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久々に女王仮宮殿へ② 再会……


 キキキーッ

 女王仮宮殿がある公園内に入って、雪乃フルエレが魔輪に急ブレーキを掛けた。


「へんねえ」

「変ですねえ」


 いつもフルエレが駐車していた駐輪場が閉鎖になっている。閉鎖になっている所か仮宮殿に行くルートの全てにバリケードが設置されて侵入出来なくなっていた。


「仕方ないわ、魔輪で強行突破するわっ!」

「そうですね、女王ですからそれくらい許されると思いますよ」

「えいっ!」


 ギュワーーと魔輪を急発進させると、黄色いバーが掛かった通行止めをバキャッと破壊して侵入した。


「気持ちいいものです」

「いっぺんこういうの破壊してみたかったのよ!」

「無軌道で良いです。どんどん行きましょう」


 スナコに女装中の砂緒の言葉通り、普段は徒歩で行く宮殿へのスロープまで魔輪で乗り上げる。そこまでするのは二人とも仮宮殿の異様な変化に気付いていたからだった。


「誰もいませんねえ」

「いないわねえ、不気味だわぁ」


 無軌道にサイドカー魔輪を入口に停車すると、二人は降りて徒歩でエントランスに入るが、やはり構内には全く誰も居なかった。


「おかしいですね、フルエレに挨拶してた警備員のおじさんもいません」

「不用心だわあ、今日は休日なの!?」

「いやもう休日言うレベルじゃないでしょコレ」


 スナコはボディーガードとして多少用心した。



 カラカラカラ

 そこに唐突に魔法灯りの少ない屋内の奥から、ダンボールやら書類を満載したカートを押した女子職員が一人やって来た。


「ふぅびっくりしました、てっきりタイムトリップして未来の荒廃した仮宮殿に来たのかと思いました」

「タイムトリップ好きねえ。あの人に聞いてみましょう」


 二人はたたっと走り出した。



「アッ」

「あっ……」


 雪乃フルエレは間近で職員の顔を見て目が合ってびっくりした。一人居たのはフルエレがアルベルトに勘違いで激怒してしまった、指輪の事を相談していたアノ女子職員だった。


「こ、これは雪乃フルエレ女王陛下ご機嫌麗ししゅう……いえこれじゃない、以前にはご無礼の程お許しを」


 すました顔でカートを押していた女子職員は、突然の事に気が動転している様子だった。


「慌てないで。私はロビーに居る時は謎の女子職員のフルエレよ、楽にして頂戴……」

「は、はぁ……ではお言葉に甘えて」


 と言っても複雑な相手なので緊張が取れる物では無かったが。


『所で君、何で貴方一人だけが此処にいるの? 外の職員達は何処に消えてしまったのです?』


 緊張をほぐす為にスナコちゃんがボードで聞いた。しかし女子職員は目をぱちくりして二人の顔を交互に見て怪訝な顔をする。


「……あの言い難いのですが、これは私を試すワナかテストか何かでしょうか?」

『罠って、いえ本当に私達訳が分からなくて』

「そうよ、そんなに私が恐ろしい!?」


 フルエレは少しイラッとして来た。


「では私が知っている限りの事をお教えします。この女王仮宮殿は一週間前に閉鎖になりました」

「え?」

『閉鎖ですと!? 宮殿はどうなるのですか??』


 二人は本当に心から仰天した顔をして、女子職員はこの二人は本当に何も知らないのだなと呆れた。


「仮宮殿は閉鎖になり、ザ・イ・オサ新城に完全移転すると、雪乃フルエレ女王陛下より職員全員にお達しがありました」


 二人は息を呑んだ。


「えっ知らないわよ私」

「ゴホン」


 ポカッ

 スナコちゃんがフルエレの背中を叩いた。


「あーーーあー、そう言えばそんな話したかもしれないわぁアハハハハハ」

「はぁ」


 女子職員は白い目で二人を見た。


『で、貴方は此処で何を??』


 今度はスナコは多少怖い顔で職員を見た。泥棒か何かと思ったのだ。


「私は……此処に色んな思い出があって、離れたく無くて書類整理部に志願して居残って残務処理してるの。此処が完全閉鎖になったら退職するつもりです」


 フルエレはそれを聞いて途端に寂しい顔になった。


「辞めなくてもいいのに」

「ご安心して下さい。女王陛下は全く関係ありません、いいかなって自分で思っただけです。余計なお世話かも知れませんが、お二人はザ・イ・オサ新城に行かれた方が良いのでは?」

「そうね、また会えるかしら私達?」

「どうでしょうか、ご機嫌よう女王陛下」


 女子職員は深々と頭を下げ、フルエレとスナコは仮宮殿を後にした。

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