再び三毛猫対決、砂緒の弱点と決着…c
突然の白い光に目を閉じる砂緒。
気が付くと文字通り真っ黒になった三毛猫は、脚を引き摺りながらも早いスピードで大バルコニーまで走り去ると、そのままピョンと飛び降りた。
「ここ、二階とか三階では無いはずですが」
砂緒が大バルコニーの下を見ると、もはや誰もいなかった。
「不死身かっ!」
寸での所で三毛猫を取り逃がした事を悔しがったが、致命傷なのだからもう出てこないはずと自分を納得させた。
「おーい砂緒、やはりお前か」
「砂緒様ーっ! ご無事ですの!?」
大バルコニーから下を眺めていた砂緒の元に手足に包帯を巻き、新しい服に身を包んだイェラと七華王女が駆け寄って来る。
「壁をぶち破って城に入って来た頭のおかしい者が居ると聞いて飛んできたぞ」
「砂緒さまっ三毛猫仮面は討ち取ったのですか!?」
イェラと七華同時に話し掛けられる。
「イェラもう怪我は大丈夫なのですか? とても心配しましたがすぐに復活してくれて良かったです」
「三毛猫は逃げました」
砂緒は普段は無表情で余り見せない笑顔を瞬間的にだがイェラに向けた。
フルエレに続けて二人目だった。イェラは内心気遣いに感激して目が潤みそうになったがなんとか堪え、笑顔で返した。
「私は生粋の戦士だ、このくらいの怪我は秒で治る。これから追撃戦に参加するつもりだ」
「砂緒さま、三毛猫は取り逃がしたのですか?」
「だから逃げましたよ」
絶世の美女と言われている母親に似て当然の様に美形であり、王女でもある自分に対する余りにも素っ気ない態度に多少やきもきしながら七華が割って入る。
「砂緒さまお体は大丈夫ですか? ダメージはありませんか?」
腕や肩を触り、なおも軽く抱き着こうとする七華。ひょいと避ける砂緒。
「あ、大丈夫です」
砂緒は律儀に以前天球庭園に旅した時のフルエレとの約束を守ろうとしていた。
「もう……恥ずかしがらなくとも良いのですのに……」
以前の地下牢の事もあり、七華は本気で砂緒は自分にメロメロだと思い込んでいた。
「私はこれから居なくなった魔ローダーを探して来ます。では」
「気を付けろ!」
「お気をつけて下さいまし!」
一番最初の最悪な第一印象から今まで本当にどう対処したら良いか不明な七華を軽く無視し、イェラに別れを告げると大バルコニーから硬化して飛び降りた。
ズンっと着地したが当然もうそこには三毛猫仮面の姿は影も形も無かった。