レース⑨ 決着……b
『二人一組のペアで無ければ勝ちにはならん、此処でお前を止める!』
セレネは少し距離を取って木剣を構えた。
『今から飛んでリュデュアを追い掛ける事も出来るのですが』
『いやお前はあたしの勝負を受けるっ!』
『……確かにそこまでの覚悟のセレネさんを無視は出来ないですピョン』
先程までのリュデュアとの公開通信の惰性で、まだ代声で話す砂緒もじりっと両腕の無いル・ツーを身構えさせ、二機の間に緊張感が走った。
カサカサカサ……
巨大回転草が無言となったル・ツーとXSの間を転がって行く。
ビシュッ!
スナコは先程メランに決めた様にいきなり回転して必殺のカカト落としを放った。
ザッシュ!
しかしル・ツーの踵は地面にめり込み、その場所にXSは居なかった。
「え、どゆこと!?」
依世が慌てて左右を見回した。
ピピピ
「スナコ上!」
兎幸が指差すと上空で体操選手が如くにくるくると身体を捻らせ回転するXSが見えた。
「まさか、XSであの攻撃を避けた!?」
『違うっお前は脚しか無いから、攻撃をあらかじめ予測したのさっ!』
パシィーーーン!
直後、上空からル・ツーの脳天に木剣の攻撃がヒットした。そのまま華麗にくるくると回転して着地するXS。
ガシャッ
背中合わせに着地した両機はすくっと立ち上がると顔を向き合わせた。
『試合ならこれでセレネさんの勝ちになるだろうけど、これは木剣試合じゃない。悪いが無視して走り去るでゴザルピョンよ……』
スナコはこれ以上の打ち合いは無用とスルーする事を決めた。
『秘匿通信なら地声で良いだろーがっ。最近余り二人で会って無いよな?』
ドッキ!
何か真面目な話が始まりそうで砂緒は一刻も早く立ち去りたかった。
『そういう話はまた今度しましょう』
『今急いでるからとかじゃなくて、もうあたしの事あんまり興味無いんじゃないか?』
依世が目を細めてはよ急げやという念を送る。
『そんな事ある訳無いです! セレネさんは大切な女性です』
『ほほう、ルンブレッタよりか?』
ギック
砂緒自身ですら分からない事をセレネに問い詰められて困惑する。
『当たり前じゃないですか……』
バシャッ
XSがハッチを開けた。
『目を見ながら言えるのか?』
『それは……』
スナコが逡巡すると依世が腕を掴んだ。
「これは作戦だっ、セレネは時間を引き延ばせば伸ばす程スナコを妨害出来て、それは結局私らの負けなんだよ」
スナコはハッとした。
『セレネさん今度二人で会いましょう。今は急いでいるんです!』
『今じゃないとダメだっなんでそんなに勝ちたがる? そんなにリュデュアと結ばれたいのか?』
『ぜ、全然違います。まさかそんなコトで怒ってたんですか? 縁結び伝説とか単なる迷信にござろうハハハハハ』
結局スナコはむすっとした顔をしたセレネを避ける様に軽く飛翔して、リュデュアを追い掛け走り出した。
ズバアアアアーーーーッ




