お城が危ないです!b
「ああ、あれ、騎兵がっあ、あの人は? 敵ですか?? 撃ちますか?」
フルエレが魔輪を加速させて一番先頭の魔戦車まで辿り着くと、衣図ライグと砂緒と兵らが進みを止めて相談し合っていた。
そこから逃げ去る様に森に消えていく一騎の騎兵。
「嬢ちゃん撃つな撃つな味方味方。丁度良い所に来たぜ」
「あの人は?」
「あれは正規軍の伝令だ。だいぶ前から三騎目だ。やつら俺たちが実際に攻撃を開始しないとかで矢の催促だ。連中実際は半島の入り口で足踏みしてるようだ。拳を振り上げたはいいが、実際にはびびって戦闘を開始する根性は無かったようだぜ。このまま諦めて帰ってくれたら何事も無く笑い話で済む。だから俺たちも撤退するか徹底的にサボタージュしようかって相談してたんだ」
「私戦争と言えばいきなり血みどろの殺し合いが始まるのかと思って内心がくがくでした! このまま帰れればどんなに良い事かしら」
「しかし本当に何も出てきませんねえ。私の目からも周囲には何も居ません」
砂緒が多少不満そうに話した瞬間だった。日が落ちかけた空からサーチライトの様に強い光が差し込む。
「え? え!? 何何怖い怖い」
「敵襲か?」
フルエレがびくっとして左右をきょろきょろして見る。皆が口々に叫び周囲を警戒する。
「砂緒雪乃……来た……お城が大変です」
「きゃああああああああ」
突然フルエレの目の前にきらきらと光の粒子をまき散らし兎幸が現れた。
「兎幸ではないですか、どうやってここまで来たのです?」
砂緒だけは一切動じる事無く、天球庭園の館長兎幸の突然の登場に疑問を投げかけた。
「これで来た」
兎幸は空に向かって指さす。少し上を見ると、いつものUFOがふわふわ浮き、マジックハンドがロープの様に長く伸びて兎幸はそれにぶら下がり、片足をかけていた。
「おお便利ですね、私も乗せてください」
「無理だし嫌です……兎幸専用……それよりお城大変……伝えに来ました」
「城がどう大変なんだ? いいから嬢ちゃん詳しく教えてくれよ」
衣図が二人の知人だと思いだし大体状況を把握して、やきもきしながら聞いてくる。
「皆さんが出発してからしばらくして……お城の三重の城壁の三番目の城内に……トンネルを使って……敵兵が突然入って来た」
「え…………」