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雪布留さん組打ち……


『あうっユーキュリーネさんの魔ローダーすっごく強そう、怖い……スナコとやりたいな』

「じゃ、そうハッキリ言いにゃさい!」


 雪布留は今度は蛇輪の上下操縦席機体内だけの秘匿通信を行った。


『じゃあそういやいいじゃないですか!』

『あんな奴無視してやるっスよ!』

 

 下の操縦席からミラとジーノもけし掛けた。確かにユーキュリーネのユーキュリネイドは見掛け倒しでは無く、操縦者の彼女自身の技量とも相まってXS25よりはかなりの強さだったが、恐らく同盟旗機の蛇輪よりかは数段劣る凡庸な機体だろう。


(あうっ困りましたね……)


 こういう時直接ユーキュリーネ相手に声が出せないスナコは困り物だった。二機はしばし雪布留の蛇輪の前でどちらが相手か選べと前に身を乗り出す動作を繰り返した。それはあたかも舞踏会でダンス相手に自分を選べと言っている場面の様でもあった。


『ピッピーーッ! いや二機とも遠慮して頂こう。名有り機体はまずは通常のXS25乗りの生徒と組んで欲しい。当然雪布留さんもXS25の相手をして欲しい。殺し合いでは無いのだ、XSに乗る諸君も恐れずこの方々に相手してもらうんだ、通常の練習よりも得る物があるはず』


 揉めてる様子を見て、笛を吹きながらセレネが指導を入れた。


『待って下さい、何でそんな事を勝手に決められるのですか?』


 早速ユーキュリーネが抗議する。


『教官だからに決まっておるだろうがっ! それにそっちの方が面白いに決まっている』

『面白いですって? 不真面目ですわっ!』

『また生身で腕立てさせられたいか?』

『くっ』


 プツッと通信は切られた。


『私、ユリィーナと申します。雪布留さんよろしければお相手を!』


 と、一瞬ぼーっとしている雪布留の蛇輪の前に、一機のXSが近付いた。とても勇気のある行為であった。


『え、は、はい! お手柔らかに』


 実は内心腕に覚えがあるユリィーナが、少しお金持ちで鼻持ちならないと思っている雪布留をギャフンと言わせてやろうと相手に名乗り出たのだ。それと同様に渋々とユーキュリーネのユーキュリネイドやルシネーアのゴレムーⅡ、スナコのル・ツー達もXS乗りの普通の生徒の相手が決まった。


『ど、どうしよう……どなたか……お相手を』


 どうやら一人あぶれたリュディア・セリカが左右を見ながらあたふたしていた。


『まあ庶民の癖に壊れた魔ローダーに乗って来て』

『元敵方で魔呂も敵だったメドース・リガリァ軍の物らしいですわ!』

『何でも拾って修理したとか』

『庶民らしいですわっ』


 既にパートナーが決まった生徒達は、口々にリュディアの陰口を言い合った。


(むむっあの子、乙女ゲームのプレイヤーキャラもしくはサポートキャラみたいな境遇ですなあ)


 彼女の百年以上経つ古ぼけた機体VT25スパーダも一応名有り機体という事で、スナコのル・ツーは組む事が出来なくておろおろするしか無かった。


『よーし、リュディアくんはせんせいが組んでやろう!』

『は、はいお願いします!』


 一人あぶれたリュディアのスパーダの前に、竹刀を持つセレネのXS25が立った。もちろんこの機体も特にチューンナップ等されていない通常の機体であった。


『よーし、全員相手が決まったな? それではまずは相手を見ながら素振りの練習だ、手を抜かずしっかりやれ!』

『はいっ!』

『はいっ!』


 真面目なセレネはまずは素振りや面打ちや籠手、胴の練習を何度もやらせた。ユーキュリーネも内心バカにしていたが表面上は仕方なく真面目に付き合うしか無かった。



『ピーーッ! よしそろそろ身体も暖まって来たか?』

『教官、もういい加減実践的な訓練をしてみたいですわっ!』


 遂にユーキュリーネが不服を口にした。


『わ、私も!』

『私も実践的に戦ってみたいです!』

『私もっ!』


 しかし今度は他の生徒達も口々にユーキュリーネに同調した。別に彼女が仕込んだ訳では無く、何度かの実習を繰り返し彼女たちも戦いたくてウズウズしていたのであった。


『よし、そろそろ良いだろう! じゃあまずはデモンステレーションとして、雪布留さんの蛇輪とユリィーナくんか? 二人で軽く対戦してみて欲しい』


 突然蛇輪の雪布留が指名されて、拍子抜けしたユーキュリーネであったが、雪布留本人は寝耳に水であった。それに対して腕に自信があるユリィーナは武者震いがした。


『え~~~何で? 怖いよーー』

『は、はい! 頑張ります!!』

『雪布留さん早く! ユリィーネくん蛇輪は見た目通り高い機体なので壊したりしない程度で頼む』

『はい! ふふ、雪布留さんお願いします!』

『はい……お手柔らかに』


 仕方なく蛇輪はおずおずと前に出て来た。

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