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飛び乗れ!!


 ー紅蓮(グレン)依世(いよ)達が去った後の城地下。

 ザシュッ! バサッッ!

 暗い地下道で大鎌が妖しく光る度に次々に兵士達が倒れて行く。


「ぎゃーーっ!?」

「姿が見えん!」


 ザシュッ!

 大混乱の中、二十名程の兵士が一気に全滅した。その中に一人、メイド服で鎌の血をビュッと振り落とすライラが立ち尽くす。


「他愛も無い。こんな程度では依世様の連行など元々無理であろうに」


 彼女は表情一つ変えずにVIP用地下牢に走った。




「依世様、ご無事で御座いますか? いや、鉄格子が二つとも溶けている。という事は牢番を殺して既に脱出……入れ違いか」


 ピーーッ!

 突然警備兵の笛が鳴った。


「死者多数! 警戒しろ、増援を呼べい!!」


「チッ……」


 さらなる増援が派遣され兵士達の足音が聞こえてライラは慌てて身を隠す。




 ー玉座の間に戻る。

 サッワの目の前では、ハッチが開き無人の白鳥號(はくちょうごう)があたかも目が見えず蠢く様に戦っている。


「ちょっと何と戦ってるの?」

「誰が乗ってるんだ! もう出るぞ!!」


 サッワの目には、はっきりと白鳥號が見慣れた半透明の魔ローダーと格闘しているのが見えていた。


「白鳥號はハッチが開いてて無人で闘ってる。その相手は多分……多分ココナツヒメ様が乗るル・ワン玻璃ノ宮(はりのみや)だ」


 サッワの気の抜けた様な声の言葉に紅蓮と依世は衝撃を受けた。そして三人が三人とも自分の責任で物事が望まない方向に向かっている気がして、頭に伸し掛かる様な重みを感じて口が重くなった。


「多分ココナツヒメ様が抱悶(だもん)様を討った……僕はどうすればいいんだ」

「ココナツヒメ……セレネちゃんやフルエレちゃんから聞いたけど……抱悶ちゃんの家臣だろ!」

「そんな! それって私達が乗り捨てた白鳥號で復活したって事!? お姉さまどうしよう大変な事に」


 カヤの前で依世は頭を抱えた。


「いや……抱悶様は僕の目の前ではっきりともうすぐココナ様を完全復活なされると言った。多分……ココナ様はその場合でも抱悶様を討ったかもしれない……ずっと僕達の会話を聞いていたんだ」

「お前に慰められるいわれは無いね」


 言いながらも紅蓮は自分の無責任な行動の後悔にさいなまれていた。


「そんなの分からない。抱悶ちゃんが回復(超)を掛けていたら、感謝しててこうはならなかったよきっと」

「でもこの魔呂戦は何なんだ?」


 顔を出すギリギリの所で待機している二人はもどかしい。


「抱悶さまは白鳥號を呼べると言ってた。多分死の間際に召喚してそれが内部念池か何かあって勝手に戦ってるんだ」

「念池切れを待ってる??」

「多分」

「ならする事は一つ! 白鳥號に飛び乗って抱悶ちゃんを復活させるまで!!」


 紅蓮は勝手に外に飛び出した。


「あっバカッ!!」


『グオオオーーーーーーーッ!!』


 それまで抱悶を見失い何をすれば良いか分からない状態の無人白鳥號が、飛び出した紅蓮が抱える抱悶の遺体に反応する様に玉座後ろの崖の方を向いた。


「おやっ白鳥號がまた背中を向けましたわ貴方!」

「そうだねえ」


「撃てーーーっ!!」


 白鳥號を疲弊させる為に展開した魔砲兵や攻城魔導士が、背中を向けた白鳥號に一斉に滅多撃ちする。

 ズズーーーン!! ドドーーーン!

 地下にまで響く音はこれであった。爆炎に紛れまだ紅蓮達の姿はバレて居ない。


「ちょっと待て、抱悶様は置いて行ってもらおう!」

「貴様に命令される覚えは無い!」

「アンタ達喧嘩してる時じゃないでしょ!?」

「お、姉さまううぅ」


 若い依世達が混乱仕掛けた直後であった。


「サッワ様ではありませぬか! メド国遺臣です!!」


 ココナに呼応していた家臣の一人がサッワに気付いてしまった。


「わかった。この者達の注意を引き付けるから、抱悶様と飛び乗ってくれ!」


 サッワは意を決した。


「まって紅蓮、透明化魔法を掛けるわ!! フェレットは全力でカヤちゃんを守って」

「おう任せろ!!」


 サッワはさっと地上に出て、カヤは再びフェレットの背中に乗った。


「サッワ殿どうされた? まさか抱悶派に?」

「ははは、まさか! 僕はメド国以来ずっと身も心もココナ様の物。また彼女の元で豪遊の日々を心待ちにしておった!!」

「おお、それでこそ三魔将のサッワ様じゃ! ささ、こちらに……」


 サッワは紅蓮に合図すると、玉座の崖から離れた。

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