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まおう軍からの手紙


 ー数日後、ユティトレッド魔道王国セレネ王女執務室。

 コンコン

 政務に勤しむセレネの部屋のドアがノックされ、ふと顔を上げる王女。


「誰だ」

鞠湖(まりこ)に御座います」


(マリコ……?)


 聞き覚えが無く眉間にシワを寄せるセレネ。


「誰だ?」

「あ、あのライラさまの部下でして……」

「入れ」


 ガチャリとドアを開けて入って来た女性は、ライラの様な如何にも工作員という様な厳しい顔付きでは無く、普通の一般女性という風体であった。


「あ、あのお初にお目に掛かります。猫呼(ねここ)様の闇ギルドメンバーでライラ様の部下の鞠湖と申します。密偵等を得意としておりまして……」


 鞠湖という女性は、非常に強い魔法剣士で厳しい性格という触れ込みのセレネの事をとても恐れている様子だった。フルエレや砂緒(すなお)ミラ・ジーノの様なごく一部の親しい連中を除き、セレネに対しては皆大抵こんな対応になる。


「それがどうした端的に言ってもらおう?」


 セレネは政務の邪魔をされて不機嫌になりギロッと睨みながら低い声で言った。


(ヒッ怖い……)

「は、はい! 私はライラ様から孫請け的に瑠璃ィ(るりぃ)キャナリー氏の調査を命令されてラ・マッロカンプ王国に派遣されていたのですが、当地に既に彼女の姿は無く各地を放浪して探し歩いておりました」


「それで?」


 審査員の様にペンを握りしめながら渋い顔で聞く王女。


「しかしいくら探しても所在不明で、恐らく神聖連邦帝国に帰還したのではと考え新たなる命令と判断を仰ぐ為に、ニナルティナの闇ギルドビルに這う這うの体で帰還したのです……」


「だからそれで?? まだ長いのかね?」


 優しく聞いてやれば良いのにどんどん高圧的になるセレネ。


(ヒィ!?)

「すいませんっ所が闇ギルドに辿り着くと今度は猫呼様は長期不在で、さらにはライラ様はまおう軍に出張されてこれまた不在。それに雪乃フルエレ女王もザ・イ・オサ新宮殿に不在がちだそうで一体どうすれば良いか分からず、迷いに迷い恐れながらセレネ王女の元に参じたので御座います」


「そんな事でわざわざ此処にまで来たのかね? 闇ギルドの事は誰か他の闇ギルドメンバーとでも相談したまえ。それと瑠璃ィ調査の件は保留で良い、彼女がまた現れ活動し始め次第の調査再開で良いぞ。それまでは休暇でもすれば良いだろう。では下がって良い!」


 鞠湖は静かに頭を下げてとぼとぼと部屋を出ようとする。


「はうわっ! 忘れておりました」

「今度は何かな?」


 鞠湖は慌てて鞄から何かを取り出す。


「闇ギルド本部に不思議な手紙が届いておりまして。ギルドメンバーも判断に困るとなってセレネ王女に判断を仰ぐしか無いと……」


「不思議な手紙? どらどら」


 確実に砂緒の影響を受けた独り言を言いながらセレネは鞠湖から開封済みの手紙を受け取った。

 パサリッ




『 親愛なる我が主人である猫呼クラウディア王女殿下、雪乃フルエレ同盟女王陛下


 謹啓、(時候の挨拶が続く)


 さてわたくしライラは同盟の使者としてまおう軍に派遣され微力ながらも魔法レーダー技術供与等の職務に邁進して参りましたが、その外交に従事する中でまおう軍のある聡明な男性と出会い雷に打たれた如くに恋に落ちてしまったのです……


 それ以来私は今までの修羅の道に生きる自分が嘘の様に愛の尊さに目覚め、日々充実した日々を送っております。もう私は彼無しでは生きられぬ身体と成り果てました。そして身寄りの無い孤児である私はもはやまおう軍から離れられない、彼無しの人生は考えられないと思う様になったのです。


 今回無礼にも恥ずかしながらお手紙をお出ししたのは、魔法レーダー技術供与を最後の仕事として、誠に勝手ながら闇ギルドから退職しこの地にて骨を埋めるまで愛に生きたいとする決心をお伝えする為です。


 今私は彼と共にとても幸せに暮らしております。何卒退職をお許し願いたいのです。何卒お許しの程を…… かしこ

               ライラ 』



 

「んじゃこりゃーーーっ!?」


 パサッ

 思わず手紙を落とし、セレネの全身に鳥肌が立った。


「恐れながら凄く変な手紙だと思いましてセレネ王女の判断を仰ぐしか無いと」


 手紙を拾いつつ鞠湖は恐る恐る王女の顔を見る。


「そ、そうだな」

(ヤバイ、どんな答えがスマートな答えか全然分からんわ!?)


 セレネ王女も一瞬返答に迷った……

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