開店!!② 怪しい影……
キュキュッ
『でも雪布留、貴方料理がどヘタなのにアフタヌーンティーセットとかプリンアラモードとかクリームソーダとか本当に作れるの?』
スナコが豪華なメニュー表を見て心配になった。
「どヘタは余計よ。どヘタじゃなくて料理に興味が無いの。でも安心してジーノが料理が趣味とかでタダで作ってくれるの部活動だから!」
「でも料金取るのよね??」
猫呼が怪訝な顔をした。
「活動資金よ?」
『何の活動資金ですか怪しい団体みたいな言い方止めて下さい』
しかし想像以上にお客さんが押し掛け、ジーノ一人で回すのは困難な程に思えた。
「凄い盛況ですね、私もお手伝いしましょうか?」
お客として来ていたリュディア・セリカが雪布留に申し入れた。
「ありがとう! つまり新入部員ね?」
「ち、違います、今手伝うだけです」
リュディアはとても焦りながら首を振った。
「そこまで焦らなくても良いだろうが」
『セレネさんそういう所ですよ、皆が貴方を恐れています』
すぐにキッと怖い顔をするセレネ王女をスナコは諫めた。
「雪布留さん開店おめでとう! これはつまらない物ですがお祝いの花束です! それにしても仮面を付けていない貴方がこんなに美しいなんて、花が見劣りしてしまいます」
アルピオーネが跪きながら大げさに花束を渡した。セレネの調査で研究員メンバー全員に従軍経験は無く、雪乃フルエレ女王の顔を知らないと分かったので、もはや仮面は不要となった。
「まあっありがとうっ! すぐに花瓶に飾るわね」
「しかしセレネ、これだけお客が多いとちょっとしたカオスだね。君たちで裁き切れるのかい?」
ラフィーヌが満席の喫茶店内を見渡しながら言った。
「じゃ、ラフィーヌが帰ればいいじゃん」
「おいおいつれないなあ! ハハハ」
何を言われても王女が幼い少女の頃と変わらないと思っているラフィーヌは怒らず笑顔であった。当然蘭観やアスティーも居るが台詞は特に無い。
「おいスナコぉ、お前なんでメイド服きねーんだよ! あたいらですら着てるってぇのに、何でお前だけジャージにエプロンなんだよ、中途半端じゃねーか」
巨乳のミラはピチピチのメイド服を着て、密かに男性客の目の保養となっていたが、その恥ずかしいメイド服を着ていないスナコを彼女は不満に思った。
『雪布留から許可は得ています』
「いやもう脱げ! 今すぐ脱いで着替えろよっ」
ミラが無理やりにスナコの服を脱がそうとする。
『い、いやっ』
「やめい! 前にも言っただろうがっスナコは邪龍の呪いで素肌を見せちゃダメなんだよ」
光の速さでセレネが飛んで来た。
「見たらどうなるんスか?」
「スナコの体に潜む小さな獣が解放される……悲惨な事になるぞ」
「ちいさなけもの?」
『私の獣は小さくありません』
ゴキャッ!
光の速さでセレネがスナコの頭を殴った。
ガシャーーン!
その時であった、どこかで食器類が床に散らばる音がした。
「なんだ?」
セレネスナコ達は音の方を見た。
「うぃーーー酔っぱらっちゃった~~この珈琲酔いが早いわ、うひひ」
ズタボロのフードとマントを被った見るからに風体の怪しい客が店内をふらふらと歩きだした。一瞬騒然となる店内。
ざわっ
その客はカウンターに置いてあったラムネ瓶を勝手に奪って器用に開けてラッパ飲みし始めた。
「あっお客さんそれは商品の」
「ういーーソーダ水で酔っぱらっちゃった~~うへへ」
なおもふらふらしながら店内を歩き回る謎客。
『仕方無いわね、荒事なら私の担当ね!』
「おいキィ付けろ」
スナコが全身を硬化させながら接近し、いきなりマントを奪った。
ばっさ~~~。
『あっ』
「うっ」
「お?」
ミラジーノや通常客は兎も角、雪布留一味は唖然とした。マントの中身はメランであった。何とも言えない空気が漂う。
「メランさん一体何ですかこれは?」
「メランさん一体何ですかこれは? じゃ無いわよセレネ!! あんた私のル・ツー速き稲妻Ⅱを隠してるでしょ!?」
いきなりメランは血走った目でセレネの胸倉を掴んだ。王女に対し無礼を働き、上下関係が良く分からず一般客は混乱する。
ざわっ
「お客さんの前です、止めて下さい」
しかしセレネの目は泳ぎまくっていた。




