お城が危ないです!c
フルエレが絶句する。
「それでどうなりましたか?」
「それから……凄い数の魔戦車隊が東側から突然現れて……敵兵が内側から門を開けて引き入れて……お城の中ぐちゃぐちゃ……兵隊さん以外の人も……いっぱい死んでる」
「なんだと! しまった!! 全く敵とすれ違いもしなかったのに」
「見た……二番目の城壁も破られそうだった……早く砂緒に知らせたくて飛んで来たのです……」
「あああ、どうしよう!? どうすればいいの!? こんな事って」
いつも明るいフルエレが突然頭をかかえて半狂乱になる。
あの時見た道路工事のおじさん達が敵側の工作員だったのは明らかだった。迂闊過ぎて頭が真っ白になる。こんな事は誰にも言えなかった。
「悩み過ぎないで」
砂緒がいつになく冷静に優しくフルエレを軽く抱き寄せた。当然二人以外には事情は分からない。
「兎幸、その乗り物で北にいる正規軍まで一人で飛んでいけますか?」
砂緒がフルエレを抱えたまま兎幸に問う。
「行けるよ……」
「では君は今日は天使です。正規軍の前に神々しく降臨してお城の危機を伝えて下さい。とにかく粘り強く危機を伝えてください」
「お、おう、それがいいぜ! 早く行ってくれよ、俺たちも後から伝令の馬を出すからよ」
「待って……」
突然フルエレが兎幸の腕を掴む。
「これを……渡して」
そう言うと涙を貯めた目のまま、突然後ろ手にナイフでざくっと一本にまとめていた金色の髪を切り落として兎幸に渡した。
「何て事をするのですフルエレ」
「嬢ちゃん」
「これを……硬くなる化け物の相方が証明にと渡したと。お願い行って! 早く行って!!」
「うん……分かった……絶対に兵隊さん引き返させる……雪乃泣かないで」
兎幸はかすかに笑うと光をまき散らし、すっと上空に消えて行った。
※後の情報が混じっています。