お城が危ないです!
「よし行けっ! 肉○戦車隊よ!」
「意味は良く分からないが、変な名前付けねえでください隊長……」
対して砂緒はフルエレが一緒な為、村の住人とは特に念入りな別れなど告げる事も無く、普段の挨拶の様なあっさりな別れで、早速魔戦車の砲塔の上で仁王立ちになり腕を組んでいた。
砂緒とたった一両の魔戦車隊が先頭を進み文字通り敵攻撃の壁になり、次にライグ村の義勇軍そして最後尾にフルエレの率いる冒険者部隊や一般の村民からの有志の参加者が混じっていた。
この村初めての対外遠征だった。魔戦車には定期的にフルエレが触れて魔力を注入する事になっている。
「よ~し、全軍ノロノロ出発だ!」
巨馬に跨る衣図ライグの力の抜けた掛け声で全軍が本当にゾロゾロと出発した。
ライグ村の混成部隊はいつぞやの戦闘の舞台となった荒野を横切り、いつもはニナルティナ側が侵攻ルートに使って来る森の山道を西に慎重に向かう。
衣図の読みでは北の半島にリュフミュランの正規軍が入り込んだ時点で包囲する為に、ニナルティナ軍主力も実は北に集結している……という推測をしている。
つまり慎重に北上すれば、ニナルティナ軍の後背を突けるという計算だったが……。
「どこまで行っても猫の子一匹いやせんね~」
ラフが多少びびりながら衣図に問いかける。
「本当に誰もいやしねえな。俺たちがまさかこのままニナルティナの村や街や港湾都市の大都会に侵入して襲う訳にもいかねえし、まあずっと国境沿いの山なみを北上しているのもあるがな。確かに何の反応も無い」
ふっと目をやると、森の中から煌びやかな騎兵が一騎だけ現れた。
敵軍では無く味方のエンブレムを付けている。どうやら正規軍の物見や伝令の様だった。騎兵は衣図ライグに駆け寄って来た。
―冒険者部隊。
「もう半日以上歩いてて日も暮れかけなのに、全く戦闘らしい戦闘も無いですね。結構どきどきしながら付いて来たんですが拍子抜けですよ」
アレスという冒険者のリーダー格らしい青年がフルエレに話しかける。
背中に剣を差し盾を持った典型的な冒険者スタイルで攻撃魔法も防御魔法も使えるらしい。ちなみにアレスはかっこ良いので名乗っている名で本名では無い。
「わ、私も実は行きがかり上隊長してるだけで、本当は戦争の事何も知らないのよ。だから結構不安なの……どうなってるのかしら~~あはは」
引きつりながら頭に手を当て笑うフルエレを見て不安になるアレス。
「だとすれば先頭の隊列に合流して、大将さんや砂なんとかさんと相談して来て下さい。冒険者部隊は僕が隊列を見ておきます」
年下で尚且つ能力が未知数の女性のフルエレが隊長という時点で、ちょっと不満であったアレスは状況が不明な事もあり、かなりムッとし始めていた。
「は、はい、行って来ますっ!!」
一応部下に命令されて慌てて先頭に走って行くフルエレだった……