心を研ぎ澄ませ 勝敗
『ぴーーーーーっぴーーーーっ! 両者止まれっ!』
兎幸が口で笛の音を表現して、二機に戦闘の中止を求めた。
これはスナコが指示した物では無くて、実は蘭観が言うように兎幸が独自に動いた物だった。
ほわんとしている彼女だが、異様に長い時を生きているだけはあり、それなりの判断力はあった。
「兎幸なにを?」
砂緒にしてみれば突然の彼女の行動に驚いた。
『試合前に武器が破壊された場合の事を決めてなかったでしょ! こういう場合はどうするのかな?』
実際には兎幸はセレネを助ける形となっていた。
(動きは速いが強度の無い竹刀を選んだ時点で、こうなるのは目に見えていましたわっ! 次の攻撃で決めれた物を……)
『では、セレネ教官に新たな木剣をどうぞ』
ユーキュリネイドは片手を上げた。
『うむ、心遣い痛み入る、すぐさま再開しよう』
『ぴーーっ試合再開っ!』
兎幸のふえ真似で試合は再開された。
(先程と同じやり方ではまた木剣で弾かれる……何かの方法で私の動きが見えているのでしょう、さすがセレネ王女ですわ。第一撃は弾かれる覚悟で二連撃を与えるしか!)
ギャギャギャッ
再びユーキュリネイドは超高速で走り回り始めた。
(バカめ、また同じ事を繰り返す気か……私は同じ事をしないぞ、次は防がない!)
今度はセレネは敵の動きを予想した上で、受け太刀をせず弾いた木剣でシームレスに攻撃に転じる事を狙った。
彼女はユーキュリネイドは次も胴を狙って来るとタカを括っていた。
(木剣を叩き落とし、そのままこちらが胴を斬る!)
セレネはまたやや高く木剣を構えた。
(私がまた流れながら胴を斬るとタカを括っている! たいした事ないですわっ勝てる!!)
ギャーーッ!
ユーキュリーネも今度は正面から木剣を叩き落とし、二段目で面を打とうと心に決めた。
お互いが全く的外れな予想を行い、遂に激突する瞬間となった。
パシィーーーン!!
ユーキュリネイドはXSの正面に回り込む直前、歩幅を整えリズムを崩す事無く正面から木剣を上から叩き落としにかかった。
当然セレネは魔法の格子でその事にいち早く気付いた。
だが、XSの性能では完全にそれに追随する事は出来ず、両者の木剣は偶然丸い切っ先同士が激突するという奇跡的な事が起こった。
「何!?」
「つっならばっ回転して」
リズムを崩したまま突っ込んで来たユーキュリネイドの、両者こすれ合う木剣の横っ腹をはたきながら、セレネのXSは回転しスパッと胴を切り裂いた。
機体性能のスピード的にはユーキュリネイドが遥かに上だが、突然の出来事に対処する事が出来ず、地味にセレネが勝利した瞬間だった。
パーーーンッ




