ドキドキの魔ローダー学科実習!
しばし人々は大暴れして去って行った生徒会長、ユーキュリーネの余韻に浸り誰も喋り出さなかった。
「……フル、雪布留さん有難う……でもあれでは私が強権振るう事と余り違わない」
「いいじゃない! 私は砂緒と違って貴方をえこひいきし倒すつもりよ! でないと、喫茶猫呼の支店が開店出来ないじゃない」
パピヨン雪布留は胸を張ってセレネは軽くコケた。
『雪布留!』
しかしスナコはビクッとして警告の視線を送った。彼は今微妙な立場だったからなおさらだ。
「雪布留さん!」
「あっ」
セレネもハッキリ砂緒と言ったフルエレをたしなめて、彼女はハッとして慌てて口を押さえ周囲を見た。もちろんそんな細かい部分など気にしている者は殆どいない。
(素直? 誰だそれ)
しかしルンブレッタは目ざとく謎の名前をはっきりと聞いていた。
『じゃあ私達もそろそろ学園に戻るわ、いろいろと有難うルンブレッタ』
スナコはそんな彼を知ってか知らずか、話題を換えようと別れを告げた。
「うん! スナコちゃんもまた会おうね」
言われて振り返り、一瞬スナコはセレネの怖い顔を見てから恐る恐る書いた。
キュキュッ
『え、ええ、またね』
「えへへ!」
途端にフルエレ一味はなんと言って良いか分からない気まずさが漂う。
「そう、セレネもまた会おうよ!」
「ああまたな」
「では、雪布留様もご健勝をお祈り申し上げますよ」
「うふふでは」
等とそれぞれが綺麗に別れを告げ、一行はユティトレッド魔導学院から同、ユ魔導学園エリアに戻って来た。
ガシャーンガシャーン
当然修理が完成したル・ツー千鋼ノ天も兎幸と猫呼が搭乗したままついて来ている。
「取り敢えずル・ツーはメランさんにバレ無い様に此処に隠しておこう。私から同盟軍の適地に送るつもりだ」
「あんたも意地悪ねえ、メランに上げちゃえばいいじゃない!」
「上げるって玩具では無いのですから。そんな事よりスナコ、お前後で尋問な!」
『な、何の尋問ですか?』
スナコがまたビクッとする。
「分かってるだろーがっ、何できっぱり永遠の別れを告げなかった? また会うとか正気か?」
「ちょっと許して上げて社交辞令よ、ねえ?」
雪布留が庇ってスナコに聞いた。
『え、ええまあ……』
スナコの目はグルングルン激しく泳いでいた。と、そんな直後……
「雪布留さーーーーん! スナコさーーーーーん! 逃がさないわよーーーーっ!」
遠くから二人を呼ぶ大声が聞こえてくる。
「ゲッ先生だわ!? また私を軟禁するつもりねっ」
『軟禁って人聞き悪いです』
「雪布留さんがいつもいつも授業中寝てるのが悪いんでしょ」
等と言っている間にもズドドと砂埃を上げて女教師は走って来る。
「と、とにかく私魔輪で逃げるから!?」
と、言った直後。
ピシュッ!!
突然ワープしたくらいの速さで女教師がガシッと魔輪のハンドルを掴んだ。
(速い!?)
とてつもない実力者のセレネにも気付かれない程の速さで登場した女教師に皆がビクッとした。
「ヒッッ!? せんせいっ何??」
「やっと捕まえたわっ!! 今度こそ逃がさないわよ~~~!!」
女教師は眼鏡をキラリと光らせて魔輪のハンドルをガシッと掴んで離さなかった。
『先生、雪布留が問題児なのは分かりますが、軟禁はご勘弁を』
余りの迫力に学園では大人しいスナコが雪布留を弁護した。
「へっ? 軟禁って何よ、プリントよプリント! 今度の魔ローダー実習の日取りが決まったから、そのプリントを渡しに来たのよ。貴方達直ぐに帰っちゃうから……」
とぜえぜえ言いながら、先生はカバンからプリントを取り出してスナコと雪布留に渡した。
「ああ、そう言えば来週にまた魔ローダー実習があるのでしたね」
セレネが他人事の様に言った。
「セレネさん貴方メインで教官してるのに、いい加減じゃ済まされませんよ!」
『おおっようやく魔ローダー実習ですか?』
「まだ学校に転校して来て2週間くらいなのに、なんだかもう二か月以上くらい経った気がするの」
「気のせいでしょ」
先生は息を整えるといつもの優し気な笑顔に戻った。
「じゃあプリント読んで用意する物とか忘れない様にね! ではさようなら」
熱血女教師は軽く頭を下げると笑顔のまま去って行った。
「ああしてると良い先生なのに」
「根本は雪布留さんが悪いと思いますが」
『で、魔呂実習で必要な物って?』
「まずはブルマと体操着か。それとプリントに書いてあるが家宝の魔呂も持って来て良いぞ」
「家宝の魔呂?」
「じゃ蛇輪でも良いの?」
「ルール上は……」
三人はル・ツーを見上げてどうしようか思案した。




