おいスナコぉ焼きそばパン買って来い!
ー魔導王国支店開店からしばらく後のある日の昼休みの部室館。
「おいスナコ、お前もそろそろ学園生活に慣れて来たか?」
唐突にミラがスナコに聞いた。喫茶店は雪布留の気分次第で開店したりしなかったりなので、次第に客は減って行った。今雪布留は上機嫌で自分の店部分に居た。
『ええ、もう学園内も迷わず自由に行き来出来る様になりましたっ!』
スナコは笑顔で答えたが、ミラの脳内にはあの時のルンブレッタに迫られた姿がこびり付く。
「お、じゃあスナコぉ、ハラ減ったから学食で焼きそばパン買って来いよぉ!」
「それじゃああたいの分も買って来なあ」
多少意地悪い顔でミラが言い、ジーノも同調した。
つーーー。
突然スナコの頬を一筋の涙が流れ落ちた。ミラはルンとの出来事が引っ掛かっていて、少し意地悪くしてやろうと思ったのだが、まさか泣くとは思わず途端に焦り始めた。ミラもジーノも悪い人間では無かった。
「お、おい何も泣く事ないだろ!?」
「嫌なら嫌ッて言えよ! 別に無理強いする訳じゃねーんだよ、ノリだよノリ」
突然二人して慌てまくる。二人共新入部員スナコが可愛くて仕方が無いのだ。
『遂に……遂にこの時が訪れたのですね? 私が焼きそばパンを買わされる栄誉の瞬間が』
スナコは大量の涙を流しながら天を仰いだ。
「嬉しいのかよ?」
「じゃ、早く行けよ」
『出来れば足蹴にしながら命令して欲しいのです……ミラに』
「何でミラ限定なんだよ!」
ドゲシッ!
ジーノはスナコのお尻を軽く蹴った。その逆にミラは少し赤面した。
(何だよスナコの奴……)
そのまま蹴られた勢いでスナコは飛んで行った。
ー学食前。
『るんるんるん、焼きそばパンを買わされるん』
謎の鼻歌までホワイトボードに書くスナコ。昼休みも後半、もはや学生の姿はまばらであった。
『妙齢のおば様、焼きそばパンを二つ下されい!』
スナコは学食のパン等販売窓口で笑顔でボードを掲げた。
「焼きそばパンは売り切れだぞ、砂緒何をやっている口で喋れ」
突然の聞き慣れた声の言葉にドキーンとして笑顔が消える。
『貴方は誰ってイェラ!?』
「だから口で喋れよ、お前の声が聞きたい」
販売部に居たのは妙齢なおば様では無く、ニナルティナに居るはずのイェラであった。
「ちょ、ちょっと大声で言わないで下さい。此処ではスナコちゃんという事なのです……」
「ちょっと来い! おいお前らっ今から代金は缶に入れろ、誤魔化した奴は斬る!」
イェラは大声で田舎の無人販売所的な事を口走ると、しゅるりと布巾と白いエプロンを脱ぎ捨てた。途端に見事なプロポーションと胸の谷間が露わになる。何人かの生徒の視線の中、イェラは強引にスナコの手首を掴むとそそくさと校庭に出て行った。
ー校庭の林の中。
「ふふ、一緒のビルの中で寝起きしてるのに、お前は直ぐに学園に行ってしまって帰って来るのも遅くなってから。寂しくて来てしまったぞ」
イェラはスナコを林の中に連れ込んで巨木に押し付け、セエラア服のスカーフを指先でクリクリした。
「来てしまったって……どうやって?」
「セレネに命令した。渋々コネで無理やりねじ込んで採用してもらったぞ」
等と言いながらスナコの制服の上から身体中を撫でさする。
「止めて下さい、イェラは立派な戦士キャラだったハズです、いつからこんなどエロお姉さんに」
「ふふ、お前がこうしたんじゃないか?」
スナコはイェラの手を押さえたが、彼女は動じる事無く愛撫を続ける。
「はぁはぁ、有未レナードさんとはどうなったんですか?」
「はぁ? あんなヤツ知らんぞ。勝手に言い寄って来ただけだ。あんな奴の名前を出すな!」
等と言いながらイェラは野外では危険な手付きで砂緒を弄び始めた。
「ほ、ほんとに止めて下さい、あうっ」
(ミラ……焼きそばパンが……スマヌ)
上気して真っ赤になりながら、何故かミラの顔が浮かぶスナコ。
「ふふ、女の子の砂緒も可愛いな。少し脱がしてやろうか」
しゅるるっとスカーフを外し、少し降ろした制服から白い肩が覗く。
「だめっ」
とその時、心配して付いて来ていたミラが少し離れた林からその現場を見ていた……
(スナコ、その女ダレだよ……!?)




