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蘇生 後 黄泉がえり、あれ……?


 七華(しちか)王女が地元でぼーっと過去にトリップしている間も、皆慌ただしくまおう抱悶(だもん)蘇生の準備を始めていた。


「魔力がある者は全員蛇輪(へびりん)に乗るんだ! シャルは魔力があるのか?」

「ふざけんなよあるに決まってるだろ!」


 シャルは派手な魔法は使えないが魔力はあった。


「カヤちゃんは?」

「簡単な回復なら」

「よし一緒にお姉さんを生き返らせよう!」

「はい」


 今までの迷走が嘘の様にテキパキと指示をする紅蓮アルフォードだった。当然超S級冒険者の依世(いよ)と魔呂操縦者の瑠璃ィ(るりぃ)キャナリーも大量の魔力があった。


「そうだ七華ちゃんは?」


 紅蓮に声を掛けられてハッと我に返る七華。


「ご、ごめんなさい……わたくし魔力は無いのですわ」

(確かに何の役にも立たない……)


 七華は王女という地位以外、自身には何の力も無い事を思い知らされる。


「じゃあ下で抱悶ちゃんが蘇る事を祈っててくれよ!」

「ええそうですわね……」


 二人の会話を見て依世が蛇輪のハッチから叫ぶ。


「紅蓮皆乗り込んだわよ早くしよっ!」


 依世が呼びかけ、今や蛇輪の上下の操縦席には彼女と瑠璃ィとカヤとシャルと紅蓮アルフォードが乗り込んでいる。

 フィーンフィーンフィーン!

 再起動した蛇輪は館前に横たわる抱悶の遺体にそっと両手を掲げた。


『回復!!』

『回復っ!!』

『回復よっ!!』


 パシュウッキラキラキラッ……

 皆が声を合わせて魔ローダースキル回復を掛けると、また派手にキラキラ粒子が舞い落ちて死の眠りに就く抱悶の身体に降りかかって行く。ちなみにこの魔呂スキル回復は白鳥號(はくちょうごう)の物では無く、元々はル・ツー千鋼ノ天(せんはがねのてん)からスキルをコピーした物であった。

 ピーーッ

 すぐにスキル再使用可のランプが付く。


『どんどん行くわよっ!』

『おうよっ』

『当たり前や!』


 依世も紅蓮も相当疲れているはずだが、抱悶を生き返らせるまで止めるつもりは無かった。

 パシュウッキラキラキラッ……

 果てしなく繰り返される花火の様な派手な回復スキルのキラキラ粒子を眺めながら、七華は抱悶がどういう子かも良く知らずに祈り続けた。


(どうかこの子が黄泉がえりますように)




『はぁはぁ』

『まだかな……』

『こんなもんじゃ駄目よっ』


 彼女らの回復苦行はさらに一時間以上続いた……




  パシュウッキラキラキラッ……


『ふぅふぅ……』

『さすがにしんどいぜ』


 シュウ~~~

 シャルがとうとうぶつくさ文句を言い始めた直後であった、七華が抱悶に異変を感じた。


「皆見て下さいなっ!」


 七華が指さすと残り僅かの厚さだったが確実にあった遺体を覆う氷が、通常より早くどんどんと溶けて行き始めた。

 シュウ~


『氷が』

『溶けとる?』

『熱が出てる?』

『もうすぐ?』


 紅蓮も依世も一瞬疲れが吹き飛んだ。


『最後に皆で心を合わせて回復よ!!』

『おおっ!』



 皆は最後の望みを掛けて言葉と心を合わせて回復を掛けた。


『せーのっ回復っっ!!』


 パシュウッ!! キラキラキラキラキラ……

 心なしか今まで以上に派手な光りが輝いた気がした。




 シュゥ~~~~ッ

 氷を最後まで溶かす様に抱悶の全身から薄っすらと湯気が上がっている。


「んっ……ん」


 七華が見ている前で湯気の向こうでいつの間にか抱悶の全身の痛々しい傷はすっかり消え失せ、綺麗な前髪の下でその長いまつ毛がぴくぴくと動き出した。


『抱悶ちゃん?』

「静かに!」


 紅蓮の大声に思わず七華が叱った。


「んっんーーー、ぐはっ!!」

「きゃっ」


 七華の見守る眼前で突然抱悶はバチッと眼を見開き、上半身をガバッと持ち上げた。


「はぁはぁ……何じゃ此処は」


 険しい顔で辺りを見回す。彼女からするとココナツヒメに胸を氷柱で刺し貫かれた直後でしか無い。


『抱悶ちゃん!!』

『凄い!!』

「お姉さまっ!!」


 思わず紅蓮と依世は蛇輪から飛び降り、シャルとカヤは瑠璃ィの手配で次々に降ろされた。


「何じゃ……そうか、誰ぞ白鳥號で我を蘇らせたのじゃな? ふふふ計算通りじゃ褒めて遣わすぞ」


「抱悶ちゃん?」


 蘇ったばかりだというのに不敵に笑う抱悶に皆恐れて近付けない。


「バカめココナの奴……今から罰を与えてやるかのうっ! とりゃっ」


 ぴょいーんぴょいーん

 不敵に笑って宣言すると、抱悶は突然スーパー○リオの様に同じ場所で垂直飛びを始めた。


「抱悶ちゃん?」


「お姉さま?」

(お心がまさか?)


 カヤは姉の奇行に目を丸くする。そんな事など無視して紅蓮は泣きながら抱悶に抱き着いた。

 ガバッ!!


「抱悶ちゃん良かった!! 本当に可愛いまま生き返ったんだね、謎の生命体エックスみたいな感じで生き返らなくて本当に良かった!」


 突然良く知らない少年に抱き着かれて顔を真っ赤にする実は11歳の女の子のまおう。


「ええい、ぶっ無礼者離さんかっ離さぬなら焼き尽くすぞっ!! えいっ」


 くいっくいっ

 今度は紅蓮に抱き締められながら、掌を空に押し出す抱悶。


「何してるの??」

「火球を出しておるのじゃっ!! えいえいっ」


 不憫(ふびん)に思い紅蓮はそっと抱悶を離してあげた。それでようやく目の前の機体が蛇輪だと気付く抱悶。


「ハッ白鳥號じゃ無いぞい? いや、わしは白鳥號を感じる事が出来んのじゃ!?」


 蘇ったまおう抱悶は魔力を失い、全く何の力もスキルも失っていた……

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