雪布留さん説得……
「そしてすぐにあたしが横暴したと言いふらす気であろう! 不服と言うなら目隠ししてでも良い、決闘で雌雄を決しよう」
「お断りします! それとも武力で脅迫なされるおつもりですか? 私は全速力で走って逃げますよ」
「え、ちょっと私は」
足が遅いルシネーアは戸惑った。とにかく生徒会長は決闘を受けるつもりは無いらしい。しかしそれも当然で、セレネ王女が異様に強いのは当然知れ渡っていたが、さらにドラゴンを倒したりメドース・リガリァを討伐したりとさらに武勇が高まり、彼女が断りを入れるのも無理からぬ事ではあった。
「セレネ、言いたくないがユーキュリーネもそこそこ腕に覚えがあるとは言え、セレネの強さは飛び抜けている。そんな状態で決闘を無理強いする事はやはり脅迫と取られても仕方ないよ」
見かねてラフィーヌがやんわりとセレネを諫めた。
「ぐっ……」
「おほほほほほほ、その通りですわっ!」
「でもユーキュリーネ、君もそこまで部室館をセレネから取り上げる事に躍起なのは何故なんだい? 正直使い道の無い古い廃屋の様な誰も近寄らない部室館を、セレネが使い続けて誰か困る人がいるのかい? もういいじゃないか、使わせておやりよ……」
しかし彼は今度はユーキュリーネを優しく説得した。
「……そ、それは独自調査で不満を訴える生徒が多数いるんです!」
「誰なんだい? 名前を教えてごらん……」
「それはプライバシー上の問題があって言えないけど、多数なんです!」
冷や汗を掻き、明らかにユーキュリーネは強弁をしていた。
「そうなのかい? うーむ、じゃあ仕方ないのか……」
突然悩み込むラフィーヌを見て、アルピオーネがコケた。
「黙って見てたけどラフィーヌ、君は押しが弱いね」
「学院の学生様は介入しないで頂きたいですわっ!」
ユーキュリーネはあくまで強硬であった。と、見かねて遂に雪布留がずずいっと前に出た。
(フルエレさん何を?)
(ゲッ雪布留さん、恐らく雪乃フルエレ女王陛下……何を?)
ユーキュリーネが多少緊張して身構えた。
「生徒会長さん、何故貴方はそれ程までに討伐部から部室館を取り上げようとするの? きっと心無い人は貴方がラフィーヌに横恋慕してて、逆恨みでセレネを攻撃してるとか言う人がいるかもしれないけど、私はそんな事は無いと思うの。きっと海よりも深い理由があるはずよ……」
天然のフルエレが真顔で嫌味とも人格攻撃とも取れる様な事をさらっと言って、人々は戸惑った。ユーキュリーネも同様であったが、表情を崩さない様に努めた。
(えっ今の何? 嫌味、凄く真面目そうな雰囲気なのに嫌味なの!?)
「そうですわ! 私が言いたい事はあくまでも一般生徒と王女殿下であらせられるセレネ様との不公平があってはならないという事ですわ! 一般の生徒が通常の部室を使う様にセレネ様も部室館を独占なされないで欲しいという事だけですわ」
生徒会長は言い切った。
「何故、セレネと一般生徒が完全に公平に同じ扱いじゃなきゃいけないの?」
シィーーン
雪布留の衝撃発言に一瞬人々は凍り付いた。
「何故って当たり前ですわよ、他の一般生徒と格差があると不公平ですわっ!」
「不公平ってセレネ王女って時点でもう格差があるじゃない? 貴方はセレネに退位して欲しいの?」
「い、いえその様な事は言っていません! ただ同じ学園の生徒としてです」
「同じ学園の生徒でも、セレネ自身は王女なのだから、それは決して埋められないのよ」
「ではセレネ様は何でも専横して良いという事ですか?」
「他に使い様の無い部室館を使い続ける事が専横に当たるの? 死人が出るの?」
「死人は出ませんが、気分が悪い人が居ます」
「その人は我慢してもらって? セレネは表情には出さないけど、ユティトレッド魔導王国を守る為に同盟を強くする為に、常に一人で戦っているのよ。だけど学園の単位は真面目に取らなきゃいけないって必死に通って、でも他の生徒を威圧しない様に大人しくして、それでたまに息抜きする為の場があの部室館なのよ、それくらいの事が何故駄目なのかしら。何でもかんでも公平にって言うなら、貴族であるユーキュリーネさんも平民になられたら?」
(フルエレさん……)
シィーーン
屁理屈なのかどうなのか良く分からない理論であったが、雪布留の熱弁に人々は黙った。
「……そ、それは雪布留さん、貴方どの様な御立場のご発言かしら?」
「もちろんセレネのいち友人としての立場ですわ」
「ユーキュリーネ、今日はもう引きたまえ」
「ラフィーヌまで! きょ、今日の所は引きますけど、部室館はいずれ立ち退いてもらいます!」
捨て台詞を吐き、生徒会長はルシネーアと共に去って言った。
『地上げ屋ですか……』
スナコは二人の迫力に間に入れなかった。
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主人公3人
砂緒 元現代日本のデパート建屋だったが、魂が発生し百年後に崩壊してセブンリーフに異世界転生して来た。硬くなる重くなる電気が出るなどの地味スキルを持つ。中程度の怪力で特に強く無い。気分次第で異常に完成度の高い女装スナコちゃんに変身する。
雪乃フルエレ ヒロイン①【海と山とに挟まれた小さき王国】の 夜宵姫 だったが家出して色々あってセブンリーフ大同盟の女王になってしまった。金髪の天使の様な美少女。魔導学園では 雪布留と名乗る。
セレネ ヒロイン②ユティトレッド魔導王国王女で髪の長い美少女だが異常に強い魔法剣士。最初嫌悪していた砂緒に猛アタックされフィアンセ同然になる。フルエレを女王に推挙した張本人。討伐部部長。
ユティトレッド魔導学園関係者
ミラとジーノ セレネの子分兼大切な友達。
ユーキュリーネ・カナルト・ヒューゴー 生徒会長でユティトレッド重臣の娘。
ルシネーア 生徒会書記でユーキュリーネに心酔している。
サトー スナコの隣の席の目立たない生徒。
学園長 ユティトレッド魔導王国の現王でセレネのおじい様。立派な長い髭がある。
ユ魔導学院関係者
ラフィーヌ・ビュートッエ 美形で真面目な熱血学院生でセレネの幼馴染、影が薄い。
アルピオーネ・マーチェラ 美形で少しキザな金髪青年。雪布留に接近しようとする。
ルンブレッタ・スーヴェテ 年齢より若く見え可愛い女の子の様な外見をしているがちゃんと男。スナコに一目ぼれする。
アスティ・ティーニ 長身で筋肉がある美形俺様キャラ。
蘭観・ファーラル 美形だが変人でメカや薬品好き。
教授 ダンディなイケおじで生徒を暖かく見守る。
仲間
依世 雪乃フルエレの妹。 美柑 と名乗り紅蓮と冒険者をやっていた。探していた姉、夜宵姫・フルエレと遂に再会したが喧嘩が絶えない。
猫呼クラウディア 東の地(中心の洲)クラウディア元王国の元王女。失踪中の兄猫名を探してフルエレ達の仲間になった。今は闇ギルドの頭目をしている。背の低いおしゃまな付けネコミミ少女。
兎幸 うさこ。リュフミュラン天球庭園の氷の博物館の館長。月で魔改造されて微妙に成長した。魔ローダーで補助機能になったり砂緒の女装に協力したりする心強いサポート係。
イェラ 元女戦士の褐色の背の高い美人。厨房で料理を作っている。麺料理屋台のチェーン展開するという野望を持つ。口数少ない性格だが砂緒の事が好き。
メラン 元魔導士の冒険者だったが、フルエレ砂緒と知り合い同盟軍の魔ローダー搭乗者になった。二人が居ない時は一応魔呂部隊の責任者となっている。ル・ツー千鋼ノ天に速き稲妻Ⅱと勝手に命名していた。
シャル 猫呼の部下闇ギルド員でボディーガード。腕がぐんぐん伸びる。
イライザ 喫茶猫呼店員。ぜんぜん意地悪く無い普通の子。
ニィル イライザの兄で元浪人であったが砂緒セレネに拾われ新ニナルティナ軍幹部に。
有未レナード公 旧ニナルティナ王国の軍師だったが、ポンコツで無害だったので新ニナルティナの代表に選ばれた。雪乃フルエレ女王を盛り立て、東の地【神聖連邦帝国】との関係に悩む。
ウェカ王子 ラ・マッロカンプ王国の王子。御幼少のみぎりに幼稚園留学生として出会った依世に一目惚れしたが、彼女の裏の仕事を目撃し魔法を撃たれ死に掛けてしまった。
メア ウェカ王子の理解者でセクシーなメイドさん。しつこいくらいに玉の輿をねだる。
まおう抱悶 可愛い熊耳の美少女だが恐ろしい魔力を秘める。砂緒と知り合った関係で雪乃フルエレ女王と大同盟を組む事となった。
神聖連邦帝国(東の地・中心の洲)
紅蓮アルフォード 【神聖連邦帝国】第二百十二代聖帝の息子。西の島、セブンリーフに単身まおう討伐を命じられて渡って来たが、美少女美柑(依世)と知り合い篭絡され、なかなか討伐する気が起きず、いつもブラブラしている。実は劇中一番強い人物だがなかなか本気で戦わない。爽やかでイケメンで真面目な風情に反し、実は人一倍女の子に興味があるムッツリスケベ。
瑠璃ィキャナリー るりぃきゃなりー。神聖連邦帝国四旗機 桃伝説 の搭乗者であったが、紅蓮のサポートとしてセブンリーフに渡り行き倒れ、ウェカ王子に助けられ以降居候になる。かなり強い騎士だが、当地と故郷の間で悩む事になる。モデルは船〇リリィ。
貴城乃シューネ たかぎのシューネ、神聖連邦帝国重臣で主人公達と度々戦う。
猫弐矢 猫呼の兄でクラウディア王国現当主。父王である大猫乃主を失う。
魔法メカ・ロボット
魔ローダー 全高25Nメートルの騎士の鎧、プレートアーマーをそのまんま巨大化した様な、魔法力で動くロボット。魔法や物理等殆どの攻撃が効かず、魔ローダーの魔法エネルギーが乗った剣攻撃しか効かない。
蛇輪、日蝕白蛇輪 へびりん、ひばみはくじゃりん。砂緒とフルエレとセレネが交代で乗る主役機。劇中唯一の複座型で、表面は鏡の様なテカテカのメッキ調の銀色で、装甲各所に金色の華麗な装飾が施され非常に成金趣味な見た目をしている。頭部に蛾の触覚の様な巨大な二本の角があり、背中にはド派手な巨大な羽を背負い鳥型の飛行形態に変形出来る。実は砂緒の前世の前世、【等ウェキ玻璃音大王】が、ル・スリー白鳥號を参考に真似して作った機体。両手の尖った爪で突き刺した対象からスキルや能力をコピーする事が出来る。また砂緒の能力で巨大化したり強力な雷攻撃を発したりも出来る。
ル・スリー白鳥號 はくちょうごう。【まおう抱悶】の先祖である【王永嶋フィロソフィー王】が搭乗していた純白の機体。蛇輪に似ているが、よりヒロイックな形状をしている。古代にクラウディア王国で建造された。今は 【千岐大蛇】(チマタノカガチ) 退治の時に紅蓮が偶然入手し扱いに困惑している。劇中最強の機体で数々の魔ローダースキルが隠されている。かつてセレネと砂緒が制作させた【最強の魔法剣】を偶然所有しているが、標準装備の【魔法の刃の剣】も使用出来る。
ル・ツー千鋼ノ天 る・つーせんはがねのてん。猫呼の実家、東の地(中心の洲)【クラウディア王国】の旗機であったが、【神聖連邦帝国】に服従した時に彼女の兄【猫名】が乗り逃げしてしまった。その後【三毛猫仮面】と名乗った猫名がセブンリーファで暗躍して搭乗していた。その後雪乃フルエレに負け鹵獲され同盟の副将機となっていた。濃い紺色の機体に頭部に長大な一本角があり全身が鋭角的に尖っている。
一般機体
XS25 学園生徒達が授業で乗る最弱機体。
SRV 同盟の量産型機で青や赤、緑などの派手なツヤツヤ塗装。
SRV2ルネッサ 王女セレネ用カスタム機体。
SRX 同盟軍次期量産用試験機。




