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戦い③ 邂逅


 ザッ

 雪布留(ゆきふる)は抜いた木剣を両手で構えた。


『これで良いの?』


『雪布留さん』

『はい?』

『度々注文して悪いのだけど、今回は爪を使うのは止して欲しいの』


 雪布留の蛇輪(へびりん)とユリィーナのXS25はお互い木剣を構えながら会話をした。


『もちろんよ、爪も使わないし変形もしないわ。ちゃんと木剣だけで戦うから!』

『それを聞いて安心しました、それでは行きますよっとりゃっ!!』


 早速ユリィーナは真正面が打ち込みに行った。

 パシィッ!!

 だが雪布留もなんとか木剣で弾く。

 練習機と伝説機体とでは元々性能差がある上に鋭い爪の突きという必殺武器がある蛇輪だが、純粋に木剣だけの試合とするならば剣の腕に覚えのあるユリィーナの方が有利であった。それは雪乃フルエレ女王も重々承知していたが、前回の授業でついカッとなって蛇輪の爪でユリィーナの機体をズタズタにしてしまった反省もあり、例え負けると分かっていても木剣での試合を受けるしかなかった。

 バシィーーン

 またもやユリィーナが打ち込むが寸前の所で及び腰の雪布留が避けた。


『あのユリィーナさん』

『はい?』


 今度は戦いながら雪布留が話し掛けた。


『これ、どういう条件で勝ち負けが決まるのかな?』

『そうね……私の気が済むまでか、貴方か私がまいったと言うまでかしら』


 途端に雪布留の顔が渋くなった。


(ちょっとちょっと~~!?)


 パシッッ!!

 またもや鋭いユリィーナの打ち込みを寸でで蛇輪の木剣が打ち返し弾いた。


『貴方先程から避けてばかり、あの時の様なガッツで攻めて来て欲しいですわっ!!』


 バシバシッ!!

 言いながらユリィーナは小刻みに右に左に小さい攻撃を繰り返す。


『そんな事言っても貴方の方が剣は強いわっ!』

『ならいつまで経っても試合は終わりませんことよっ!!』


(もぉ~~~誰か助けて!!)


 雪布留は前言を翻し変形して飛んで逃げようかと思った。




『おっ先に~~~!』

 

 ガシャガシャガシャ

 何故か木剣で戦い合う二機を横目に見ながら、新たなペアが手を振り挨拶をして走り通り過ぎて行く。操縦者の女生徒の顔は見えないが、恐らくは笑っている事だろう。


『あ~~~抜かされたよ~~~!?』


 よそ見をすると途端に鋭い打ち込みが来る。

 バシィッ!


『あんなの別にいいんですよ!』

『で、でも~』


 雪布留は徒競走の方も気になってソワソワして来た。


 しゅんっボシュッ!

 調子よく走って居たペアの二機が二人の視界から突然消える。


『え?』

『落ちました』

『落とし穴多いなっ!』

『だからよそ見しないっ!!』


 ベシーーーンッ!

 後ろを振り向いていた蛇輪の腕に、咄嗟には避け切れず遂に木剣の攻撃が当たった。

 ビシィッ


『痛っ……ちょっと貴方……』


 外見こそ金髪の天使の様な美少女だが、実は気が短い雪乃フルエレ女王が少しキレ掛かって来た……




 一方その頃スナコ&兎幸(うさこ)とリュデュア・セリカのペアは道に迷い始めていた。なにしろ砂緒(すなお)は一応リュフミュラン出身という事になっているし、リュデュアはトリッシュ市出身であり元は敵対国の出であるから、ユティトレッド魔道王国の事など全く知らなかった。その為に二人の二機は徐々に西側にずれて来ていた。


『わたしが……近道しようとか、変な事言わなければ良かったです……済まぬでござるピョンよ、ふぁ~~~』


 何故か兎幸が生あくびを連発しつつ、スナコの代声でセリカに話し掛けた。


『いいえ! 私こそ田舎者だから全然力になれなくて……でも例え勝てなくても一緒に楽しく走れたから良いです!』


 相変わらずポジティブなセリカであった。


(めっちゃええ子や、絶対に勝たせたい)


『ふぁ~~~そうすね』


 しかし魔力を供給する兎幸の様子があからさまにおかしい。

 パチ

 スナコは慌てて通信を切った。


「ちょっと兎幸ヘンですよ? もしかしてどこか体調が悪いとか??」

「ん~ん、元気っ子!」


 しかしいつも元気な兎幸の様子は、まぶたが重くやっぱり変であった。


「いや変でしょ、もしかして冬眠とか!?」

「ゴメン……昨日徹夜で須賀(スガ)サターンやってたデヘヘ」


 兎幸は可愛く舌をぺろっと出し、ウサミミの頭を掻いた。須賀サターンとはこの異世界の人気魔法ゲーム機の事であろう。


「次の日魔呂実習て日に徹夜しちゃダメ」

「ごめんねデヘヘ」

「……可愛いから許す」

「わーーい砂緒大好きっ!!」


 兎幸は魔改造されて大きくなった胸を砂緒の後頭部に擦り付けた。

 むぎゅ




 ピーーッ!

 そんな操縦席に突如響き渡る警報音。


『スナコさん兎幸さんっ大変です! 辺りを見て下さい!!』

『え、何だピョンよ?』


(一体何事ですか?)


 リュデュアの切羽詰まった叫びにスナコが魔法モニターを見ると、何故か周囲に謎のスモークが霧の様に漂い始めていた。

 しゅわわ~~~


 ガシャーーンガシャーーン

 その煙の向こうから、鈍い銀色に光る謎の魔ローダーが歩いてくる。瑠璃ィ(るりぃ)のストラトスフィアであった。

順次初期の推敲や章の調整をしているのですが、なんと「プロローグ Ⅰ雪の女王」が抜け落ちている事に気付きました。あんまり楽しい回では無いのですが、重要な回でこれが無いと後の話が訳が分からなくなるので、もしよろしければお読み下さい!(239)

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