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砂緒、女の園へ


「ファイッオーーファイッオオー」

「おお、やってるね」


 休日とは言え、ユティトレッド魔導学園には運動部で汗を流す乙女達がわんさかと活動していた。体操着でランニングする女子生徒達をルンブレッタは楽しそうに眺めている。


「いいんですかね、不審者として通報されませんか?」

「だって学園長のお孫さんから侵入許可得てるんだよ」


 砂緒が目を凝らすとグラウンドの傍らでは、制服の上をぱたぱたさせて涼んでいる乙女達もいた。


「し、シミーズが見えとるやないか」

(よくよく考えたらえらい所に毎日通っていた訳で……あっちこっちに弾ける様な乙女だらけじゃないですか……)


 砂緒に戻る事で男も復活した彼には目の毒であった。勢い凝視してしまった制服パタパタ少女と目が合い、慌ててサッと隠される。その後彼女らはこちらを見てヒソヒソ話を始めた。



「あれ、なんか道が間違ってるみたいだけど」

「おかしいですな」


 ルンブレッタと二人で同じ所をくるくる回り始めた。良く考えたら転校生のスナコはセレネやミラジーノといつも一緒なので迷う事は無かったが、ユティトレッド魔導学園は非常に広大で迷宮の様であった。


「よし、あそこの部室に聞いてみよう!」

「え、文学部?」


 ガラッ!


「たのもー! あのー討伐部部室館に行きたいんだけど……」


 何の躊躇も無く部室のドアを開けるルンに砂緒は呆れた。

 ざわっ

 一瞬で文学部部室内は謎の美形侵入者に騒然となった。


「男よっ」

「美形の男だわっ」

「うっ後ろの男は何? 危ない目をしているわっ」

「見ちゃダメッ! あれは人を取り殺す目よっ!」


 もともとひそひそ話が多い文学部部室では、ぼそぼそと突然の侵入男性に小声で騒然となった。


「お待ちを。わたくし文学部部長です。御用件とは?」

「部長凄いわ、美形の見知らぬ男性にも臆する事無く……」

「さすが部長だわ」


 髪の長い部長は落ち着いて応対した。ルンは事情を詳しく話した。


「成る程、討伐部部室ですね? それならカクカクシカジカと行けば辿り着きますわ。どうぞお気を付けて」

「有難う~~!」


 ルンは笑顔で出て行った。

 ピシャッ


「ふぅ。後ろ手にドアを閉めた部長は冷や汗を拭った」


 何故か自分の状況を口で言う部長。


「部長、凄いです! 突然の美形男侵入者にも落ち着いて対応、惚れ直しました!」


 部員達が部長を羨望の眼差しで見る。


「あの二人は相当な達人……私も必殺のオーラを放って、精神でバトルを繰り広げていました」

「マジデッ!?」

「しかも……あの二人出来ています」

「エッ?」

「彼らは二人きりになると、どちらからとも無くそっと手を繋ぎ、いつも一緒にお風呂に入っています……そうビジョンが見えました」

「マジデスカーーーッ!?」

「美形と野獣のカップル……」


 部員達は赤面していた。彼女達がどういった文学が好きなのかは明白であった。



 ー討伐部部室。

 雪布留が呼んだ内装業者は今日の仕事を終え、お菓子を食べながら猫呼が入れた紅茶を皆で優雅に飲んでいた。


「へェー、セレネって本当にドラゴンを五十匹も倒していたのねえ」

「いや五匹くらいだった気が」

「3匹くらいじゃね?」

「アンタね、ドラゴン五十匹も人力で倒せる訳ないでしょ!」


 等と無駄話をしている最中であった。

 キキーーッ

 ようやく二人のスクー魔ーが到着した。


「あら、何の音かしら?」

「魔輪ぽいわねえ」


 ガチャッ

 ドアが開き、最初にルンブレッタが入って来た。


「おっルンブレッタさんじゃないスか?」

「どもー皆さん! ミラ名前覚えててくれて嬉しいよ。ほら、ベック恥ずかしがらずに入っておいでよ」


 ルンが掌でドア外に向けて来い来いとする。


「ベック?」

「ども、クレゴリー・ベックです」


 無表情でウエイター姿の砂緒が入って来た。


「ブフーーーーーッ!!」


 雪布留はかろうじて耐えたが、猫呼は1N メートル近く紅茶を吹いた。


「皆目を合わせるな! この目は人間を取り殺す目ですぜっ! 目を見ずに攻撃しやしょう!!」


 まだ何もしていない砂緒は、一応初対面のミラからいきなり攻撃対象扱いされた。

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