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魔呂実2⑤ マーメイド


「ギャーーーッ! 依世(いよ)大丈夫!?」

「依世どうした、本当に襲われたのではないな?」


 一瞬のタイムラグの後、やはり猫呼(ねここ)とイェラが慌てて彼女の背中をさすった。


「この高級ハンカチは洗い立てで未使用の物。これでお口をお拭き下さい」


 一息付いて呆然とする依世と目が合ったアルピオーネは、惜しげも無く綺麗な刺繍の入ったハンカチを渡した。


「あ、アリガト……ゴザマス」


 しかし疲労で頭がクラクラする依世はカタコトでお礼を言いつつハンカチを受け取ると少しフラッとした。


「本当に大丈夫かい?」

「少し休んだ方がいいぜ~~クークック」

「一晩寝りゃあ治んぜっ!」


 ワンテンポ遅れたがラフィーヌ達学院生は女の子に良い所を見せようとした。しかし依世は手を差し伸べる男共に掌をかざして拒絶した。

 スッ……


「わ、われは我は負けぬわぁあああ!! 根性ーっ自己治癒魔法おりゃーーーっ!!」


 パシュウッキラキラキラ……

 そのまま掌を自分に向けると、フラフラになりながらも根性で自分に回復魔法を掛けた。


 パチッッシャキーーンッ!

 依世の今まで半開きだった目は途端にヤバイ薬を打った様にはっきり開いた。


「ふぅふぅ、我は決して倒れぬ! 目的を果たすまではなっ!!」


「アンタソレどんなキャラよ?」


 依世は自分の責任で姉と同盟に迷惑が掛かる事を極端に気にしていて、此処でまた寝る訳には行かなかった。彼女は生まれたての小鹿の様に足を震わせながらもピシッと立ち直した。


「見直したぞ依世」


 イェラは腕を組んで彼女の根性に関心した。




「茶番は良いよ! 僕はこんな事してられない、一刻も早くスナコちゃんの邪魔しないと!」

「茶番て」

「割と冷たいな」

「邪魔するんだ?」


 依世が持ち直した途端に、今度は黙っていたルンブレッタが再び訳の分からない事を言い出した。


「どうやって魔呂を邪魔するだよ?」

「いくら何でも授業を邪魔しちゃダメじゃないか?」


 まだマトモなラフィーヌとアルピオーネが懸念を示すが……


「いいよ皆には頼まない。このまま僕がオープン魔ーを運転して徒競走を邪魔する! 止めても無駄だからねっ!」


 ルンブレッタはラフィーヌから運転席を奪って乗り込んだ。それを見て猫呼(ねここ)ら含めその他のいい加減な連中はなんだか面白そうだと思い始めていた。


「ふぅおとなしい君がそこまで言うなら仕方が無いな、ただし俺も付いて行こう!」

「なら私も行こう!!」

「俺もいくぜ~~クク」

「多少複雑な心境だが俺もルンが暴走しない様に付いて行くか」


 結局どう邪魔するのか不明だが、学院生達は全員乗り込みそのまま海岸に行く事になった。

 ファッファーッ

 クラクションを鳴らし早速魔車はスルスルと走り出す。


「ちょっと待ったぁああああ!」


 ガッシィッ!

 だが動き出した魔車のメッキでテカテカのリアバンパーを依世が突然ガシッと掴んだ。

 ズルズルズル……

 可愛い靴が地面をえぐって跡を付ける。


「危ないよっ、何するの!」

「ルンさんとやら私も連れて行って!」


 依世もとにかくスナコやフルエレ達に追い付かなければ始まらなかった。


「さぁどうぞっアスティーは荷台にでも乗れ!」

「な?」


 ルンより先に光の速さでアルピオーネが席を詰めた。


「ありがとう……」


 だがやはり依世は疲れているのか、席に着くと直ぐに目を閉じてしまった。その寝顔の美少女っぷりにアルピオーネは見惚れてしまう。

 スーー……


「おいお前ら依世を丁重に扱え! 手を出すなよ」

「凄く面白そうだけど、私達は此処で待ってるわっ」


 イェラと猫呼は依世を乗せ大急ぎで出発したオープン魔ーを見送って手を振った。




 ズザザザザーーーーッ!

 それからしばらくして、紅蓮アルフォードが猫呼イェラの前に姿を現した。


「はぁはぁ……あ・猫呼ちゃん、ハァハァ此処の女学生達は?」


 走り通しの紅蓮は怪し過ぎる姿で両膝に手を着いて肩で息をする。


「は?」

「お前、髪を振り乱し女物のドレスを着てハァハァ息を切らして女学生が居るかって変態にしか見えんぞ?」


「ハァハァ、イェラさんそのエプロンセクシーですねハァハァ」

「変態やないか」


 猫呼達はとにかく紅蓮の荒い息が収まるのを待った。




 一方その頃、西側にある志摩海岸。

 実は志摩地区は広く、志摩海岸は複数あったのだ……


「ひゅーーーっほほほほ、どうやらわたくしが一番乗りの様ですわね! 他に誰もいませんわっ!!」


 自分が勝つ事だけしか考えていないユーキュリーネは通信にも耳を貸さず、魔呂スキル神速でひたすら一人で走って来たのであった。



「しかし……何処に夫婦岩とやらがありますの??」


 セレネにラフィーヌを取られたと思い込んで以来、恋愛沙汰が嫌いな生徒会長は夫婦岩の事など全く知らなかった。

 しばらく生徒会長がキョロキョロ海岸を見まわしたその時であった。


『マァーーーーーッッメイドッッッ!!!』


 ざっぱぁああああっ!

 突然目の前の海中から手指をピシッと綺麗に揃えたポーズで謎の魔ローダーが姿を現した……

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