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純喫茶まおうⅡ宿敵(シューネ)と激突じゃ!


「おお依世(いよ)殿ではないですか、ますます姉上に似られて美しくなられた。姫乃(ひめの)殿下はまた貴方にお会いしたいと仰られております」


 貴城乃(たかぎの)シューネは胸に手を当てると大仰に頭を下げた。


「うげーー嬉しくない! 大げさよ前に会ったばかりじゃない。でも姫乃さんにはまた会ってみたいかも」


 舌を出して嫌がるが、ヒューゴーの事について貴城乃シューネの誤魔化しに一瞬で乗せられてしまう依世であった。


七華(しちか)王女にお会いするつもりが依世姫にもお会い出来るとは思わぬ僥倖(ぎょうこう)です」


 しかし誉め言葉にも突然ムッと不機嫌になる依世。


「何よ、貴方クラウディアから千岐大蛇(ちまたのかがち)が去った途端に手を引いたじゃない! 恩知らずの冷血漢だわ」


 彼女はしっかり根に持っていた。


「それは申し訳ない……だが我々も桃伝説(ももでんせつ)を破壊されクラウディア仮宮殿を蹂躙され手一杯だったのですよ。それに千岐大蛇退治の時に多額のお礼金をお支払いしています」


 しかしそのお礼金の大半はフルエレ達が海に落としてしまった……


「あっそう、でも私なんだか貴方の事が余り好きになれないのよね……砂緒と顔そっくりだし、はぁ~もっかい寝て来るわ!」

「ちょっと依世ちゃん!?」


 ぱたぱたぱた……

 何だかフルエレ化してぐうたらして来た依世は、そのまますぐにUターンして二階に消えてしまった。




「おやおや」


 シューネは女王の妹ながらまったくお淑やかでは無い依世に呆れる。


(しかしあの子も将来姫乃に似て美しくなるだろう……姉妹揃えてセットで欲しいものだフフ)


 シューネは一瞬フルエレと依世二人揃ってベッドで眠る場面を思い浮かべて悦んだ。


「何だか依世ちゃんやさぐれてますわねえ~」

「お構いなく、しかし折角の喫茶店なのですから何か頂いても良いですかな?」


 シューネは歓迎されて無くとも遠慮無く客席に座った。

 どすっ


「あらいいですわよ。噂通りに面の皮の厚い方ですのねえ」

「方ですのねえって他人みたいじゃないですか」

「他人でしょう、でもこの店の専属バリスタを見たら驚きますわよ」


 七華はそのまま厨房に向かおうとしたが、気付くと既に物音を聞いて紅蓮自ら客席にやって来ようとしていた。ただ彼だけでは無く、ほっかむりをした抱悶(だもん)も一緒に来ていたのだった。


「おう何じゃ見ぬ客じゃのう? 新入りの客か……何でこやつ砂緒(すなお)と同じ顔をしておる??」


 店員とも思えぬ横柄な態度の抱悶に、貴城乃シューネは少しカチンと来た。




「うげっシューネが何故此処に?」


 同時に紅蓮もビクッとしていた。


「若君!? 専属バリスタとは若君の事なのですかな?」


 思わず立ち上がるシューネであった。


「いいよいいよ、此処では本当にバリスタだから君も客として座っててよ。今だけ特別だよ」


 紅蓮はダウンゞと掌を下に振った。


「あの若君、そのお子様は?」

(どこかで見た気が、何故砂緒を知っている?)


 実はシューネは三毛猫仮面三世として魔ローダー金輪(こんりん)で女王選定会議を荒らした時に、飛んで来た抱悶とバトルしているのだが、お互いが相手の姿を完全にははっきり見ていなかった。


「あ、ああこの子はダッいや……近所の名も無きお子様だよ。この店にマスコットとして出入りしてて」

「何じゃ、紅蓮の知り合いかえ【神聖連邦帝国】関係者か? まあ良いワシは名も無き近所のお子様じゃ」


 シューネは怪訝な顔をする。


「近所の名も無きお子様が砂緒と神聖連邦帝国をご存じで?」

「バカにするで無いぞ! ワシとて世界情勢に通じておるわっ!」

「こらっ大人の人に偉そうに言っちゃダメだぞ!」


 ずりずりずり~

 紅蓮は無理やり抱悶を後ろに押した。


「ハハハ、だが年端の行かぬ子供の事、気にはしてません」

「むぐぐ貴様~~」

「所で君はセブンリーファ島で何をしてるんだい?」


 紅蓮は疑問を聞いた。


「ええ、大まかに言えば若君のサポートに近い事ですよフフ。しかし瑠璃ィ(るりぃ)様は一体何処へ?」

「最近まで一緒だったのだけど、また行方不明になっちゃって」

「困ったお方ですねフフフ」


「シューネと瑠璃ィさんとはどっちが立場が上ですの?」


 今度は七華(しちか)が気になっていた事を聞いた。


「それは私等より瑠璃ィキャナリー様の方が遥かに先輩で比べるまでもありません」

「え、遥かに先輩ってあの方何歳で」

「七華ちゃん、それ以上言うと命の危険が」


 紅蓮が七華の肩を押さえた。


「七華姫、あの方は普段笑顔でも本当は鬼の様な方なのです、お気を付けを……」

「鬼を退治した方なんだけど……」

「あらそう……」

「フフフ」


 しかし先程から余裕で含み笑いをするシューネに七華は何か反撃したくなった。


「そう言えば紅蓮、依世ちゃんが言っていた姫乃さんって方とシューネとの関係は?」

「それは……」

「それはね、シューネと姉の姫乃は幼馴染で、シューネは小さい頃から姉上の事がす……」

「す?」

「ワーーーッ何を言うのですか!? お止め下さい、若君とておふざけが過ぎますぞ」


 突然調子が狂ったシューネを見て、七華は弱点を見つけたとほくそ笑んだ。


「ゴホンッそ、それよりも若君瑠璃ィ殿も合流されて、聖帝陛下より御命じられた【まおう抱悶】の暗殺、もしくは懐柔の方はどうな」

「アチョーーッ!」


 ゲシッ

 紅蓮は突然血相を変えてシューネを殴った。


「マアッ!?」

「わわ若君突然何するですか!?」


 血がダラダラ流れる頬を押さえながら目を見開くシューネだったが、その彼の後ろで抱悶は震えていた。


「そんな話、近所の名も無きお子様の前でする話じゃないよ!」


(わ、わなわな、ワナワナワナ、わなわなわな……なんじゃと、まおう抱悶のワシの暗殺じゃと?? こ奴が紅蓮を差し向けた神聖連邦帝国の重臣で、紅蓮を操り裏で糸を引いておるボスキャラか何かか!? ワシが惨めに力を失った原因を作った張本人ではないかっ!! ゆ、ゆゆゆゆ、許せんのじゃ!!)


 抱悶は睨みつける恐ろしい顔で紅蓮の袖を引っ張った。

 くいくい

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