敵だらけの城壁の中を突き進みます!
「ぜっっったいですよ。後からこっそり付いて来たりしていたら、今度こそは本気で怒りますよ」
いつになくフルエレに厳しい砂緒だった。
「わかっているわ……大人しく言う事を聞きます。砂緒こそ気を付けてね。七華をお願いします」
フルエレが砂緒の手を取って約束した。
「はい、安心して下さい。私はフルエレの元に必ず戻って来ますから」
フルエレの手の上にさらに自らの手を重ねてしばらく見つめあった後、おもむろに離し手刀をしゅっと切ると大きな橋を渡り、破れた門から城の中に吸い込まれて行く砂緒。
フルエレはしばらくの間その姿を見送り続けた。姿が見えなくなっても名残惜しくてその場を離れられない。
「ん、なんだろう……」
フルエレがポシェットを見ると、かすかに光がぼうっと漏れていた。恐る恐る中を開けて見ると、七華王女から預かっている王家の宝であるヘッドチェーン中央の宝石がひかり輝いていた。
「兎幸ちゃんから聞いた魔ローダーの始動鍵という宝石、なんで今頃光り輝いているんだろう……発掘現場に近づいていた時は何の反応も無くて、やっぱり偽情報だと思っていたのに……」
フルエレは掌の中心で鈍い光を発し続ける宝石を、砂緒に村に帰る様に言い付けられた事も忘れてじっと見つめ続けた。
砂緒が開けられた第一の門をくぐると、既に戦場は第二の門以降に移っているのか、地面にはリュフミュラン兵の死体が転がり、警戒しているニナルティナ兵がぱらぱら立っているだけだった。
「少年、城壁内の市民なら家に入りなさい!」
魔銃や剣を持った兵士に呼び止められる。砂緒は構わず無視してズンズン進む。当然容赦無く魔銃で撃たれたが、既に大理石の乳白色に変化していて何の効果も無い。
「効かない! で、出た硬くなる化け物だ! 上に知らせろ、誰も手出しするな!」
この場の上官らしき者が指示すると攻撃を止め、誰も手出ししない中を砂緒は悠然と進んだ。
別に動いても関係無いのだが、驚愕の顔のままだるまさんが転んだの様にピタリと止まって動かない若い兵士も居た。そのまま砂緒はすたたと走り出した。