初めて君が役に立った
ーココ姫とクレウが瞬間移動(長)した彩都遥市。
二人のル・ワン玻璃ノ宮は街のど真ん中でまだまだ白鳥號と格闘を繰り広げていた。
ドシーーン!
今またスマウの要領で白鳥號を投げ捨て、地上では建物が潰れて砂埃が舞い上がった。
「いつまで念池が持つのだろうか!?」
「私達のお城も気になりますわねえ」
等と言っている直後であった。
シュイィーーーン……
投げ捨てられてもまだまだ起き上がろうとする白鳥號が、猫背の姿勢のままガクンと動きを止めた。
「おっ?」
「死にましたの?」
ココ姫は指先で白鳥號の肩を慎重につんつんと突いた。
ビィーン……
一瞬何かが空転する様な音を立てたかと思うと、バターーンと横倒しに倒れた。
「終わったわ……」
「ふぅでもまだ抱悶様がどうなってるか確認しませんと」
等と会話している時であった。
「何処の神かは存じませぬが、何卒何卒御鎮まりの程を……」
気付くと巨大な魔呂の足元で立派な身なりをした男女がひたすら頭を下げて待っていた。
「地元民だよ、迷惑掛けたからねえ」
『貴方は誰? 死者はいるのかしら? 後私は神では無くってよ。山を越えたお隣の西海岸のまおう軍のココ姫ですわ』
ココ姫は躊躇わず返答した。
「おおなんと、まおう軍の王でありましたか。我は此処、彩都遥の市長の諸井と申す者。隣は我が娘の髪長姫に御座います。幸いにも人口密度低く死者も負傷者もおりませぬ。ただし破壊された家屋多数にて……」
バシャッ!
その言葉の最中にココ姫はハッチを開けて掌に飛び乗った。
「それはご迷惑をお掛けしたですのね。暴れ魔ローダーを捕獲する為とは言え、破壊された家屋全て全額補償させて頂きます。我ら古き親戚の南部族同志、どうかお許し願いたいのですわ」
ココ姫はキャラに似合わず頭を下げ、市長もクレウも驚いた。
ー再びまおう城に戻る。
「おおっサッワ様だっ! 抱悶様の忠臣サッワ様が来て下さったぞっ!」
「反乱軍共は武器を捨てろっ!」
「ウガッ!?」(何だ、戦闘中止なのか??)
劣勢であった行方不明の抱悶派にとっては渡りに船だが、優勢であったココ姫派には不満がくすぶる。
「どうした事だ、何故サッワ殿は敵勢を駆逐して下さらぬ!?」
「裏切りかっ!」
「あともう一押しだったのにっ」
結局ひしめく多くの兵士達は武器を捨てる事が出来ずに、巨大なサッワの魔ローダーを見上げた。その間にサッワは誰も踏む事が無い様に天井の破れから舞い降りた。
ズシャッ!
『ええい皆言う事を聞け! 聞かぬと両派関係無く踏み潰すぞ!!』
サッワはハッチを開けつつ、必死に命令した。
「ハハハどうしたサッワよキャラ変か? そう言えばカヤは犬に乗って飛んで逃げてしまったぞ」
スピネルは紅蓮との戦闘を中断し、何故かサッワが一番知りたい情報を真っ先に教えた。
(スピネルさん……ありがとう。でも良かった、カヤちゃんは多分犬と依世と一緒に逃げたんだ……)
多少緊張が解れたサッワはスピネルの前に対峙する女装紅蓮を見つけた。
『そこの女装不審者、貴様は数々の嫌疑が掛けられている。おとなしく武器を捨てて投降せよ! 他の者達も詮議が済むまで争う事を禁止する! スピネルさん協力して下さい!!』
サッワは一人でも味方が欲しいとスピネルに呼び掛けた。
「だ、そうだ。三魔将のスピネルもサッワの停戦に協力しよう! 女装よおとなしく投降せよ」
(スピネルさんありがとう)
その言葉の直後、サッワは操縦席から紅蓮へ下手くそなウインクをしまくった。当然スピネルも紅蓮もそれに気付き、目を細めて呆れた。
「逃げよ、という事か」
「見え見えではないか」
その直後であった、唐突に彼らは帰って来た。
シュインッ!
忽然と玉座の丘に市長と話を付けたココ姫とクレウの玻璃ノ宮が戻って来た。そして彼女は状況を見て全てを一瞬で把握する。
バシャッ! 開くハッチ。
『皆の者ご苦労ココ姫ですわ。サッワちゃんも良くやったわね、そのまま全員武器を置いて下さいな! それと女装子ちゃん貴方は大人しく捕まってね!』
サッワの思惑はすぐに外れてしまった……だがその時であった。
ゴバアッ!!
突然破れた天井がさらに吹き飛んで、謎の魔ローダーが突如侵入して来た。
『若君ぃいいいいい!!!』




