第四の魔将と、もう一人の客。
「サッワよ計画変更だっ今からこの場の全員を倒す! 貴様は窓から逃げろ」
スピネルはテーブルの上で剣を構えたまま後ろを振り返った。そのサッワもライラを見て驚いていた。
「ええっここ三階ですよ!?」
(でも何でこの女がココナ様を守る!?)
もちろんまおう城側も黙って見ている訳では無い。
「ココ姫様御下がりをっ! ええい者共出会え出会え!!」
上の出来事と同時にドア前に立っていた衛兵らしき者がココ姫とクレウを守りつつ叫んだ。クレウの指示で元々この会食には警備兵はそのくらいしか居なかった。
ガイィイーーン!!
直後、スピネルの第二撃を再びライラが大鎌で防ぐ。
「貴様何処に隠れていた?」
「テーブルの下に」
「気配に全く気付かなかったわ! 邪龍奔流!!」
シュバァーーー!
と、ライラと話す振りをしたスピネルが得意の水魔法をココ姫に向けて放った。衛兵の横をすり抜け一気に突き進む水の龍。
バシュウッ!!
しかしココ姫は氷の壁をバリアの様に張り、ぶち当たった水流の龍は砕けて霧散した。
「ンフフ面白いわぁ~~」
「お前?」
「ちっやはり剣でっ!」
「お止め下さいスピネルさまっ」
ギィーーン!
再び剣と大鎌で戦い合う二人。
「止めないか二人とも!! お前はライラか、一体何故こちら側に?」
乱戦となってもまだ元の仲間と戦いたくないクレウは必死で叫ぶ。
「お久しぶりですクレウ様」
戦いながら器用に挨拶をするライラ……
「彼女は第四の魔将のイララちゃんよ、今日は絶好のお披露目日和ね。サッワちゃん、彼女は貴方に神聖連邦帝国の大型艦の中でぱんつを覗かれて以来、貴方にひとめ惚れして国を捨て名前まで変えたのよ、感動的な出会いだわぁ~~」
「ふんっおりゃっ! お慕い申しておりますサッワさま……ポッ」
中腰の老齢の重臣達があたふたし、テーブルの上ではスピネルとイララに名前を変えたライラが乱闘を繰り広げる中、ココナツヒメは何事も起こっていない様なうっとりした顔でイララの馴れ初めを語った。
「本当かサッワよ?」
スピネルがライラの大鎌を受け止め剣を振りながら真顔で聞いてくる。
「いや嘘でしょフツー!」
サッワは不可抗力でパンツが見えてしまったという一部事実の為、顔を真っ赤にして反論した。
「私はグルグル巻きにされ床に転がるサッワ様にぱんつを覗かれて以来、彼の恋の虜になってしまったのです……」
大鎌を片手で振りながら、赤らめた頬に掌を当てるイララ。
「ほほぅ?」
(この女、目がイッているな)
ギィーーン、グィーーン!
訳の分からない事を言い、目をハートにしつつ頬を赤らめながらも戦いを止める気配は無い。その姿は異様でしか無かった。
「お前、もしかしてライラに魅了を?」
「ンフフ、ご想像にお任せするわ。でも貴方には掛けて無くってよ?」
「当然だ……」
クレウはいつも厳しかった闇ギルド同僚ライラの余りの変わり様に愕然としていた。
どたどたどた……
そうこうしている内に大量の衛兵がココ姫の後ろのドアから押し掛け、そのまま二人を守る様に取り囲んだ。これで新まおう暗殺は絶望的な状況と成り果てた。
「サッワやはり逃げるぞ!」
「は、はい!!」
サッワはスピネルならたとえ三階からの脱出でも何とかなると思った。
「スピネル様、煙幕も閃光もお止めを! 貴方様への対抗策は全て考えてあります!」
だが先回りする様に警告するイララ。
「止めろと言われて止めるバカはいないわっ!」
「スピネルさんお止めなさい、貴方に大切なゲストがあるのっ!」
スピネルが血路を開き窓からの脱出を図ろうとしたそのタイミングでココ姫がとても気になる事を叫んだ。
「貴方……ごめんなさい……」
「……エカチェリーナ……」
タイミング良く現れたのはスピネルの彼女、エカチェリーナであった。彼女は真っ青なお城の侍女の服に着替えさせられていた。
「彼女は今日からまおう城の侍女頭になったのですわっ町のおべんと屋さんから大出世ですわね!!」
「貴様っ!! 今助ける!」
スピネルは鬼の様な顔になって脱出を止め、再び意地でもココ姫を倒そうと彼女に向かう。
「スピネルさん!」
サッワも窓枠に足を掛けた状態で彼女の登場に度肝を抜かれた。
「待って! 彼女の首を良く見て欲しいのですわ、私が命じれば即座に致死性の毒針の出る素敵な首輪よ。それに私の心臓が止まっても出るし、離れ過ぎても出ちゃうの。だから貴方に命を狙われたさっきは彼女の事が心配でドキドキ致しましたウフフ。もちろん無理に外そうとしても毒針が出ちゃうの」
どんな時でも何があっても何処か他人事感があるスピネルだが今は言葉が出ない。
「ごめんなさい、貴方がお城に住めと言うのに私が頑なに店を続けたいと言って……言う事を聞かなくて本当にごめんなさい」
彼女の両目からは止めども無く涙が流れた。
「安心してね、ご両親も贅沢な暮らしが出来る様に既にお城にお迎えしましたわっ」
ココ姫は勝ち誇って言った。




