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紅蓮、まおう城をどり③ 待て……


 二人が無理やり外に出されると、重いトビラが閉じられた。


「どうだったー? 怖かった??」

「ふぅ」

「疲れた……」


 異常に無神経な砂緒とそれに海と山と国に遊びに来ていて気の抜けたまおう抱悶という奇跡の組み合わせで両者は気楽な関係で居たが、今回の出会いは抱悶が全力でまおうの迫力を出した為に紅蓮と依世は異様に体力を奪われた。


「うんじゃあ疲れたら寝る??」


 カヤはキョトンとしている。


「悪いけど、今夜中に大きな洋扇と長髪のウイッグと」

「顔を隠せる薄いヴェールが欲しい」

「あいあい、店主を叩き起こしてでも用意するよー」

「う、うん、お店の人には悪いけど頼むよ」


 そして二人は案内された個室で眠りに就いたのだった。




 ーそして無常にも次の日、五件熊氏を招いての宴席が始まった。

 大宴会場鳳凰の間の控室。


「うわーもうすぐ出番だよ……緊張する」

「私は悪いけど見とくだけだし」


 と、そこへ突然呼び出されたグロリアス帆布のメンバーが現れた。もしこの場に砂緒が居たら、二度見して○ュリーやないかっと言いたくなるような、女性的な化粧に軍帽を斜めに被ったいかつい連中である。


「こんなステージでも俺たちロッカーなんで、ハンパにはしたくないんでヨロシク」


 異様なバンドメンバー達に睨まれる。


(ヒッ怖い……)

「はい、よろしくお頼み申します……」


 長髪のウィッグを付けてより女性らしくなった紅蓮は視線を逸らした。


「皆さま出番で御座います、くれぐれもまおう様に粗相無き様に」


 次女が紅蓮達を呼び出したいよいよ出番である。


「ヨロシクお願いしまっス!!」


 グロリアス帆布のメンバーは大声で挨拶して深々と頭を下げ、紅蓮と依世はコケた。




 パンパンッ

 宴席もたけなわ、抱悶が突然手を叩いた。皆が一瞬静まり返る。


「よいよい皆楽しめ。今夜は面白い趣向があるぞよ、五件熊殿の功績を労う為に今若人の間で人気沸騰のグロリアス帆布を呼んでおる。それに合わせ美女が舞い踊るぞよ」


 ざわざわ、会場内がざわめく。


「グロリアス帆布? 何ですかな」

「今人気だそうですぞ」


 ズッギュ~~~ン、ギュワンギュワンギュイーーーン!

 ピックが弾く魔レキギターの弦の震えを音楽用魔ァンプリファイヤが増幅し、魔法スピーカーから突然大音響が鳴り響く。高齢者が多い宴会場では心臓に悪い程の音にびっくりした人が続出した。遂にバンドの生演奏が始まった。


(は、始まった……ドキドキする)

(根性決めて!)

「他人事だと思って……行くよっ!」


 その生演奏の中、勢いよく洋扇を持った長髪の紅蓮が飛び出した。


「おおお……美しい」

「なんと艶やかな……」

「こんな美女が何処に?」


 宴会場の真ん中に作られたステージに紅蓮は飛び出た。彼から見て目の前のかぶり付きにまおう抱悶は座っていた。

 ギュイーーーン♪

 相変わらず鳴り響くロックの音楽に合わせ、紅蓮は踊り始めた……


(ちんとんしゃん……)


 紅蓮はロック音楽を無視し、手堅く習った古典芸能のをどりを披露した……


「おおおおお、凄い……」

「音楽と踊りが全く合っていない」

「ゴクリ」

「これで良いのか??」


 しかし紅蓮は構う事無く艶やかな動きで洋扇をゆらゆらと振り舞い続ける。


「いや、しかしナウい音楽と古典的な踊り、このアンバランスが妙味とも言える」

「え、そう?」


 人々はハート強く舞い続ける紅蓮の動きに魅了され始めた。依世はヴェールを被った顔を赤面して俯いたが……一瞬視界にライラが目に入った。


「え、何でライラさんが此処に??」


 そのライラも依世と似た体格の少女を睨む様に見始めた。しかしその最中、舞い続ける紅蓮は奇妙な感覚に襲われた。鳴り響くロックの音と輝く照明の中で、父第二百十二代神聖連邦帝国聖帝の声が響く。


『まおう抱悶を討て』


 その言葉が呪いの様に彼を突き動かし、徐々に徐々にススッと足先が抱悶に接近を始めた。


『まおう抱悶を討て』


 紅蓮は握る洋扇の指先に力が入る。彼は枝でも箸でも念じて振れば炎が噴き出す能力を持っていた。まおうを間合いに入れ、一度洋扇を振れば事が終わる……彼はスススと近づき続けた。


「待て」


 その時、まおう抱悶が恐ろしい顔でスッと立ち上がり、某豊臣秀吉が某かぶき者にした様に掌を構えて紅蓮を制止した。彼はその一言でピタッと止まり目が覚めた。

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