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依世脱出とまおう城陥落……


「どうさなれますか?」


 サッワを監視する為に随伴していたメドース・リガリァ遺臣の一人がデッキの下から大声で叫んだ。


『とにかく玉座の間に行って戦闘を止める!』

(カヤちゃん逃げおおせててくれ!!)


 大音声で叫んだ事とは裏腹に、彼は今カヤの無事しか考えていなかった。そしてまおう軍の量産型魔ローダー・レヴェルは既にカヤを乗せたフェレットが逃げてしまった事など知らずに、玉座の間に侵入する為に白鳥號(はくちょうごう)が開けた天井の破れに向かってよじ登り始めた。




 ー同じ頃の玉座の間。

 

「そこかっ!」


 バシャッ!

 突然スピネルが叫ぶと、仕出し配送中の昼食から偶然残し隠し持っていた牛乳瓶の中身を振り撒いた。分量的に全身を覆う事は不可能だが、何も無かった空間に白い人間の上半身らしき物が浮かび上がる。


「しまった!」

「紅蓮!?」


 パシパシパシッ!

 牛乳が悪影響を及ぼしたのか、依世(いよ)紅蓮(ぐれん)アルフォードに掛けていた透明化魔法が点滅する様にしてやがて解けてしまった。途端に姉姫乃(ひめの)ソラーレから賜った女子力UPドレスを着たままの、紅蓮の既にヨレヨレな情けない女装姿が露になる。


「そうか女いや、やはり貴様はクラウディアで俺を蹴った男だったのだな……見事な女装だ」


 スピネルの目にも長髪カツラを外しヨレヨレの紅蓮の姿は、それでもまだ立派に女性に見えていた。恐るべき姫乃からもらったドレスの威力であった。


(女ってアイツどんな目してるのよ!?)

(それだけ凄いって事だよ)

(今そんな事言ってる場合!?)


 カチィイーーン!

 その言葉通り、直後にスピネルの剣が紅蓮に襲い掛かる。彼は器用にフォークの歯の隙間で剣を受け止めた。


「ハハハ、貴様なかなかやるなっ! 剣くらいは拾ってやろう、そらっ!」


 足先で器用に落ちた剣を蹴り飛ばして拾い上げると、ぽいっと紅蓮に放り投げ彼もそれを受け止める。その直後から剣での激しい斬り合いが始まった。

 カシッッ!!

 二人の切り結んだ剣から火花が散る。


(紅蓮、もう一度透明化を掛けるよっ!)


 依世はぶつぶつと詠唱を始める。


(いや、もういい。他の兵士が牛乳持ってくれば同じ事だっ! それにコイツと正々堂々と戦いたいんだっ)


(んもーーっ!)


 戦いのさ中にも、紅蓮は真面目な顔で依世を見つめた。


(依世、此処はもう良い。君だけでも先に帰れ! カヤちゃんを探してあげて!!)

(そんな、貴方を置いて逃げるだなんて……な~んて事言わないわ。わかった紅蓮の事は信用してるから足手纏いにならない様に先に帰るよ。抱悶(だもん)ちゃんの遺体を貸して!)


 目で合図しあう二人は、器用に剣劇の最中に抱悶の凍った遺体を受け取った。


(よっと……じゃあ本当に帰るね! 絶対無事で居てね!)

(もちろんだ)


 等と言い合いながらも依世は少し心配顔になった。


「ガウッ!」(早くこっちに来い!)


 直後、カヤを逃す為に壁となりながらも射殺を免れた熊のリーダー・ベアーが依世に向かって手を振った。


(えっ見えてる訳!?)


 熊達と既に数を減らし始めた抱悶派の兵士達は連携し、なんとか血路を開いて【くま牧場城】に帰還するべく必死に戦っていた。その合間も熊のベアーは鋭い嗅覚で抱悶の遺体の行方に気を払っていた。


「ウガーッウガガッ!」(早く天井の破れから逃げろ!)


 クイックイッ

 ベアーは天井に指を向けた。


(今の内に飛べって事よね? うっ重い……)


 しかし逃げるのは今しかないと判断した依世は、凍った抱悶の遺体を抱えたままふわふわと飛び、悪いと思いながらも熊達の壁を利用して攻撃を避け、難無く天井の破れから城の屋根の外に飛び上がった。彼女は眼下でどんどん小さくなる城内の紅蓮を心配しながらも、そのままカヤとフェレットが逃れた北の森に飛行して行った。


「気を付けて紅蓮」




邪龍奔流(ドラゴンシュトローム)!!」


 ドシュドシュドシュ!!

 ウォーターフロウで作った水の壁から、水流で形造られたドラゴンが何本も飛び出して来て剣で闘う紅蓮にまとわり付く様に襲い掛かって行く。スピネルが編み出したオリジナル魔法であった。


「ちっ危ない!」


 目の前のスピネルの剣を払いながらも、紅蓮は器用に水の龍攻撃を次々に避けて行く。


「ハハハ大した物だな、貴様も炎の攻撃をすれば良いぞっ!!」


「出来るかっ! こうごちゃごちゃ人が居たら誰に当たるか分からん!!」


 紅蓮とスピネルの戦いを暴れん○将軍の斬られ役の様に、二重三重に取り囲んだ両派の兵士達が固唾を飲んで見守っていた。後ろから襲い掛かれば良い物だが、なんとなく二人の高度な戦いに入り込んではいけない様な空気を感じていた。


「ハハハ、ならばもっと出してやろう邪龍奔流×3」


 先程の約三倍の量の水の龍達が現れ同時飽和攻撃的に紅蓮を取り囲んだ。


「ダブルフレイムッ!!」


 格好付けて叫んだが、要はもらった剣とフォークの二刀流で豪炎を出し一瞬で襲い掛かる水の龍達を切り捨ててしまった。その時であった。


『そこまでだっ三魔将のサッワが命じる! 抱悶様派もココナ様派も熊達も全員即座に戦闘を停止せよ!』


 天井の破れから身を乗り出して降りようとするレベルが叫んだ。


挿絵(By みてみん)

まおう城とくま牧場城は並び立つ様に建っていて、くま牧場城はほぼ100%抱悶派が守っている。

お読み頂いてありがとうございます。

今第一部辺りからの書き換えを行っております。

よかったらまた読んでもらえると嬉しいです。

引き続きブックマーク登録お願いします!!


魔ローダー・レヴェルのモデルはホ○ダのRebel 250です。レブルと読む事は知っています。これが普遍的な名詞じゃなくて、ホ○ダのオリジナル語?っぽいのでレヴェルにしています。

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