喫茶猫呼支店開店!!前
「何で此処にユーキュリネイドが放置してある? 生徒会長は居るのか?」
セレネは眉間にシワを寄せ、あからさまに嫌そうな顔で聞いた。
「何でもいきなり決闘の再戦を挑んで来たらしいけど、砂緒が隠し剣・馬刺しとか言うワザで撃退したらしいの」
「隠し剣・馬刺し? いくら相手がユーキュリーネでもヒワイな技は駄目だろーがっ! て、雪布留さんマスク付けるの忘れてるぞ……ていうか砂緒!?」
セレネは突っ込み処が多すぎて一瞬迷う程であるが、主君の雪乃フルエレ女王の危機にいち早く反応した。
「うん安心して、ルンブレッタは私の正体知らないみたいだし、興味も無いみたいよ!」
「後で研究所のメンバーが従軍経験あるか教授も含めて調査しておきます。で、砂緒は?」
小声でささやき合った。
「セレネさんには来るなと言われていたのですが、貴方会いたさにとうとう来てしまいました。許して下され。あと隠し剣・馬刺しはヒワイじゃ無いです」
砂緒は素直にペコリと頭を下げた。当然毎日スナコとして学園で顔を合わせているが、この様にはっきり言われると笑みがこぼれてしまうセレネであった。
「も、もぅ恥ずかしいだろ! いいよ、あたしもお前にそろそろ会いたいなと思ってた所だ」
セレネは学校以外にも軍部や王国の仕事もあり、このところは喫茶猫呼ビルから本国の薔薇の城で寝起きする事が多かった。しばし見つめ合う二人であった。
「アーーアーーー部長……」
「アーーアーーー何も見てない」
ミラとジーノは複雑な顔で目と耳を閉じ、二人の逢瀬から顔を背けた。
「わっかるわぁ」
その横で猫呼が首を振った……
「それでユーキュリネイドはどうするんだよ?」
生徒会長の登場以降影が薄くなったルンが見上げながら言った。
「良い事思い付いちゃった! 内装業者さんが置いてった廃材を操縦席とか装甲の裏とか関節の間にねじ込んで置きましょう!」
「雪布留さん外見に似合わず怖い事言うんだね!」
ルンは笑顔で言い放つ雪布留に多少の恐怖を感じた。
「雪布留さんって本当は大体こんな感じのお人だ。舐めて掛かると怖いぞ」
「ほんとほんと」
猫呼も同意した。
「深夜にでもこっそり取りにくるんじゃないかな? 置いといてやりなよ」
「ルンブレッタは優しいですな」
等と砂緒がしみじみと言っていると……
「あのさ、皆重要な事忘れてない? スナコちゃんが行方不明だよ僕は心配だな」
「本当だっスナコの奴何処をほっつき歩いて」
「皆で手分けして探しに行きやすか!?」
ルンとミラジーノが深刻な顔をするが、猫呼雪布留セレネ砂緒は何だかなあ顔となった。
「ルン安心して下さい。スナコの行動は親戚の私が把握してます。彼女は駅魔車で帰りますぞ」
「へェー本当かい?」
ルンブレッタは多少の疑いの目で砂緒を見た。
「ルン殿信用してくれ。王女としてスナコの身の安全は保障する」
「う、うん」
学院長も兼ねている王の孫、セレネに念を押されると反論出来ない学院生の彼であった。
ーその日の深夜……
「抜き足差し足……くく誰も居ませんわ~」
ほっかむりをしたユーキュリーネは左右を確認しつつコソコソと部室館前に現れた。
しゅたっ!
セレネ程では無いが、軽やかな足取りでピョンピョンと装甲を伝い這い上がって行く。
「ユーキュリネイド起動!」
ヒュイーーン!
心配を他所になんとか機体は帰れるだけの動きは出来る様であった。
ぱさっ
と、彼女の頭上に何かが落ちた。
「何かしら? ……僕の子猫ちゃん、君の大切な機体は私が全力で守りました。今回の事を貸しにしばらくは決闘を忘れる様に。君には花やダンスがお似合いだよ。貴方の騎士砂緒より……まあっマメな御方」
等と言いつつ手紙を見て笑顔になったユーキュリーネであった。
ーそれから次の週末、遂に学園支店の開店の日となった。
「やったわ、遂にこの日に漕ぎつけたわっ皆有難う!」
涙ぐむ雪布留の周囲にはいつものメンバーの他にも、リュディア・セリカやユリィーナの他に熱血女教師等の、物珍しさに来た新たなお客さんもいた。




