を立てられる様にしたいのではないのか??お前はクエルでカナカとほぼ同じだ。当然、街の方が暮らしやすかろう??」


「そうかもしれませんが……俺はここでネストルさんと暮らしたいんです。ネストルさんがいいと言うなら、ここにいたいんです。」


「それは何故だ??」


「ネストルさんと一緒にいたいからですよ?俺がずっとネストルさんと森にいたら駄目ですか??」


「いや??駄目ではないぞ??」


「なら、ひとまずそれで良くないですか??俺はネストルさんと森にいたい。ネストルさんもいてもいいと思ってる。」


「ふむ。」


「ただ俺は完全に自然の中で生きる事は難しいので、ルースとして生活せざる負えない。だから定期的に街に行って商売をする。」


「うむ……わかった。理解した。」


「自立うんぬんはどの道まだまだ先の事ですし、しばらくはネストルさんに甘える形になりますが……。」


「甘えれば良かろう??コーバーはこんなにも小さいのだから??」


そう言ってニョロンと伸びてきた触手がぽふぽふと俺の頭を撫でた。


ん……??


その撫でてくる触手に何か覚えがある。

これは俺が動物を慈しんで撫でているのに近い。


なるほど…そういう事か……。

ぽふぽふと撫でられ、俺は一つの仮説を立てた。


ネストルさんはおそらく、俺の事を守るべき小さな生き物だと思っているのだ。

要するに「子犬を拾った」みたいな感覚で俺を見ているのだ。

だから死ぬまで、1から10、全てにおいて責任を持って面倒を見るべきだと思っている。


「……そういう事なのか~。」


俺はガク~っと肩を落とした。

まぁ、そういう感覚になるのも無理はない。

ネストルさんから見れば俺は子猫か子犬みたいなものだ。

しかも異世界から来た、何の身寄りもない可哀想な迷子なのだ。

その上、体がこの世界に適応してなくて何度も死にかけたし、これからだって何が起こるかわからない。


「コーバー??どうした?!まだ頭が痛いのか?!」


俺が肩を落として黙っているので、ネストルさんは具合が悪いと思ったらしい。

触手で額やら脈やら確認してくる。

その大きすぎる優しさが今はちょっと胸に痛い。


「大丈夫です……二日酔いは治まりました……。」


「そうなのか?だがあまり無理をするでないぞ?!コーバーの体はこちらの存在体とは色々違うのだからな?!」


「はい……ありがとうございます……。」


これは……俺が自立して一緒にいたいと言っても理解されない訳だ。


理由の見当がついて、俺はさらに頭を悩ませた。

何しろネストルさんにとって、俺は保護対象であって同等の存在ではないのだ。


「ゔ~、そうなると本当に難しいなぁ~。」


俺の話を理解してもらうには、俺を保護対象ではなく同等に近い存在と認めて貰わなければならない。

どうすればネストルさんにそう思ってもらえるだろう??

少なくとも今のこのおんぶに抱っこの生活から抜け出さねばならないだろう。


「…………となると、やっぱり自立する事が大事になってくるんだよなぁ……。」


俺はネストルさんに聞こえない程度の声で呟いた。

やはりそれには、自分一人で生きていけるんだというところを見せる必要がある。


でも多分、自立に近づけばきっとまたネストルさんは「街で暮らすのだな?!」と言い出すだろう。

保護した生き物が一人で生きていく力を身に付ければ、自分の元を巣立っていくのだと思うからだ。


「………大変だ…これは……。」


「??何が大変なのだ??コーバー??我にできる事はあるか??」


「いえ、ひとまず大丈夫です……。その時が来たら、色々お願いすると思います……。」


「そうか……。」


目に見えてシュンとするネストルさん。

うぅ…そんなシュンとされると悪い事しているみたいで胸が痛むのでやめて下さい……。

頼られないとネストルさんは不安かもしれませんけど、全部頼ってたらいつまでたっても俺とネストルさんの関係は保護した者と保護された者のままだ。


俺はそんなのは嫌ですから。


たとえ同等とはいかなくても、ちゃんと自分の足でこの世界に立って、ネストルさんと一緒にいたい。

俺にそうしてくれたように、ネストルさんが困った時、気持ちや体が弱った時、何もできなくてもせめて寄り添っていたい。

無いに等しい力でも、ネストルさんの力になりたいから。


でもまあ、そこまで行くのはまだまだ先の話だ。

とりあえず、露店で一定の稼ぎを常に出せるようにする事が先決だ。

何しろ俺は、まだ1度しか露店を成功させていないのだから。

ここからどうしていくか、きちんと戦略を立てねばならない。


「色々、前途多難だよなぁ~。」


異世界でもやはり生きていくのは大変だ。

俺の異世界転移は残念ながらイージーモードとはいかないみたいだ。

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