メラン魔戦車孤軍奮闘、 住民の恨み……
「は、早く出て行ってよ~~早く早く」
雪乃フルエレはその頃ようやく一番外側の家屋が立ち並ぶ城壁内にまで出て、城から脱出しようと西面の城門に集結しつつある敵軍を、突っ立ちながら遠巻きに見ていた。
もちろん走って行ってチョップするなり踏みつけるなりすれば瞬殺だが、フルエレは逃げる相手を指を咥えて見ているだけしか出来なかった。
「魔呂がここまで追って来たのに何もしません、どういう事でしょうか?」
「再び主城の城壁内に入って来ない様に監視しているのだろう。敵も損耗しているのだ、無益な争いは避けたいという事かもしれん。有未様には悪いがなるべく早く脱出しよう。先に残存の魔戦車を門から出して並べて置け」
「ハッ」
敗軍となったニナルティナ軍のいち指揮官が部下に命令する。今彼らは如何に故郷に安全に帰還するかを一心に考えていた。
今自分達が居座るリュフミュラン王都から西に西に進めばニナルティナ王国の領内に入る。
偽装に騙されて出て行った正規軍や他の敵軍に出会わないとも限らないので前面に残存の魔戦車を並べ、森を強行突破しようと考えていた。
「城から魔戦車が出て来たよ! なんか並んでるわね、こっちがバレちゃったとかかな?」
魔戦車のキューポラから顔を出す黒いマントを羽織った魔導士の少女。横には全軍を指揮する衣図ライグがいた。
「いや、なんか変だ見つかってはいなさそうだぜ。城が落ちたとして西面に出て来る訳がねえ。状況的に東から入ったはいいが、上手く行かず逃げようとしているのかもしれねえし、とにかく静かに射程圏内に入って、奇襲しよう」
「うん、私もそう思います。初撃でなるべく多く潰す様にします。みなさんはそれから突入して下さい」
「おお」
パタンとハッチを閉めて、内部の二人に今の内容を伝達する。
「い、いよいよですね。上手く行くでしょうか? とにかく僕は走るだけですが」
駆動担当の回復職の少年が緊張して身構える。
「効くのかどうか不明ですが、私も強化魔法を重ね掛けしておきました。行きましょう」
防御担当の魔法剣士が人間に対して使うスピードアップや回避率アップの魔法を重ね掛けしている。おそらくこれは現実的な物よりプラシーボ効果しか期待できなさそうだ。
まだまだ読み難い部分が多いと思うのですが、ブックマークや評価ポイントして下さる方がいてとても嬉しいです。励みになります、有難うございます。