有未レナードの作戦とイェラ拘束……
「よし、ではお前ら二人もここはもういい、今から魔輪で直接城までぶっ飛ばして行ってくれよ」
兎幸が飛んで行くや否や衣図がおもむろに砂緒と雪乃フルエレに言った。
「どういう事ですか、村のみんなや集まってくれた冒険者隊の皆さんを置いて行けと言うのですか」
砂緒が珍しく他人の配慮をして正論を言った。フルエレは黙り込んでいる。
「いいや違う。前にも言ったが城が本当に落ちちまったら困るのは村だ。かと言って俺たちが駆けつけた所でどうにも出来ねえ所まで来てる、今打開の可能性があるのは砂緒、お前が行く事だけだ。つまりそれが結局皆の為になるって事だ」
その衣図の言葉が終わるかどうか重なる程の直後、フルエレがガシャガシャと重い装備を捨て始めた。
「どうしたのですかフルエレ」
「私大将さんの言葉に従って行く。見た目的には来てくれた冒険者ギルドの皆や義勇軍の皆を置いて、逃げる様に見られて後ろ指刺されても別に構わない。砂緒を城まで送る……それで誰かが一人でも助かるなら私走ります。お願い、砂緒一緒に乗って城を助けて!」
フルエレは先程までの混乱から脱して決意の瞳で見つめて来た。
「……そうですね、状況を考えるとこの辺りに敵が居てもたいした数では無いでしょう。冷たく思われるかもしれませんが皆さんだけで生き残ってもらいましょうか。その代わり城にはちゃんと突入しますよ」
「決まったんなら、だったらもたもたすんな、今すぐ行け」
「はい!」
砂緒は返事すらせずにもうサイドカーに乗り込んでいる。
フルエレは魔銃だけホルダーに収納すると装備を外し終え、作業着とスカートだけの姿になって魔輪に跨り、一回振り向いてこの場にいる連中に会釈すると早速東に出発した。
砂緒はサイドカーで無言で手刀を切っていた。
「行っちまったか……よし、俺たちは全員に事情を説明したのち、有志で城に向かう班と村に帰る班に別れよう。皆を呼べ。」
衣図ライグはラフを馬に乗せ追加の説得役として北にいる正規軍に向かわせ、皆に相談を持ち掛けた。
城では夕暮れの中、第二の城壁の攻略が進んでいた。もうもうと立ち込める煙。
詠唱に時間がかかるが威力の大きい攻城用の大型攻撃魔法、門を集中砲火する魔戦車隊上がる火の手。誰の目にも落城は時間の問題の様に見える。
「だーはっはっはっやった勝った! 今度は完璧に勝ったぞ! あの脳筋の衣図を追い払う事に成功し、もぬけの殻の城を一挙に占拠! とうとう俺の時代が来たな、ひゃはは」