敵だらけの城壁の中を突き進みます!b
広い城壁内を進み第二の城壁の正面城門まで来ても、やはりもう既に門は破られており戦場は最後の第三正面城門に移っているようだった。
ただ門前にはまだ多数の兵士や少数だが魔戦車が残っており、中の戦域に入る為に渋滞の様相になっていた。ピッピーと指揮官が笛を吹く。
ざっざっと魔銃を持った兵士が何列にも並び一斉に砂緒に射撃を開始する。物凄い数の魔法弾や物理弾が雨あられの様にヒットするが砂緒は無視して進む。
なんとなく鮭が川を昇る様なシュールな状態だった。
砂緒が接近すると魔銃隊は全く歯向かう事無くやはりさっと道を開ける。無駄な対決で死者を増やさないという有未レナードの指示だった。
いきなり砂緒にガツンッという衝撃が走る。
今度は魔戦車二両に左右から衝突されて挟み込まれる。砂緒は衝撃は受けたが一切ダメージは無く、魔戦車がもう一度轢く為に下がった瞬間に一両の上に上った。
……が魔戦車の上には三角に尖った追加の装甲が設置されており、単純に砂緒が足を掛けにくい構造に変化していた。
砲塔の上も同様で、ご丁寧に油すら塗ってある。さらには上に乗られた途端に前後に激しく動き、まともに長時間上に乗れなくなっていた。
先の戦訓を生かして砂緒対策がなされていた。
これでは砂緒の人並な運動神経ではたった一両を破壊するのにも時間がかかり過ぎてしまうだろう。
「こちらも無視しましょうか」
砂緒は敵を倒す事は諦めて、ひたすら前に進む事に方針を変更した。
それを察知した敵が物理的に進め無くしようと門に魔戦車や人員を殺到させようとしたが、一瞬の差で砂緒はそれをすり抜け、最後の城壁の前まで来た。
今まさに20両程度の魔戦車が城門に向かって猛攻撃をかけ、後ろでは魔導士部隊が攻城用の大型魔法を順次放ち続けている。城門の防御魔法ははがれかけ落城寸前となっている。
砂緒はちまちま敵兵にぶつかり続けても、一両づつ魔戦車を潰しても結局城は落ち、城中の人々が人質に取られたり殺害されるのは明らかだった。
「ここも無視しましょうか……」
やはり敵を倒すという方針は諦めて、振り返って驚く最後列の魔導士部隊に向かって重くなりながらぶつかり血路を開くと、足を滑らせながら魔戦車の上を乗り継ぎ城門にまで辿り着く。
当然だがその間も爆風で砂緒の姿が見えない程のシャワーの様な攻撃が続いている。
「やっと最後の正面城門まで辿り着きましたが……」