ユーキュリネイドですわっ! ‐
ー遂に魔ローダー実習当日。
「雪布留さんブルマに体操着姿、案外似合ってますね」
『そう思います』
「そうかしら、うふふ」
セレネが言うと、雪布留は嬉しそうにくるりと回転して金髪をふわりとなびかせた。
「でもセレネの格好が謎過ぎよ」
猫呼が言う様に、セレネも生徒と同じくブルマに体操着だが、その上から派手な金モールが多数付いた真っ白いミリタリーなグループサウンズ風のジャケットを羽織り、さらにその上から海軍士官の様な帽子を斜めに被って、さらにギラギラのミラーなティアドロップサングラスを掛け、その上竹刀まで握っていた。
『セレネ、それは一体何のフェティシズムに対応した物ですか?』
「交通渋滞が酷いにゃー」
バシッ!
セレネが女子プロレスラーの様に床を叩く。
「生徒に舐められちゃいけないからな」
「そこまでする必要ある?」
『余計舐められませんか』
バシッ!
再び床を叩いた。
「ではそろそろ授業の集合時間だ。それぞれ各々の魔ローダーを持って第一魔呂グラウンドに急いでくれ。対面した時は教官と生徒という立場を忘れるな!」
『ラジャッ!』
「わかったわ!」
「にゃー」
「ぴょん」
それぞれ適当に返事をして移動を開始した。
ー魔呂実習開始時間。生徒約三十名は各々の魔ローダーを後ろに並ばせ、その上で教官セレネが立つお立ち台の前に整然と列を作り並んでいた。その横には雪布留の担任の熱血女教師の姿もあった。
「ちょっとーあの子なんでブルマじゃ無くて上下ジャージにスカートまではいてんの?」
どこからとも無く声が上がった。今回はクラスの垣根を越え、魔ローダー適性のある生徒が集められた大規模合同実習なので、スナコの事情を知らない生徒も複数居た。途端にザワザワとざわめき始める。
(うっ困りましたね……)
砂緒はまさかブルマを履く訳にも行かないので困り果てた。
「ちょっと皆さん静かになさい! あーあー雪布留さん、事情説明をしておやりなさい」
その様子を見て、代表して出ていた雪布留クラス担任の熱血眼鏡教師が彼女に指を差した。
「え、え? 私!?」
雪布留が突然の指名にキョロキョロする。
「いえ、それは教官であるあたしの口から。彼女はスナコちゃんと言って、幼き日に家族諸共邪竜に襲われてな。数々のスキルを得た代わりに素肌を見せてはいけない呪いに掛かったのだ」
また適当な事を口走るセレネ教官であった。
「へ、へー?」
「邪竜って?」
「呪いって何よ」
しかしそれが逆にさらにざわつかせる結果となった。
「あのーーーついでに、何故ウサミミとネコミミの子が並んでいるのですか? 明らかに生徒じゃないですよね」
今度は他の生徒が恐る恐る聞いた。ちなみに兎幸と猫呼はちゃんとブルマに体操着を着用している。
「猫呼は私の荷物運び娘なので常時離れられないのよ!」
ザワッ
転校当日と同じ様に雪布留の不適切発言によってざわめきが起こる。
「にもつはこび娘?」
「え、なにそれ??」
キュキュッ
『万能サポートメカの兎幸は、魔力の無い私と合体する事によって魔呂を動かす事が出来る様になります』
「はろ~~!」
兎幸は笑顔で両手をぱたぱた動かした。
「合体しちゃダメ」
「先程も言ったが邪竜に襲われた為に魔力の無いスナコは、魔法自動人形の兎幸先輩と一緒に魔ローダーに搭乗する事になる」
ざわっ……
「えっ? 邪竜に襲われたから魔力が無い??」
「意味が良く通ってないわ」
「魔法自動人形??」
「兎幸先輩??」
セレネと雪布留は事あるごとに邪竜邪竜言い過ぎて、その内容はどんどん適当になって来ていた。
「うむ、それでスナコくんは後ろのル・ツー千鋼ノ天という魔ローダーに乗るのだな? なかなか立派な機体ではないか……」
セレネ教官はワザとらしく感心して、後ろに立つル・ツーを見上げた。
『はい! 兎幸と合体して乗ります!』
「合体しちゃダメ」
間髪入れず突っ込む雪布留であった。
「で、雪布留さんはその横に立つ銀色の謎な魔ローダーに乗るのですかな?」
「はい!」
セレネが言うと、生徒達は振り返ってギラギラ派手に輝く成金趣味の蛇輪を見上げた。
「んもーーーーっ! ちょっと待ちなさいよ、いつまでこの生徒会長であるユーキュリーネを無視しますの!?」
クラス合同魔呂実習である今回は、他クラスの同じ二年生である生徒会長ユーキュリーネ・カナルト・ヒューゴーの姿もあったが、セレネ教官は徹底的に無視していた。
「なんだ居たのか?」
「なんだ居たのか? じゃ無いですわっ生徒の皆さま、我が家に伝わる栄光の魔ローダー、ユーキュリネイドの紹介をまだかまだかと待ちわびていますわっ!!」
確かに蛇輪の次に純白の貴族趣味的な生徒会長の魔ローダーは非常に目立っていた。
ユティトレッド魔道王国・地図




