戦い④ 仲間割れ……
『スナコさんっ!』
スナコは魔法モニターを見て目を見開いた。
「片腕のシャケッ!! 不審機ですリュデュア、私の後ろに下がって!」
『片腕のシャケッ!! 不審機ですリュデュア、私の後ろに下がってぴょんよ!』
『はい!』
スナコの小声をすぐさま代声する兎幸。言われた通りリュデュア・セリカのVT25スパーダはスナコのル・ツー千鋼ノ天の背中に隠れた。
ガシャッ
「兎幸、セレネに緊急通信!」
ピピピッザーーーッ
「砂緒、緊急通信不能! 魔法通信指揮所が通信封鎖してるぴょんよっ!」
「え、なんで!? 何やってんですかセレネーー!!」
愛欲に目がくらんだセレネ王女の大失態であった。
一方相対する片腕の鮭ことストラトスフィア操縦席内。
「あちゃーー蛇輪おもたらル・ツーの方やったわ~~」
「つまりあの中には砂緒が乗ってやがんのかよ」
「砂緒さま……つまりスナコちゃん状態ね」
瑠璃ィキャナリーが座る操縦席の両側からシャルと七華王女が身を乗り出した。
『そこの不審機シャケッ大人しくハッチを開け両手を地面に着いて操縦者降りろ! さもなくばこちらから攻撃するピョンよ!!』
突然大音声でル・ツーの兎幸が叫んだ。
「え、ぴょんよやて?」
「何だよふざけてんのかよ」
一瞬ストラトスフィアの操縦席内は混乱した。
「きっとスナコちゃんは男の正体がバレない様に、地声で喋れないから兎幸ちゃんが代声してるのですわ」
七華王女の推理に皆一瞬で納得した。
「で、どーーすんだよ? 砂緒とやるのかよ」
「そんな理由ありませんわ、飛びなさい!」
「えーーっ折角出会うたんやで、ちょっとくらい戦っても」
等とごちゃごちゃ言い合っている時であった。
「ハイパワー的モードッ!!」
ドシュウッ!!
突然目の前のル・ツーの背中からアゲハの羽が伸び、両腕の無い身体からも魔法の光が溢れ出した。
『先手必勝!!』
そのままぐるりんと回転し、えらい勢いでカカト落としを決めに来る。
ビシュッ!!
凄まじい速さのカカトを瑠璃ィはギリギリでさっと横に避けた。しかしさらに立て続けにスナコのル・ツーは脚のみで連続攻撃を仕掛けて来る。
ビシュッドシュッ!! パシッ
瑠璃ィは繰り出される連続キック攻撃を全て寸前で避けたり掌で弾いたりした。
「ちょっと瑠璃ィ、貴方早く離脱しなさい! 聞こえないのっ」
「いやいや、折角あっちから仕掛けて来たんや、こっちからも攻撃するわっ」
バッ
と瑠璃ィが言った直後、ストラトスフィアは距離を取り、全身の魔ァンプリファイヤのシャッターが開いて鈍く光り出した。
フィーンフィーンフィーン!
「むっシャケの奴本気を出しよった、ちょこざいなっ!」
その直後、リュデュアが動いた。
『魔呂スキル強き風よ出てっ!!』
びゅおおおおおおおお!
スパーダの突き出した両掌から凄まじい突風が吹き出した。その威力は意外にもストラトスフィアを後ずさりさせる程であった。
じりっ……
『リュデュア気を付けて!!』
『私も役に立てますっもっと風よ出でよ!!』
「兎幸、このチャンスにウルトラ兎幸キックを決めるんです!!」
「はいピョンッ! てやーーーっ」
スナコの号令でル・ツーは背中の羽を全開にして高く飛翔した。
ギューーーンッ!!
「飛びよったーー!! くっ風が邪魔や、ウチもどっちかを殺る!!」
瑠璃ィもストラトスフィアの全身の魔ァンプリファイヤの光を全開にしてジャンプしようとした。
「お止めなさいっ!」
「はぁ? 離しぃーやっ」
その瞬間に七華が堪らず邪魔をして女性にしては大柄の瑠璃ィの身体を揺さぶった。
ガクク
「離しませんわ!!」
「離さんかいっ!」
ドバシッ!
遂に苛立った瑠璃ィは暴力オヤジの様にか弱い七華を怪力で突き飛ばした。
バンッ!
「あうっ!?」
美しい王女は狭い操縦席内の壁に頭を打ち付けられ、無言で痛む頭を押さえた。
「きゃあっ!?」
カヤが惨劇に悲鳴を上げる。
「てめーーっ七華に何しやがる!?」
今度はシャルが本能的にギルティハンドを出して瑠璃ィの首を絞めに掛かった。
ぎゅむむ……
「ぐぎぎ手を離さんかい、剣で斬られたいんか??」
「やって見ろ!」
瑠璃ィは片手で剣の柄に手を掛ける。
「瑠璃ィ痛いじゃない! とにかくもう戦闘から離脱して」
「もうやめてっ私の為にケンカするなら私降ります!!」
カヤはとにかく揉め事を押さえたくて叫んだ。
ギュイイーーーンッ!
しかし揉めてる間にも皆の頭上にル・ツーの兎幸必殺キックが迫って来ていた……
8月3日
新プロローグは713に移動しました。
また、章と部分がズレズレになっていたのを元に戻しました。千岐大蛇周辺など章割りしていなかった部分も今後章に分けて行きますので、過去どんな話があったか分かりやすく見てもらえる様にしたいと思います。
8月2日
順次初期の推敲や章の調整をしているのですが、なんと「プロローグ Ⅰ雪の女王」が抜け落ちている事に気付きました。あんまり楽しい回では無いのですが、重要な回でこれが無いと後の話が訳が分からなくなるので、もしよろしければお読み下さい!(239)




