観覧者たち……
『うおースナコがんばれーっ!』
『そんな奴ブチ倒したれっ!』
カシィーーン!
ミラとジーノだけが声援を上げる中、ル・ツーとユーキュリネイドの木剣同士が切り結びあった。
ギリギリギリ……
すぐに二機は接近して鍔迫り合いを始める。
「ぐっさすが見掛け倒しではなくて、そこそこのパワーがある感じですね」
「スナコちゃん負けないでっ!」
操縦桿を握り魔力を供給する兎幸は必死に声援を送った。
『むっ急場で手足をくっ付けた割りには、なかなかしっかりしてますわね』
バシッ!
二機は同時に相手を弾き飛ばした。
ザッザッザッ
互いに間合いを図り睨みながら横走りを続ける。
「おおっ宮本武蔵と佐々木小次郎の試合みたいですな、ぴょいんっと飛んでみましょうか」
「え、ダレ?」
「でえいやっ!」
スナコのル・ツーは何の脈絡も無く、思い切りジャンプして上段からの面打ちを決めた。
パシッ!
しかし簡単にユーキュリーネに弾かれてしまう。
「何の真似ですの? あれなら簡単に胴を取れましたわ。わたくし警戒し過ぎてましたわ、案外弱い子なのかしら?」
ユーキュリーネは言うと、ワザと木剣を下手に構えて上半身に隙を作ってみた。
「よし勝機、もっかい飛んでみよう!」
「ダメーーッ! スナコちゃん完全に誘っているよ罠だよ」
「え、そうなの?」
スナコは思わず飛びかけて、しかしそのまま後ずさりした。
『ふふ、やはりそんな簡単な手には乗りませんか』
『ピッピーッ! 互いに警戒し過ぎない、もっと積極的に打ち込んで!!』
直後にセレネからの指導が入る。両者機体の能力も操縦者の技量も高く、それまでの生徒達の様にパンパン打ち合う感じにならない。
「ちっ仕方ない、取り敢えず打ちまくります、えりゃーーーーっ!!」
ビシッ! バシッ!
スナコは積極的な連続攻撃に転じた。しかしそれもユーキュリーネが次々と弾き返して行く。
『どっちが体力が持つか何時間でも打ち合いましてよっ!』
勝気な貴族として女だてらに幼い頃より剣術修行を続けて来たユーキュリーネは、付け焼刃の砂緒よりも数段強いというのが実際であった。彼女は段々とスナコの剣筋の単純さを見極め掛けて来ており、いつ相手を倒そうかという余裕さえ出て来ていた。
ファッファーーッ!
と、そんな状態の最中、突然気の抜ける様な魔車のクラクションが鳴った。
「間に合った――っ! おおーーい! スナコちゃーーーんがんばれーーーっ!」
皆の視線が声の方に向くと、グラウンドの端っこにはアメ車みたいな派手でクラシックなオープン魔ーが停車しており、そこには例のユティトレッド魔導学院生達、セレネの幼馴染のラフィーヌと美形騎士的なアルピオーネ、ムードメーカで年齢より幼く見える美青年ルンブレッタ、さらに運転手として変人美形蘭観も来ていた。ちなみにアスティーは今回も放置されていた。そのルンブレッタがスナコのル・ツー目掛けて必死に大袈裟に手を振りまくった。会場内は突然現れた美形軍団に騒然となったが、その一人の少女の様にも見える美形ルンブレッタが必死にスナコの名前を呼ぶ事にゲンナリした。
『え、どういう事ですの?』
『あの美形のお兄様方はスナコさんのお知り合いですの?』
『どうしてあんな子があんなイケメン達と知人関係なの?』
『どうやったら男の子と友達になれるの!?』
『いやーーっ!! 私にはあんな彼氏いないのにっ』
『許せないわっあのスナコとかいうブスッ! 私の方が可愛いのに!?』
『皆でユーキュリーネ様を応援するのよっ!』
『ユーキュリーネさまああああ!!』
突如、一般生徒達の心が一つとなった。その気持ちはあたかも元〇玉の様に見えないオーラとなって生徒会長ユーキュリーネの背中を優しく押した。
パワワワワ……
『何なの!? 今までに感じた事も無い、なま暖かい力が私を包み込んで行く!? これが信頼の力!?』
多分全然違うが、ユーキュリーネはどんどんとパワーを増して行く。
「ちょっヤダッやめて恥ずかしいよルンブレッタ!」
「もーっスナコちゃん地声でその台詞は恥ずかしいよ~~気持ちわるぃーーい!」
その逆にスナコは妙な気恥ずかしさに包まれる。
「もちろん冗談でゴザるよ。私はおっぱいにしか興味が無い健康な男子。ルンブレッタ等に心は動きません! そうだ、兎幸ちょっと景気付けに乳見せて下さい」
「うん、いいよーっ!」
言われて躊躇無く兎幸は可愛いテニスウェアの様な上着をぐいっと脱ごうとして、真っ白い可愛いお腹とおへそがチラ見えする。
「やめい! 冗談に決まってます……危ない危ない。操縦桿から手を離してどうする」
「あ、ごめんごめんエヘヘ」
兎幸の可愛いお腹は丸見えのままになった。
「ちょっと貴方達、此処は授業中のグラウンドですよ!」
直ぐに手持無沙汰の熱血女教師が飛んで行って注意するが……
「あ、いえセレネちゃん、いやセレネ教官に許可取っていますよ!」
「え?」
ラフィーヌは笑顔で答えた。
お読みいただいてありがとうございます。
設定5月1日更新
主人公3人
砂緒 元現代日本のデパート建屋だったが、魂が発生し百年後に崩壊してセブンリーフに異世界転生して来た。硬くなる重くなる電気が出るなどの地味スキルを持つ。中程度の怪力で特に強く無い。気分次第で異常に完成度の高い女装スナコちゃんに変身する。またその場合ホワイトボードで文字会話する。
雪乃フルエレ ヒロイン①【海と山とに挟まれた小さき王国】の 夜宵姫 だったが家出して色々あってセブンリーフ大同盟の女王になってしまった。金髪の天使の様な美少女。魔導学園では 雪布留と名乗る。性格は割と普通の女の子。
セレネ ヒロイン②ユティトレッド魔導王国王女で髪の長い美少女だが異常に強い魔法剣士。最初嫌悪していた砂緒に猛アタックされフィアンセ同然になる。フルエレを女王に推挙した張本人。討伐部部長。魔呂学科の教官も務める。
ユティトレッド魔導学園関係者
ミラとジーノ セレネの子分兼大切な友達。
ユーキュリーネ・カナルト・ヒューゴー 生徒会長でユティトレッド重臣の娘。
ルシネーア 生徒会書記でユーキュリーネに心酔している。
リュディア・セリカ 魔呂学科生。元敵方トリッシュの市民で学園に推薦転校して来た庶民的な子。
ユリィーナ 魔呂学科生。剣の腕に覚えがある生徒。
熱血眼鏡女教師 一見清楚な女教師だが教育の為にはおかしくなる事も。
サトー スナコの隣の席の目立たない生徒。(非魔呂学科)
学園長 ユティトレッド魔導王国の現王でセレネのおじい様。立派な長い髭がある。
マイヤー 片眼鏡の才女で学園長(国王)の信頼できる部下。魔呂部隊も管理している。
ユ魔導学院関係者
ラフィーヌ・ビュートッエ 美形で真面目な熱血学院生でセレネの幼馴染、影が薄い。
アルピオーネ・マーチェラ 美形で少しキザな金髪青年。雪布留に接近しようとする。
ルンブレッタ・スーヴェテ 年齢より若く見え可愛い女の子の様な外見をしているがちゃんと男。スナコに一目ぼれする。
アスティ・ティーニ 長身で筋肉がある美形俺様キャラ。
蘭観・ファーラル 美形だが変人でメカや薬品好き。
教授 ダンディなイケおじで生徒を暖かく見守る。
仲間
依世 雪乃フルエレの妹。 美柑 と名乗り紅蓮と冒険者をやっていた。探していた姉、夜宵姫・フルエレと遂に再会したが喧嘩が絶えない。
猫呼クラウディア 東の地(中心の洲)クラウディア元王国の元王女。失踪中の兄猫名を探してフルエレ達の仲間になった。今は闇ギルドの頭目をしている。背の低いおしゃまな付けネコミミ少女。
兎幸 うさこ。リュフミュラン天球庭園の氷の博物館の館長。月で魔改造されて微妙に成長した。魔ローダーで補助機能になったり砂緒の女装に協力したりする心強いサポート係。
イェラ 元女戦士の褐色の背の高い美人。厨房で料理を作っている。麺料理屋台のチェーン展開するという野望を持つ。口数少ない性格だが砂緒の事が好き。
メラン 元魔導士の冒険者だったが、フルエレ砂緒と知り合い同盟軍の魔ローダー搭乗者になった。二人が居ない時は一応魔呂部隊の責任者となっている。ル・ツー千鋼ノ天に速き稲妻Ⅱと勝手に命名していた。
シャル 猫呼の部下闇ギルド員でボディーガード。腕がぐんぐん伸びる。
イライザ 喫茶猫呼店員。ぜんぜん意地悪く無い普通の子。
ニィル イライザの兄で元浪人であったが砂緒セレネに拾われ新ニナルティナ軍幹部に。
有未レナード公 旧ニナルティナ王国の軍師だったが、ポンコツで無害だったので新ニナルティナの代表に選ばれた。雪乃フルエレ女王を盛り立て、東の地【神聖連邦帝国】との関係に悩む。
ウェカ王子 ラ・マッロカンプ王国の王子。御幼少のみぎりに幼稚園留学生として出会った依世に一目惚れしたが、彼女の裏の仕事を目撃し魔法を撃たれ死に掛けてしまった。
メア ウェカ王子の理解者でセクシーなメイドさん。しつこいくらいに玉の輿をねだる。
芹沢老人 喫茶猫呼の常連の老人で行商をしていた。
まおう抱悶 可愛い熊耳の美少女だが恐ろしい魔力を秘める。砂緒と知り合った関係で雪乃フルエレ女王と大同盟を組む事となった。
神聖連邦帝国(東の地・中心の洲)
姫乃ソラーレ 聖帝の娘で紅蓮の姉。雪乃フルエレと全く同じ顔声をしている。清楚な美女だが多少の武術の修行はしている上に魔力も高い。常に帝国と民の平安を願う聖女。
紅蓮アルフォード 【神聖連邦帝国】第二百十二代聖帝の息子。西の島、セブンリーフに単身まおう討伐を命じられて渡って来たが、美少女美柑(依世)と知り合い篭絡され、なかなか討伐する気が起きず、いつもブラブラしている。実は劇中一番強い人物だがなかなか本気で戦わない。爽やかでイケメンで真面目な風情に反し、実は人一倍女の子に興味があるムッツリスケベ。
瑠璃ィキャナリー るりぃきゃなりー。神聖連邦帝国四旗機 桃伝説 の搭乗者であったが、紅蓮のサポートとしてセブンリーフに渡り行き倒れ、ウェカ王子に助けられ以降居候になる。かなり強い騎士だが、当地と故郷の間で悩む事になる。モデルは船〇リリィ。
貴城乃シューネ たかぎのシューネ、神聖連邦帝国重臣で主人公達と度々戦う。
猫弐矢 猫呼の兄(次男)でクラウディア王国現当主。父王である大猫乃主を失う。
猫名(三毛猫仮面) 猫呼の兄(長男)で国を飛び出し各地を放浪し三毛猫仮面となる。七華を狙うも砂緒に敗れ各地を転戦、今はまおう軍に所属しスピネルと名乗る。
魔法メカ・ロボット
魔ローダー 全高25Nメートルの騎士の鎧、プレートアーマーをそのまんま巨大化した様な、魔法力で動くロボット。魔法や物理等殆どの攻撃が効かず、魔ローダーの魔法エネルギーが乗った剣攻撃しか効かない。
蛇輪、日蝕白蛇輪 へびりん、ひばみはくじゃりん。砂緒とフルエレとセレネが交代で乗る主役機。劇中唯一の複座型で、表面は鏡の様なテカテカのメッキ調の銀色で、装甲各所に金色の華麗な装飾が施され非常に成金趣味な見た目をしている。頭部に蛾の触覚の様な巨大な二本の角があり、背中にはド派手な巨大な羽を背負い鳥型の飛行形態に変形出来る。実は砂緒の前世の前世、【等ウェキ玻璃音大王】が、ル・スリー白鳥號を参考に真似して作った機体。両手の尖った爪で突き刺した対象からスキルや能力をコピーする事が出来る。また砂緒の能力で巨大化したり強力な雷攻撃を発したりも出来る。
ル・スリー白鳥號 はくちょうごう。【まおう抱悶】の先祖である【王永嶋フィロソフィー王】が搭乗していた純白の機体。蛇輪に似ているが、よりヒロイックな形状をしている。古代にクラウディア王国で建造された。今は 【千岐大蛇】(チマタノカガチ) 退治の時に紅蓮が偶然入手し扱いに困惑している。劇中最強の機体で数々の魔ローダースキルが隠されている。かつてセレネと砂緒が制作させた【最強の魔法剣】を偶然所有しているが、標準装備の【魔法の刃の剣】も使用出来る。
ル・ツー千鋼ノ天 る・つーせんはがねのてん。猫呼の実家、東の地(中心の洲)【クラウディア王国】の旗機であったが、【神聖連邦帝国】に服従した時に彼女の兄【猫名】が乗り逃げしてしまった。その後【三毛猫仮面】と名乗った猫名がセブンリーファで暗躍して搭乗していた。その後雪乃フルエレに負け鹵獲され同盟の副将機となっていた。濃い紺色の機体に頭部に長大な一本角があり全身が鋭角的に尖っている。
一般機体
XS25 学園生徒達が授業で乗る最弱機体。
SRV 同盟の量産型機で青や赤、緑などの派手なツヤツヤ塗装。
SRV2ルネッサ 王女セレネ用カスタム機体。
SRX 同盟軍次期量産用試験機。
ユーキュリネイド 生徒会長ユーキュリーネの家に伝わる純白の貴族な機体。
ゴレムーⅡ 書記ルシネーアの家に伝わるそれなりな機体。目立たない様に茶色い。
VT25スパーダ かつて伝説の等ウェキ玻璃音大王が若き日搭乗した百年前以上の機体。




