七華の危機、砂緒さま助けて…b
「ほら、ご覧下さいフルエレ。結果的にこうなりましたよ」
「あ、あぁ……」
フルエレは両手で顔を覆って泣き続けた。実はフルエレが泣き始めて砂緒は急激に冷静になりつつあった。このまま嫌われたらどうしようという恐怖が襲っていた。
「あ、あれ……おかしいですね視点が下がっている気がするのですが」
砂緒の突然の何気ない疑問に、思わず景色を見てしまうフルエレ。確かに視線が下がっている。
実は目の錯覚では無く、出現時百メートルは超えていた魔ローダーは何故か今は二十五メートル程に同じ体型のまま縮小していた。
「ごめんね砂緒、乗りたいと言ったり攻撃するなと言ったり、勝手で本当にごめんね」
「いいえ、私も少々エキサイトしていたようです。どうします東面の魔戦車をひっくり返しますか? 大将さんを救出に向かいますか? それとも一旦村に戻って猫呼達と合流しますか?」
「ど、どうすればいいのかしら……私には難しいわ」
実は砂緒は内心フルエレが普通に会話してくれて凄くほっとしていた。あんなしょうもない敵にかまけてフルエレとの関係が破壊されなくて本当に良かったと思った。
パシッ『助けて砂緒! いやああ止めて汚らわしい!』
砂緒がモニターの端に突然小さなウインドウが開き、七華の叫び声が出力された事に気付く。
「フルエレ、聞こえていますか?」
「え? なになに何の事かしら?」
どうやら声が届けられたのは砂緒の座席だけのようだった。砂緒は突然あちこちのボタンを滅茶苦茶に触り始めた。バシャッと突然前のハッチが開く。夜の景色が生で入り込んで来る。
「フルエレ、私を手に乗せて、城の最上階に近い大バルコニーに投げ付けて下さい。城の中のイェラがちゃんと介抱されているか確認して来ます。貴方は一人で残存の魔戦車が出撃した城兵を虐殺しない様に、ひっくり返して来てください」
「え? え? 投げる??」
「そうです手毬の様に私をあのバルコニーに投げ付けて下さい!」
言葉を発すると同時にフルエレの返事も聞かず、ハッチから飛び降りる砂緒。フルエレは慌ててハッチから飛び降りた砂緒を受け止める。
パシィッッ
「早いってば!」
ビュンッッ!! ゴロゴロゴロゴロ……
フルエレは必死に毬を投げるイメージを抱くと、魔ローダーは砂緒を物の様に投げ付けた。
砂緒は投げ付けられながら乳白色に変化しくるくると回転して、城の大バルコニーの床に叩き付けられるとゴロゴロと回転して、最後は上半身を上げ、スライドしながらストップした。
そして砂緒は巨像の基壇を潰した時の要領で拳を最大限硬化させると、壁をぶち壊しながら城の内部に侵入を始めた。
ボコッ!
砂緒があてずっぽうに幾つもの部屋の壁を潰し続け、ようやく七華が居る部屋に辿り着いた。
七華は三毛猫仮面に部屋の壁に押し付けられ、服は切り裂かれ胸ははだけ、スカートはめくられ白い脚の感触を楽しむ様に触られていた。
「そこまでの変態でしたか、なかなかの人物ですね。まあ取り敢えず死になさい」
「あぁ、砂緒さま! 来てくれた! 本当に来てくれた!」
絶望の顔だった七華は希望が戻り涙を流しながら砂緒を見た。
「わざわざ倒される為に来たんですか、貴方もつくづく奇特ですね」
三毛猫仮面は七華を離すと砂緒に向かって来た。