2魔将出頭命令
「じーーっ」
何故か熱い眼差しでセレネを見る鞠湖。
(うっ一体あたしに何を期待しているのだ?)
「コホン、所でライラというのは普段こんな感じの女か? 接した時間は短いがこの様な感じには思えなかったが」
「その通りでして自分にも他者にも厳しく、男に対してもSかMかと言えばSな方だと……」
(え、SかMかて)
「では手紙が偽物という事は?」
「それが魔力波長鑑定でも本人で間違い無いと」
「……だが人は恋愛で突然変わる事もある、それが彼女にも起きたって事か……」
「……はぁ」
鞠湖はキョトンとした。
(うっ反応が薄い今のは違かったか、あたしのイメージ的にはけしからんとか言って怒る場面か??)
「じーーーっ」
再び鞠湖はセレネの目をまじまじと見つめ続けた。
(うっまだ納得してない?)
「そ、そうだなこれはフルエレ女王と猫呼王女に一応お伺いしてみようか。では下がってよ」
等とセレネが言い掛けた時であった。
「何だぁこのこっ恥ずかしい手紙はぁーー? メアも読んでみろよナハハハ」
「まぁ、人の手紙を笑う者は馬に蹴られるとか言いますよ? でもちょっと見せて下さいクスクス」
いつの間にか部屋に入って来たウェカ王子とセクシーなメイドさんのメアが、我が物顔で勝手にくつろいで手紙を読み始めた。
「何だ何故お前らが此処に居る?」
「おいおいセレネ王女もボクも同じ同盟のメンバーでお隣さんの王家じゃないか、王女はなんか暗そうだったから会いに来てやったんだ喜べー。所でキミは瑠璃ィ知らんカー?」
バシバシバシッ!
ウェカ王子は馴れ馴れしくセレネの肩を叩きまくる。
「王子、一応この子総司令官って事になってますから余り大きな顔をしない方が……」
だんだんセレネ王女の顔が険しくなり鞠湖が冷や汗を掻く。
「お王女すいません、瑠璃ィさんを探していると言うと王子達まで付いて来てしまいまして」
ここでセレネの我慢の限界となった。
「この手紙の件はあたしが預かる以上。衛兵、部屋に侵入した者共をつまみ出せ!!」
「あわわ」
鞠湖は慌てたが、入って来た衛兵達が身なりの良いウェカ王子達を見て躊躇する。
「よしよし、衛兵共の迷惑にならん様に自ら出てやるかナ」
「あらまあ王子物分かりが良くなって来て賢いですー」
「あっ待って下さい私も! セレネ王女失礼致しました」
最後に鞠湖が深々と頭を下げて執務室から出て行った。
「ふぅ何なんだアノ連中は? それよかこの手紙は部室でフルエレさんにでも見せるか」
セレネは開封した手紙を丁寧に封筒に戻した。
ー同じ頃、同盟の南にあるまおう軍・炎の国。
まおう軍まおう城で復活した腹心のココナツヒメがまおう抱悶を討ち城を乗っ取り、それに対して抱悶生存と復活を信じる一派は、3魔将の内サッワとスピネルを中心に抱悶派の重臣や兵士達を引き連れくま牧場城に入場し、今主を欠くまおう軍は分裂状態に陥っていた。そして両派共に同盟の地で抱悶が能力は失いつつも無事復活した事を全く知らない。
ーその南側くま牧場城。
「だから今は地道に魔ローダーを整備し、砦や柵を作って行くしか無い」
「それよりも抱悶様はどうなっている?」
「本当に生きておられるのか?」
「そもそも何処に落ち延びられた? サッワ様の言葉は本当なのか……」
今日も南側のくま牧場城では答えの出ない会議が延々と繰り広げられていた。重臣達の発言を聞いていて一応首座に座るサッワとスピネルがひそひそと会話する。
「ふぅスピネルさん何か煮詰まって来ましたねえ」
「抱悶からの知らせが無いのだ仕方無かろう」
「依世と紅蓮の奴ら本当に抱悶様を復活させられたのだろうか?」
「余り大きな声で言うな、奴らに聞かれるとややこしくなるぞフフ」
どんな時にも他人事の様に余裕のスピネルは不敵にほくそ笑んだ。
「何が面白いんですかー? もー」
「ふふふ、もう戦いから身を引いたつもりだったが、最後は城を枕に討ち死にも悪くないなと思ってな」
「縁起でもない事言わないで下さいよ~~」
サッワはむくれたが、自分達二人が実質的な城主となって城を切り盛りするのはなかなか面白かった。ただいつココナツヒメ達が総力を挙げて攻めて来るかという恐怖と隣り合わせでもあったが。
ガチャッ!
「サッワ殿、スピネル殿大変です! まおう城から文が届きましたっ!」
突然結論の出ない会議の場に急使が息を切らせて走って来た。
「差出人は?」
スピネルが落ち着いて聞き返す。
「まおう城城主ココ姫とその腹心クレウとの連名で」
「うむ見ようか」
スピネルは文書を受け取った。
パッサ~
身長差はあるが、スピネルとサッワは並んで仲良く手紙を読んだ。
『 まおう軍の主・抱悶様の名代としてココ姫とクレウが命じる、2魔将のサッワとスピネルよ今すぐまおう城に登城しなさい。なお軍や魔ローダーを率いる事無く二人のみで来なさい。
P.S.偉そうに書いてゴメンね、城主としての責務なのよ。肩肘張らないで内々でお食事会をしたいだけなの。そこでお互い誤解を晴らしたいですわん。
まおう城城主ココ姫、その臣クレウ 』




