勝敗~やっぱり決闘だっ!
『その通りだっ、学院の魔呂研究者の彼らには、学園の魔呂実習の様子を見学してもらいたいと私が誘った!』
突然セレネ教官のXSから大声で横やり返答があった。
「なんですって? 一体何の魂胆ですの?」
ユーキュリーネは魔呂の木剣を構えながら不信感を募らせた。
『ユーキュリーネさまーがんばって!!』
『ユーキュリーネさまっしっかりっ!』
しかし今度は見守るXS25の一般生徒達が、美形学院生軍団に負けじとユーキュリーネを応援し始めた。
「そうだわ……わたくしにはこの暖かい生徒達の声援がありました……やりましょう!」
ユーキュリネイドは木剣を構え、決着を決めようとル・ツーににじり寄った。それはスナコも同じであった。
「ルンブレッタも見てる……そろそろ決着の時のようね……」
「ようね、て」
砂緒の地声女言葉に兎幸が猫呼の様に肩をすぼめた。
ザッザッザッ……
再び二機は先程と同じ様に相手を睨みながら駆け始めた。
「でやっ!!」
先手を打ったユーキュリネイドの木剣が胴を斬ろうとブンッと空を切った。しかし相手のル・ツーのスナコは事前に攻撃を予測してあらかじめジャンプしたのであった。
「覚悟!!」
ジャンプしたスナコはそのまま上段から面を打とうと木剣を振り下ろした。
ビュンッ!! バシッ
「え? なんで??」
しかし着地して振り下ろした木剣はグラウンドに直撃して空振りに終わった。
「遅い!!」
気付くと何故かユーキュリネイドは真後ろに回っていた。
「え、なんでっ!?」
パシッ!
スナコのル・ツーは恐ろしく軽やかな動きで簡単に後ろから後頭部を打たれた。
「スナコちゃん……」
「うっ残念だね」
『うおーースナコ!?』
『嘘だーっスナコが負けた』
ガックリする学院生や雪布留一味であったが、逆に学園一般生徒達は大盛り上がりであった。
『やったわーーーーーっ!』
『正義は勝つ!!』
『生徒会長万歳!!』
『ユーキュリーネさまは神よ!?』
『生徒会に入りたい!!』
全てはスナコに対する嫉妬であったが、生徒会長の剣技の上に彼女らの応援の力も加わって乗った勝利であった。
『あいやまたれい! セレネ教官は確か三本先取した方が勝ちと言っておったはずですぞ、さすれば拙者はまだ負けておらぬ!! とスナコちゃんが言ってるピョン』
シィーン
まさかのスナコのはしたない泣きの要求に一同鎮まり返った。
「あいやまたれい? スナコちゃんそんな言葉使うかな?」
ルンブレッタが首を傾げた。
「翻訳している兎の子の癖なんじゃない? フフフ」
蘭観が不気味に笑った。
『確かに……そんな事も言っていたかな?』
『エーーッ!!』
『ブーブーー!!』
『ユーキュリーネ様の勝利ですわっ!!』
砂緒すなわちスナコに大甘の煮え切らないセレネ教官の言葉に、一斉に生徒達がブーイングをする。
『よろしくってよ! わたくしは三本先取だろうが何だろうが、ウフフ』
しかしもはやスナコの剣の浅さを見切ったと余裕のユーキュリーネは、スナコの泣きの再戦要求をあっさりと受け入れた。すぐさま二機は木剣を構えて向き合った。
『はじめっ!』
パシッ!!
始まると同時に綺麗に足を進めたユーキュリネイドが、あっさりと正面から面を奪った。完全にスナコの油断というか、もはやメンタルが崩壊しかかっており、体勢も何も整っていなかった様だ。
「え?」
シィーン
鮮やか過ぎる生徒会長の勝利に声援を送る暇も無く、見ている者は唖然とした。
『二本目もユーキュリーネだな。では最後の勝負だ、始めっ!』
『わーーーっ!』
『さすがね!』
『勝ってくださーーい』
歓声の中、再び二機は向き合った。逆に静まり返る雪布留陣営は沈痛な面持ちというかもう諦めている。
「はぁはぁ……この高貴なる神に選ばれし我が負ける事など、あってはならぬのだっ! 負けぬ負けぬぞお、くふくふくふふふふ」
負け続けに焦りまくるスナコの目はイッていた……
「スナコそれ、ド悪役の台詞やないかっ!」
思わず兎幸にまで突っ込まれるスナコの狼狽ぶりであった。当然機体の外側から見ても相手のユーキュリーネにもそんな搭乗者の混乱状態はまるバレであった。
「ふふふ、スナコちゃん可哀そうだけど、もはや剣先がブレブレですわ……此処までこれただけでも立派な物ね……」
と、そんな時であった。
フィーーーンフィーーーン!!
突然ル・ツー千鋼ノ天の片腕と胴体が妖しく紫色に光り始めた……
『スナコどうしたの!?』
『スナコなんか機体が変になってるぞ!!』
「スナコちゃん大丈夫!?」
『まさかあの時の力か??』
雪布留一味からは次々に心配する声が。
「ふぅーふぅー、勝たなくては!」
「スナコ大丈夫??」
と、兎幸が心配した直後であった。
「おかしな光を出す!! 何かある前にっ討つっっ!!」
パシィーーン!!
妖しい光を発し始めたル・ツーに躊躇する事無く、ユーキュリーネが先手を打った。木剣が胴を打った直後、ル・ツーの妖しい光はフッと消えた。
『三本先取、ユーキュリーネの勝ち!!』
『キャーーーッ!』
『おめでとう御座います!!』
『我らの生徒会長よーーっ!』
セレネの声の直後、生徒達がやんややんやと賞賛した。
「負けたわ……」
「よしよし」
スナコのル・ツーは力なくその場に崩れ落ちる。兎幸はスナコの頭をなでなでした。
『スナコ……大丈夫か?』
ミラが小さな声でスナコを勇気付けようかとした時、突然セレネが声を上げた。
『今日の剣技実習の勝者はユーキュリーネくんとなった。そこでその彼女に教官である私から決闘を申し込む!!』
ビシッと竹刀をユーキュリネイドに向けてセレネは宣言した。授業中に教官が生徒に決闘を申し込む、異様な事態に生徒達はまたも静かになった。




