全員魔ローダー騎乗!
「はぁはぁ教官、五周走ってきましたわっ!」
人用グラウンドを5周走った生徒会長ユーキュリーネと、3周走ったルシネーアがほぼ同時にセレネ達の元に戻って来た。
「よし、良く走ったな休め!」
「ふぅはぁ……覚えてらっしゃい?」
ユーキュリーネは肩で息をしながらセレネ教官を睨んだ。
「……私語禁止だ、腕立て20回!」
「なんですって!?」
しかし腕立て20回という所が良心的であった。ユーキュリーネは渋々腕立てを始める。
「しっかり腕を曲げて地面に顔を付けろ!」
「ぐっ……」
生徒会長は屈辱に耐えて腕立てを続けた。
「よし、では我らも人用グラウンドを3周する!」
「え~~~!?」
「いつになったら魔呂に乗るのですか?」
「もうしんどい……」
一斉に生徒達から口々に不満が漏れる。
「セレネ、いい加減に魔呂に乗らないとダメよ? そうだわ、魔呂に乗って走ったり腕立てしたりすれば良いんじゃない!?」
『そうです、早く魔呂に乗らないとダメです。これ以上命知らずな事は止めて下さい』
バシバシッ!
血相を変えてセレネは竹刀で地面を叩いた。
「それはダメだっ!!」
でないとトッ〇をね〇えと同じになってしまう……
「でも3周もしんどいにゃ~~」
「兎幸は大丈夫だよ!」
「そうよ、猫呼と私は1周にしてあげてっ!」
「ダメです、何自分まで一周に……」
「駄目よ、私と猫呼は1周でっ」
雪布留はサングラスのセレネを強く睨んだ。
「うっ……成長期の猫呼先輩の体力を考え、保護者の雪布留さん共々一周とする、さぁ走れ!」
「エーーー!?」
一斉に不満の声が上がったが、再びセレネは竹刀をバシバシと叩いた。
ザッザ、ザッザ
生徒達約30名はセレネを先頭に走り出した。
「魔ロダー乗り方教えよか?」
「魔ロダー乗り方教えよか?」
ザッザ、ザッザ
「操縦桿握って動かせよ」
「操縦桿握って動かせよ」
ザッザ、ザッザ
「兄さん一緒に乗りましょう」
「兄さん一緒に乗りましょう」
『なんか卑猥ですね、何ですかこの掛け声?』
スナコは近くの少女にボードで器用に語り掛けた。既にフルエレと猫呼は走り終え休憩している。
「さぁー?」
「ゴム跳びじゃない?」
「そこ、私語を慎め! 追加されたいかっ!」
「すいませんイエッサー!」
ザッザ、ザッザ
「知らんけど!」
「知らんけど!」
ピーーーッ!
3周走り終え、セレネの笛が鳴った。休憩していた雪布留と猫呼とユーキュリーネも合流して再び整然と一列に並んだ。
「よーし、次は柔軟体操でも……」
「セレネ教官、いい加減になさい! もうそろそろ魔呂に乗りましょう」
再び雪布留が怖い顔でセレネを睨む。
「……む、そ、そうだな、そろそろ乗るか」
その瞬間、生徒達は雪布留という謎の少女とセレネ教官のよくわからない上下関係を悟った。
(やはり雪布留さんは雪乃フルエレ女王陛下なのですわ……)
ユーキュリーネも厳しいセレネ教官の雪布留への甘々な態度に確信した。
ピーーッ!
「それでは、全員速やかに魔ローダーに騎乗! 0.5秒で乗れ!!」
セレネ教官の声で生徒達は一斉に魔ローダーに乗った。乗ると言っても最初から直立している機体と、跪いている機体とがあったのでオートで乗れる者はいち早く乗り、そして乗り込んだ魔呂から手に乗せてもらったりして立っている機体に生徒を上げたりした。そんな調子でスナコと兎幸も他のXS25の手助けで、ル・ツー千鋼ノ天の中に乗り込んだ。
「兎幸、私の膝の上に乗って操縦桿を握って下さい!」
「うーん!」
何の躊躇も無く、ブルマー姿の兎幸はぽんっとスナコの膝の上に乗った。むにっと兎幸の少女の柔らかいお尻とふとももの感覚が砂緒の足に伝わる。
「うっ柔らかい……」
「えへっ」
兎幸は笑顔で振り返り無邪気に笑った。
(うっ忘れてましたが、兎幸可愛い……このまま後ろから抱き締めたい!! う、イカンイカン)
スナコは首を振った。それでは授業所では無くなる。
「どうしたの?」
「兎幸、魔法モニターが見えないので、後ろで立って操縦桿に手を添えて下さい……」
「えー? ブーブー!」
等と抗議しながらも素直な兎幸は命令通り後ろに中腰で立った。
一方雪布留の複座の蛇輪の操縦席には、最初からミラとジーノが隠れて乗っていた。
『雪布留さん、授業に潜り込ませてくれてありがとうス!』
『憧れの魔ローダー実習に出れて感激っス!』
『うふふ、喜んでもらえて良かったわっ!』
ーそんな感じで数分後。
雪布留の蛇輪には猫呼とミラとジーノが乗り、ル・ツー千鋼ノ天にはスナコと兎幸が、ユーキュリネイドにはユーキュリーネが、ルシネーアはゴレムーⅡという機体に、そしてリディア・セリカはスパーダに、その他の生徒達は皆XS25に乗り込んだ。
「遅い! 0.5秒で乗れと言っただろーがっ! 突然の敵襲では誰も待ってはくれんぞ!」
セレネ教官は怒鳴った。




