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すれ違い追走曲

おばあさんと別れ、露店市を少し歩いた後、俺は大通りの方に出た。

そこに並ぶ店を横目で見ながら、ぼんやり歩いていた。


「コーバー、こんな所にいたのか。探したぞ?」


そう声が聞こえて振り返ると、昼から夜に切り替わる微妙な淡いアミナスの光の中、小さくなったネストルさんが浮かんでいた。

その姿が、街で両親と暮していたであろう幼いネストルさんと重なる。


「……ネル……。」


大型種の猫みたいなその体に触ると、ネルは自分からしゅるりと腕の中に収まってくれた。

それをぎゅっと抱きしめる。


「随分、買い物をしたんだな??」


「うん、親切なおばあさんに会って。そこで古着とか買ったんだ。」


「重くないか?」


「大丈夫。服だからたいして重くないよ。ありがとう。ノース君の方は大丈夫だったんですか??」


「ああ、何でも皆、いない事に気付いてなかったようでな……逆にウォーグルの奴が文句を言っておった。」


「はははっ!何だそれ?!でも良かった。」


ネルと離れていたのは半日ぐらいなのに、何だかとても長く離れていた気がして、グリグリと顔を擦り付ける。

甘いような、よく干した布団の様な、いい匂い。

腕にネストルさんのふわふわな毛が触れていて、とても安心する。


「……コーバー、その匂いを嗅ぐのは何なのだ??臭いのか??我は??」


「臭くないですよ?むしろいい匂いだから嗅いでるんですけど?でもたとえ臭くても多分かぎますけどね、俺。」


「……は??」


「ネストルさんはいい匂いですけど、実家の犬は独特の臭がしてましたけど、絶対帰ると嗅ぎまくりましたから。」


「………それにはどんな意味があるのだ??」


「さぁ??安心すると言うか??」


「ふ~ん……。」


安心すると言うと、ネストルさんはすーはーする事に何も言わなくなった。

諦めたようにおとなしいネルの匂いを嗅ぎながら俺は聞いた。


「……ネルは、俺が露店をやっている間、どこに行っていたんですか??」


少し拗ねたように尋ねる。

はじめは周りをふよふよ飛んでいたのに、ネルは気づいたらいなくなっていた。

探そうにも忙しくてそれどころではなかった。

影子とは言えこの地を守るマクモなのだから、変な事にはならないと思ったが、何も言わずにいなくなられては気になるというものだ。

しかもあんな事を知った後だと、怒るに怒れない。


「……大きさもあってな……街の中に入ったのは随分と久しぶりだった故、色々見て回っていたのだ。心配させたならすまなかった。」


色々、というのがとても深い意味がある気がした。

でも自分が立ち入っていいことでは無い。

複雑な気持ちを抱えていても、踏み入っていい領域ではないのはよくわかっていた。


「……この街はとても大きくなった。我が知っている頃の面影など殆どなくなっていてな?まるで知らない街の様だったぞ。」


俺の腕の中から、じっと真っ直ぐに街を見るネストルさん。

それ以上もそれ以下も、自分には触れる権利はない。

少しだけ泣きたくなって、ぎゅっと抱きしめる。


「……どうした?コーバー??」


「いえ、少しもふもふ不足だったので、充電しているだけです。」


「おかしな奴だな??」


「ええ、おかしな奴ですよ。」


「何だそれは?!」


ネストルさんはおかしそうに笑った。

こうやって笑えるならきっと大丈夫だと思った。

それが愛想笑いでも空元気でも、笑えるならきっと大丈夫だと…。

そんな事を考えている俺に、ネストルさんは間を置いて、少し言いにくそうに声をかけてきた。


「……コーバー?」


「はい??」


「何で……蜜水など売ろうと思ったのだ??」


急にそんな事を聞かれ、ぽかんとしてしまう。

え?そこって何か重要ですかね??よくわからない。

でもネストルさんは真面目な顔で腕の中から俺を見上げている。

どうしたのだろう?ネストルさん??


「……蜜水など、たとえ色を変える事を売りにしたとしても、売れるかどうかわからなかったであろう?何故、その様な不確定な物を売ろうと思ったのだ?商売をするにしても別に蜜水でなく、木の実を集めて売るなり、鉱石を探して売るなり、森で採取できるものを売る事ができたはずであろう??」


ネストルさんは真剣な顔でそう聞いてきた。

俺には蜜水を売った事の何がそんなに引っかかったのかわからない。

でもこんなふうに聞くというのは、ネストルさん的には何か納得行かない部分があるのだろう。

でも俺にはそれが何かわからない。

だから素直に思っている事を答えた。


「確かにそうですが、それだとこの世界でどんな物がどんな値段で売れるのかわからない俺には不利じゃないですか??」


「……我に聞けば良かったろう??」


ムスッとむくれてネストルさんは言った。

あれ??もしかして…俺が一人でどうにかしようとした事を怒っているのか??まさかな??

あの懐の深いネストルさんがそんな事を根に持ったりはしないだろう。

なので俺はまた、考えていた事をそのまま話した。


「ん~、そうなんですけどね??でも俺は、ネストルさんに頼らず、きちんと自分一人で、生計を立てるとまでは行かなくても売上を出せないと駄目だって思ったんですよ。」


俺にそう言われたネストルさんは、アニメかって言うくらい目を見開いて驚いていた。

そして妙にアワアワしだす。


「……え?!何故だ?!何故、コーバーは一人で売上を出さねば駄目だと?!我は頼りないのか?!」


「むしろ逆です。おんぶに抱っこで何でもしてくれるでしょ?ネストルさん。ネストルさんの甘やかしランクって半端ないですから。一度どっぷり溺れたら抜け出せないほど魔性味がありますからね。だからこのままネストルさんに甘え続けてたら、俺は一生、この世界でちゃんと一人で生きていけないだろうなって。」


「それで…我に頼らず、一人で全て考えたのか……。」


ネストルさんはそれを聞いて、微妙に衝撃を受けた顔をした後、考え込んでしまった。

甘やかしがすぎるって言ったのがまずかったのかな??

これでもう甘えるなとか言われたらちょっと辛いんだけど??

あのお腹のもふもふに埋もれる事ができなくなったら、辛すぎて泣きそうだ。

とにかく何で蜜水を売ったのか、ちゃんと説明して機嫌を直してもらわないと。


「蜜水の事ですけどね?手始めに何なら売れるかなって考えていたんです。売れるものってつまり、自分でも欲しいと思える様なものなはずじゃないですか?……でも俺、思い返したらここ何年も何年も、心から欲しいって、ワクワクして買ったものなんてなかったんです。そんな風に心を動かされて買った物なんて何も無かったんです……。」


そう、何も無かった。

欲しいと思う事も、ワクワクする事も無かった。

でも、今はそれがあるのだ。

それを思い出すと自然と笑みが溢れる。

俺は心配そうに見上げてきたネストルさんに微笑んだ。


「ですがつい最近、心をとても動かされた事があったんです。俺の気持ちが凄く温かくなった事……。売れるもの、欲しいもの、心を動かされるもの……。それを考えていた時、ふわっと思い出したんです。」


「……それが、花の蜜…だったのか??」


「はい。」


ネストルさんはそこまで聞くと、一瞬、固まってしまった。

そしてぷるぷる震えなから、ぷいっと顔を背けて黙ってしまった。

またこの人は~!そういう可愛い事を無自覚でするんだから~!!

俺はその可愛い後頭部を見下ろしながら笑った。

照れている様子が可愛くてグリグリと頬擦りする。


「あれね、ネストルさん。俺、凄く凄く嬉しかった。ネストルさんが一生懸命考えて渡してくれた蜜なのに、俺、どうしてもすぐに口にする事が出来なくて…。それで色の事を言ったら、怒りもせずにそれをどうにかしようとしてくれて……。」


「別に……怒るような事でもあるまい……。色味に対する反応は別のドルムから来たのだから当たり前だし、ここは全てが青みが強くて少し気持ちが悪くなると言っておったし……。」


「だからって、一生懸命相手を考えた末に渡した物が相手に拒絶されたら、普通は頭に来ますよ。しかもその理由が色が嫌だとか、ナメてんのかって思われても仕方ないですし。」


「そこまでは思わぬだろう?!」


「思いますって。ネストルさんは人が良すぎなんですよ。俺のわがままみたいなものなのに、ネストルさんは怒らないで聞いてくれて、しかも色を変えてくれて……。」


そう、あれは嬉しかった。

たくさんの不安や焦燥感、絶望感や虚無感。

あまりに多くて俺の心は何も感じず、何も求めていなかった。

そこにあの優しさは、雪解けの春のように静かに温かく染み渡り、小さな蕾が花が開いた。


「アミナスの夜明かりの下、蜜がふわっと桜色に変わった時の事、俺はきっと、ずっと忘れないと思います。」


この世界に落ちて、二度と見ることはない桜の花。

でもその色は、この世界でも俺の心の一番暖かい場所に咲いたのだ。

その事を俺はおそらくずっと忘れないだろう。


「……サクラ色??」


そんな俺に不思議そうにネルが訪ねた。

確かに桜を見たことのないネルに桜色と言ってもわからないだろう。


「ふふっ、俺の世界には桜と言うとても綺麗な花があって、それが淡い薄赤色をしているんです。小さな花が木を覆い尽くすように咲き、その花びらが風に舞ったりしてとても綺麗なんです。」


「それは……凄いな?!」


想像して見ているのか、ネルは目を丸くして考えている。

そんな様子が可愛くてよしよしと頭をなでる。

ネストルさんはネルの姿だと、何気に撫でられるのが好きみたいだ。


「俺の国ではある意味、誰の心にもある花です。だから青みがどうしても受け入れられなかった花の蜜が、そんな桜色にふわっと変わったのを見た時、俺、凄く嬉しかった。」


「そうか……。」


「だから、俺が一番心を動かされた出来事だったから、蜜水を売ろうと思ったんです。こんなにも俺の心を動かしたものなら、多少なりとも他の人の心にも響くものがあるだろうって。」


腕に抱いているネルの喉がゴロゴロ言っている。

どうやらご機嫌のようだ。

可愛くて抱きながらもしゃもしゃなでる。

やっぱりネストルさんは癒やしの固まりだ。

ネストルさんの優しさは、街を救い、そして俺も救ってくれる。

心ゆくまで撫で尽くした後、俺は商品を蜜水にしたもう一つの理由を話し始めた。


「後はアレですね。儲けを考える時、飲み物の類は結構、いいんです。」


「………は??」


その瞬間、ネルのゴロゴロは止まった。

そして怪訝そうに俺を見上げる。

俺は続けた。


「俺の国では水商売って言葉ができるほど、水物、つまり飲み物の価格は上手くやればかなり低コストでハイリターンを望めるんです。今回もそうでしょ?水で割って蜜水を作る訳ですから。たとえ蜜を購入していたとしても、濃度である程度の調節が効きます。水が有料だった場合はかえってハイリスクになりますけどね。でもこの国はむしろ水はジャバジャバありますから、有料って事はないと思ったんです。」


さらりともう一つのネタバラシをすると、ネルは別の意味で赤くなった。

そしてジタバタと暴れる。


「………おい!!コーバー!!さっきまでの感動を我に返せ!!今すぐ!!」


「何を言っているんですか?ネストルさん?水物で儲けを出すのは、飲食店経営のテッパンですよ?!」


「そんな事知るか~!!シャーッ!!」


うう、何でそんなに怒るんだ??

軽く爪を立てて怒るネルに俺は困惑する。

さっきはネストルさん、そんな事では怒らないとか器の大きい事を言っていたのに、何が逆鱗だったんだろう?!

確かに今回は殆ど森で採取しただけで、元手なんてかかってないけれど、儲けを出さないと商売は成り立たないし、ご飯が食べられないんだぞ?!

そう思って俺も暴れるネルをなだめながら言い返す。


「何でですか?!そこで安定した売上を出す事で!価格変動に備えたり!別の商品を原価に対し安めに設定したりするんですから!!大事な事なんです!!」


「お前は他の商品なんて無いであろうが~!!」


「今後の展開です!!」


「はぁ?!まだ何か売るのか?!」


「当たり前です!蜜水だけで食べていける訳がないでしょうが!!」


俺がそう言うと、またもネストルさんは衝撃を受けた顔をした。

何と言うか、まさにガーンッて感じだ。

え??何で??

何か変な事を言ってしまっただろうか??


「今後も……今後も店を開くのか……今回だけではなく……??」


「そのつもりです。色々生活に必要なので。」


「……どれくらい必要なのだ??」


「どれくらいと言うか、今後、食べていく為に規模や商品を変えながら、ずっとやっていくつもりですよ??」


「ずっと??」


「そうです。ずっと一生。」


それを聞いたネルは、何故かだらーんと脱力し、俺の手にぶら下がってしまう。

え??何がそんなにショックなんだ??

よくわからず困惑する。


「……そうか……コーバーは……自立したいのだな……。」


「まぁ、そうですね。」


そしてそう力なく言われ、俺は戸惑いながらも答えた。

ネルはとてもショックを受けている様なのだが、何がショックなんだろうか??

そして微妙に涙目になりながら俯いた。


「そうか…そうであろうな……いずれ街で暮らしたいのだな……。コーバーはクエルなのだし、当然そうなるであろうな……。」


何故か元気なくそう言うネストルさん。

これには俺がキョトンとした。

ん??

何か勘違いしていないか??

ネストルさん??


「いや??街には住みませんよ??俺はネストルさんといたいので、ネストルさんが嫌でなければ、これからもアルバの森で一緒にいたいです。」


俺ははっきりそう言った。

どこでどう、そう思わせてしまったのだろう??

だが俺の言葉に、ネストルさんはまたびっくりして目をひん剥いた。


「我と……今後もアルバの森で暮らしたいのか……??コーバーは……??」


「はい。ネストルさんが嫌でなければですけど??」


「だが、自立したいと……。」


「ええ、ネストルさんと一緒にいたいので、そうしないとなぁと思ったんですけど??」


「????」


何だろう??

お互いの考えにズレがある気がする。

顔を見合わせながら、俺とネストルさんは頭に疑問符を浮かべている。


「……どういう事だ??森に住みたいなら、今まで通り、我が何とかするぞ??……なのに何故、そんなに一人で生きていけるようにしたいのだ??」


「俺は最終的にネストルさんに食われるから、ネストルさん的にはそれまで面倒を見るのはたいした事じゃないのかもしれませんけど、俺はネストルさんと一緒にいたいから、だからちゃんと自分一人でも生きていけるようにしないとなぁと思ったんですよ。」


「……どういうことだ??よくわからぬ??」


「大人としてのプライド?それとも生きていく上での俺的最低限のモラルですかね??……さっきも言ったように、ネストルさんが嫌でないなら俺はネストルさんと一緒にいたいんです。アルバの森で今後も一緒に暮らしたいです。でもだからってネストルさんの重荷でいたくはないんです。今までのように弱っている時は頼りますし甘えます。そりゃ、思いっきり甘えます。ここぞとばかりにもふもふするし、すーはーします。」


「………あれ、我に甘えていたのか…??」


「そうですよ??でも心身ともに回復し、体も心もどこも弱ってないのに、完全にネストルさんに生活の全ての面倒を見てもらって暮らすってのは俺にはできないですよ。まだ一人で生きていくのには程遠いですけど、これから少しずつ、ちゃんと一人で生きていける状態に近づけます。一人で生きていける自立した状態で一緒にいたいんです。」


「……街で暮らしたいのではなく??」


「ええ、街で一人で暮らす事も可能な状態で、ネストルさんと一緒にアルバの森で暮らすのが俺の今の目標です。」


「……何故??」


「何故って……ネストルさんと一緒にいたいからですよ??」


「自立したいのだよな??」


「ええ。」


「森で我と暮らすのに??」


「そうですよ??むしろその為にですって。」


ここでまた、ネストルさんの頭に疑問符がつく。

俺の説明が悪いのだろうか……??

だんだん俺も、何を自分が言っているのかわからなくなり始めた。

でも、ネストルさんの混乱よりは俺の方が軽いだろう。


「すまぬ、コーバー……我にはよくわからぬ……。森で暮らすのに、何故、一人で生きていけるように自立したいのだ??」


「ん~?どう言ったらいいんでしょう??何と言うか、ネストルさんにおんぶに抱っこの状態で一緒にいるのは嫌なんですよ。俺一人でも何とか生きていけるようにして、その上でネストルさんと一緒にいたいんです。」


「……………。すまぬ、全くわからぬ……。コーバーは、街で一人で生きていける様な状態で、あえて我と森で暮らすつもりなのか??」


「そういう事ですね。俺は一人でも生きていける状態でネストルさんと一緒に森で暮らしたいんです。もしもネストルさんに何かあって突然居なくなってしまっても、俺はちゃんと一人で生きていけるから大丈夫だって状態で一緒にいたいんです。また今の俺と逆に、ネストルさんが何らかの原因で一人で生きて行くのが難しくなった時、俺がすぐに支えてあげられる状態で一緒にいたいんです。まぁ、俺が自立しててもネストルさんにしてあげられる事なんて少ないかもしれませんけどね?少なくとも俺は自分の面倒は自分で見れるから、一緒にいて負担にはならないでしょう??……俺の言っている事、そんなに変ですか??」


ネストルさんは完全に目がぐるぐるしていた。

これは頭の中が宇宙になってるなぁと思う。

そういえばこの世界に宇宙ってあるのだろうか??

何しろ見上げてるのが中心の方だから、宇宙はないのかもしれない。


「わっかりました。とにかくこの話は帰ってからまたゆっくりしましょう。」


「うむ、そうしてくれ。我にはコーバーの言っている事を理解するのに、少し時間がいるようだ……。」


ネストルさんの混乱具合を見て、俺は今ここで色々言っても、お互い混乱するだけだと判断した。

そもそも、何でこんな話をしていたんだ?俺とネストルさんは??


まあいい。

今話しても多分駄目だ。


何故なら、お腹が空いている。


まるでタイミングを見計らったように、俺のお腹がググ~ッと音を立てた。

腕の中のネストルさんは相変わらずこの音に驚く。


「今の!今のまた腹の音か?!」


「そうですよ?いい加減、慣れてくださいよ??」


「いや、だが……!!何と言うか…何か別の生き物でもコーバーの腹の中に入っているみたいでな……。」


「まぁ、腹の虫とも言いますしね?」


「虫っ?!これは虫なのか?!」


「いや、例えですって。本当に腹の中に虫が住んでいる訳じゃないですよ??」


「そ、そうなのか?!」


体が大きくても小さくても、この音に驚くんだなぁ、この人。

いちいち腹の音に驚くネストルさんが可愛い。

ぎゅっともふもふの体を抱きしめる。


ふと顔を上げると、商業許可所の前でリーフスティーさんを首に巻いたギムギムさんとノース君、それから他の職員の方数名が俺に気づいて手を降っている。

俺もそれに手を振り返した。


待ちに待った食事。


この世界に来て、きちんと作り込まれた料理を食べるのは初めてだ。

来た当初は、溺れるし、食べ物は体が受け付けないし、本当、散々だった。


やっとここまで来た。


新世界。

俺の新しい世界での生活が、やっとスタートラインに立った。


ひとまず収入を得る方法は見つけられた。

初めての世界で初めての試みで色々大変だとは思うけれど、きっと何とかなる。


だって俺には、幸運の女神ならぬマクモ様がついているのだ。


「あ~!!ご飯、楽しみだなぁ~!!」


「コーバー、それは良いのだが、今日はあまり食べすぎるではないぞ?!また腹が痛くなって寝込んでは大変なのだからな?!」


「ふふふっ、ネルは心配症だなぁ~。前から思っていたけど、ちょっとオカンだよね?!」


「オカン??」


「お母さんみたいだって事。」


「……はぁ~?!いつ?!いつ我が母親の様だったと?!せめて父親と言ってくれ!!」


「ん~、お父さんと言うより、やっぱりオカンだと思うんだよなぁ~??」


「何でだ~!!我はコーバーの母親ではな~いっ!!」


プンスカ怒るネストルさんを抱っこして、俺は皆の下に走っていく。


あぁ、お腹が空くって幸せだ。

空腹過ぎたのが、俺は何故かそんな事を思って笑っていた。

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