メラン魔戦車交代! ニナルティナ軍壊滅
ゴンゴン!
黒いトンガリ帽子、黒いマントを羽織った如何にも魔導士という感じの女の子が、森の中をひたすら東にリュフミュラン王都へと向かう魔戦車の砲塔部分を足でガンガン蹴りまくる。
「何だ君は? 何か用か?」
「もう目の前に王都が見えてるのに一体いつまでかかるおつもりなの? ペースメーカーの魔戦車が皆のお荷物になっててどうするの?」
「無茶言うな! 俺たちゃもともと只の兵士なんだ、魔導士じゃないんだ! これ以上スピード出したら干物になって死ぬ!」
「降りて! 魔法防御担当と、魔法攻撃担当の二人が先に降りて! 冒険者の駆動担当が入れ替わるから、止まらず走りながら三人全員入れ替わるの! おじさん達分かった??」
ひたすら東に向かう衣図らが率いるライグ村の義勇軍と冒険者ギルド合同部隊だったが、肝心の魔戦車が徐々にペースダウンを始めていた。
それを見かねて冒険者ギルドの魔力が有り余っている有志が走行しながら入れ替わると提案して来たのだった。
「はい、お疲れ様! 後は魔法の専門家に任せて!」
「お、おい本当にいきなりで大丈夫か?」
最後に乗り込んだ魔法攻撃担当の魔女帽子の少女が、魔戦車から降りて砲塔にしがみ付いている髭の筋肉男に魔女のとんがり帽子を渡す。
「これ、天井つかえて邪魔だからプレゼントするわ!」
バタンと閉じられるハッチ。
「どうやら前進後進とか単純なレバー操作とアクセル操作だけで、スピード調整とかはオートマと念じるだけの様です。あ、僕は回復職です。よろしく」
「私は魔法剣士なので防御魔法担当でぴったりだと思いますよ。練習で今から色々出しておきます」
「はい、私は魔導士よ! とにかく衣図さんらと相談して決めた通り、王都の西面から内部に突入するわよ! みんなでアレスさんの仇を取るのよ!」
冒険者ギルド隊のリーダー格であるアレスは、潜伏していたニナルティナ兵の攻撃から仲間を守って戦死していた。
髭の筋肉男たちからヒョロっとした十代の冒険者三人に選手交代した途端、突然スピードアップを始めた魔戦車に周囲が驚いた。
「凄い! 魔法乗り物がこんな気持ち良い物とは知りませんでした! なんで今まで冒険者は怪鳥かドラゴンしか乗っては駄目だ、馬すら駄目だなんて変なこだわり持っていたのでしょう。人生損してましたよ僕……」
「モンスターがうじゃうじゃいる中部から南部は冒険者はとても有難がられるのに、都会な北部じゃ冒険者と言えば道楽か遊び人扱いですからね! 目に物見せてやりましょうよ!」
それぞれ違うパーティーで初めて顔を合わせた三人だったが、すぐに打ち解けそうな人達で内心ほっとしていた。