遭遇、貴様が真犯人かっ!!
ーその頃、部室。
「はぁ~~スナコちゃん何してるのかしら? 早くジルを食べたいわぁ」
雪布留は客席で寝っ転がって背筋を伸ばした。
「略すな! お前そんな態度でもし熊汁を飲んでマズイとか言ったら女王でも百裂ビンタだからな!」
ギクッ!
フルエレも薄っすら心配していた事だ。
「あ、当たり前じゃない!」
(マズかったらどうしよ~)
彼女の目は泳いでいた。
「貴方イェラがいにゃかったらただの美人の暴君よ!」
「ふーふっふっふっ」
と、突然兎幸が不気味に笑い出した。
「え、ど、どうしたの兎幸その伏線笑いは何!? ま、まさかっまさか貴方が……人畜無害な貴方なの!?」
雪布留は驚愕の顔をして床に崩れ落ちるとそのまま綺麗に乙女座りをしてガクガク震えた。
「ふーーーっふっふっふっだぴょん」
彼女の不気味な笑い声はしばらくこだましたという。
一方その頃セレネの討伐部三人組。
彼女達は北の森に向かったスナコと違い、学園エリアを出て西の田畑が広がる一帯に来ていた。
「のどかですね~~」
ミラが長い髪を靡かせて両手を広げる。
「今ミラ自分がそこそこ可愛いの意識して絵葉書みたいなポーズしただろ?」
「ち、ちげーよジーノ何根に持ってるんだよ?」
ミラはジーノが何も言っていないのに魔道学院でセレネとミラだけ人気が出た事を持ち出した。
「ふ、普通に自慢してんじゃん!」
「何があ!?」
二人が呑気に言い合いをしている時であった、セレネが二人を制止する。
「シッ」
ンーーピルピルピル……ンンーーーピルピルピルピル……
何やらかすかに不気味な音が聞こえた。
「何ですかこれ?」
「海なり?」
「海鳴りってぴるぴる言うか?」
「だからシッて」
セレネが怖い顔をする。
ンーーーピルピルピル、ンンーピルピルピル
だんだん声が大きくなる。
「隠れろ!」
セレネの声で三人はささっと畑の作物の影に隠れた。
ズズッ
「!?」
三人が息を潜めて隠れていると、西の果てから黒い影がのっそりと現れて近付いて来る。
ずずどっし、どっし
「熊ちゃんか!?」
「部長、最初は話し合いで解決しましょう!」
「熊って言葉通じるんスか?」
「とりあえず語尾にクマー言ってみよう」
ずっしゃずっしゃべちゃべちゃ。
「……」
やがて完全に姿を現した黒い影の正体を見て三人は絶句した。
「ンーーピルピルピル」
その正体は熊のベアーよりか巨体で全身がヌルヌルした半透明のコーヒー色のなんとも言えない謎の生命体であった。
「何じゃこりゃ!?」
「巨大ナメクジっスか?」
だが歴戦のセレネはすぐに分かった。
「こ、これは絶滅したとされている巨大陸ウミウシのアンドロメダーだよっ!」
「陸ウミウシ?」
「アンドロメダー??」
ミラとジーノはあっけに取られていると、アンドロメダーは三人に構う事無く畑の作物をもしゃもしゃ食べ始めた。
「田畑を荒し」
「牛さん豚さんとか食べてたのって」
「こいつかっ! 貴様が真犯人かっ!!」
兎幸は何の関係も無く、何の伏線も脈絡も無く突然出て来た第三者が真犯人だった!!!
「これ最初に熊やゆーた奴出て来いや」
「ふぅでも熊ちゃんが犯人じゃ無くて良かったっスね」
「うむ、コイツを氷で固めてもって帰るか」
「そ、その前に一発くらい食らわせますよ、熊ちゃんの恨み!!」
ダダッ
熊の濡れ衣に怒り心頭のミラは剣を振り被って襲い掛かった。
「あっ止めろそいつはのろくて弱そうだが……」
「ンピルッ!」
しゅるるるっ!!
走り寄るミラに気付いたアンドロメダーは突然俊敏な動きで少し下がると、全身から不気味な触手を伸ばし、あっと言うまにミラの全身にからみ付いた。
「あっくっや、やめろぉ~~」
「ミラ!」
ミラが叫ぶのにお構いなく触手はミラのスマートな肢体に絡みつき、やがて細身にも係わらず実は豊かな胸の膨らみを強調する様に、亀甲縛りが如くにエロティックに全身を縛り始めた。
ぎゅむむ
「あっくそっ……や、やああん……」
途端に赤面するミラ。
「あんな敵ちゃちゃっと、部長!?」
ジーノがセレネを見ると、彼女は激しく赤面して頭を抱えてしゃがみ込んだ。
「ま、マタマタ、マタマタ」
「部長!?」
ユティトレッド魔道王国・地図




